お姫さまの脱ぎたてパンツが欲しくて、欲しくて、がまんできない!

加藤 航

序章

序 あぶない人はすぐそばに(一)

 浴室の扉が開き、内部に充満していた湯気が一斉に脱衣所へ流れ出してくる。

 続いて姿を現したのは、一人の少女だ。


 少女の名はフィルネリア・ショート・シタギア。このシタギア王国において、フィル王女と親しまれている国の宝である。

 歳は、今年で十になる。背の中ほどまでまっすぐと伸びた細い髪はまるで金糸のよう。澄んだ海のような薄青の瞳はさながら宝石。まだまだ子供といった感じの起伏の無い裸体には少しの傷もなく、将来の美しさを確約するかのように柔らかだ。


「姫さま、これを」

「ありがとう、ドロシー」


 フィルは付き人からタオルを受け取ると、その裸体を覆って拭きはじめた。


 付き人の名はドロシー。

 フィルの身の回りの世話一切を任されたメイドだ。歳は十八。まだ少女と言える若さであるが、多くのメイドたちの中から選び抜かれた最優秀の人物である。


「姫さま、私がお体を拭きましょうか?」

「自分でできるよ」


 長い髪にもたつきながらも体を拭き終えたフィルは、ドロシーから手渡された下着とネグリジェを手早く身に着けた。


「さあ、お部屋で御髪を乾かしましょう」


 フィルはドロシーに付き添われて私室へと戻る。

 清潔に掃除が行き届いた、豪華な私室。天蓋付きのベッドに、柔らかなソファとクッション。たくさんの童話が収まった本棚。そして数多くの可愛らしいぬいぐるみ。国中で最も華やかな少女の部屋だ。


「姫さま、私はお洋服を洗濯係へ渡して参りますので、しばらくお待ちください」

「うん。おねがいね」


 ドロシーは部屋にフィルを残して脱衣所へと戻る。その足取りは心なしか急いており、何故か顔には薄ら笑みが浮かんでいた。


 脱衣所へと到着したドロシーは、扉を閉じるのと同時に鍵をかけると、素早く洗濯籠へと歩み寄った。

 洗濯籠には丁寧に折りたたまれた桃色のワンピースが入っている。フィルが入浴前に脱いでいったものだ。


 フィルに直接触れ合って世話をするのはドロシーの仕事であるが、洗濯や料理などはそれぞれ担当する専属部門が存在する。それらの部門と連携をとるのもドロシーの大切な仕事である。

 今の仕事は、この洗濯籠を担当者へと渡すことだ。


 ドロシーは洗濯籠に手を伸ばすと……ワンピースを取り除き、その下に隠されていたモノを手に取った。ドロシーはそれを宝物に触れるかのようにして丁寧に持ち上げると、全体が良く見えるよう、天井にある魔法の照明へとかざした。


 それは薄青色のパンツ。女児向けの柔らかな綿の生地に、丁寧で繊細な水玉模様。

 これは国の花であるフィルがついさっきまで身に着けていた下着であり、そしてフィルの最も秘すべき場所を覆っていたものである。それは即ち、今この瞬間、この国で最も価値ある衣類であることを意味する。


「ああっ、姫さまっ! 姫さまっ!」


 ドロシーはフィルの脱ぎたてパンツを両手で顔に引き寄せると、頬ずりを始めた。その顔からは選び抜かれたエリートメイドの風格など微塵も感じられず、ただ鼻の下を伸ばすばかりの変態と成り下がっていた。


 ひとしきり頬ずりを済ませると、ドロシーはパンツを開いて顔を突っ込み、王女の高貴な香りを堪能した後、その股布に舌を這わせ始める。べろべろべろべろと鼻息荒く下着を舐めまわすその姿はもはや悪夢以外の何物でもなかった。


 十分も経っただろうか。

 ようやくフィルのパンツから顔を離したドロシーは、唾液で股布がでろでろに濡れたパンツと除けてあったワンピースを元通りに畳んで洗濯籠に戻し、それを持って脱衣所を出る。その足で向かうのは今度こそ洗濯係のもとだ。

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