オリエンテーション 序列システム

「ここが俺たちのクラスか‥‥なんかもう突っ込むのはやめにしよう」


「あら、とても広いわね」


アザレアと再会を果たした後、俺はクラスの教室を探し周り現在に至る。なんとこの城の城内は20階建てになっており俺たちのクラスがあるのは19階に位置する。またこの階に上がってくるまで階段‥‥‥というものは非常階段しかない。


ではどうやってこの階にまで上がってきたのか?


それは上下の移動を魔力エレベーターという魔法器具を用いているからである。魔力を動力源に指定した階を行き来するこの魔力エレベーターはおよそ200年前にある学者が開発したそうだ。開発した理由は「楽をしたかったから」という。


まあ、話はこの辺にして早速教室へと入っていた俺とファシーノだが、右左を見れば人人人の状態。百人いるのだろうかと数えるのですら面倒になる。しかし、そんな人数がいるこの“Aクラスの教室‥‥いいや大講堂はそれよりも広かった。一千人規模が収容できるであろうこの大講堂は全体的に傾斜になっており、上に行くに連れて幅も広く、下に行くにつれて幅が狭くなる。そして一番下には教卓と透明な板が壁に飾ってあることから教師が講義する場だと分かる。


立見も疲れるのでとりあえず空いている席を見つけ、教師がくるのを待つことにしよう。


「これが教室ね‥‥なんだか感動しちゃうわ。とても楽しみね!」


ニコニコ笑顔のファシーノはどうやら楽しみでしょうがないらしい。その無邪気な笑顔をこちらに向けられると照れてしまう。

今すぐにでも抱きしめてしまいそうになるがここは我慢しよう。大勢の人がいる場でそんな恥ずかしい事、今の俺にはできそうにな‥‥‥



‥‥‥ん?あれは



自分自身と葛藤し、視線を右斜め下に移したところ面白い人物と目が合ってしまった。あちらもハッと何かに気づいた様子で俺に睨みを効かせてくる。そして俺に向けて指を刺してきて何かを吠えたようだ。


「お、お前は!あの時のイカサマ庶民がっ!“Aクラス”だと?!この俺と同等など‥‥‥!もう一度勝負しろっ!」



———これはこれは一週間前に模擬試合で気絶した公爵家レオナルド君ではないか。こいつもAクラスだとはどうやら実力は本物?なのだろう。あの時の試合は面白かったがな。それに左右を見渡せばヒソヒソと話している姿が窺えることから公爵家に刃向かった事で広まった俺の噂は見事にAクラス中の全員に行き届いたらしい。 


これは学園の友達を作れるのだろうか‥‥


と思っていた矢先、教室の扉が勢いよく開いた。嫌悪中の俺もレオナルド君も扉の方向を向く。全員が一斉に振り向き視線を固定する先には紫色の髪を束ねる女性が教壇に向かって歩いていた。遠くからでも分かる美しいフォルムと煌びやかなドレス姿は異性の心を鷲掴みにした。


「———皆さん着席してください。これから1年間皆さんの担任を務めますウルティア=ハートと言います。まだまだ新米だけど皆さん仲良くしましょう?それではこれからオリエンテーションの説明をします」



◊◊◊



———教壇に立ちスラスラと今後の学園生活や学園施設を説明するウルティア先生。先生の話を要約すると、まず基本的にこの大講堂がAクラス専用の教室である事。また全部でクラスが5つあり最上位がSクラスの特待生組、Aクラスがその次に優秀なクラスでB、C、Dとクラスが続いている。Sクラスの特待生組は十数人の少数精鋭クラス


Aクラスは100人規模の優秀者。そしてBクラスから人数が一気に変わり1,000人を超える。一番下のDクラスがなんと5000人という脅威の人数。学園に合格できただけでも優秀なのにその中でもこれほどに分けられるとは下の者達は酷だろうな‥‥


あと続きとして一学年の校舎の中には大食堂はもちろんトレーニングルームが完備されている。食堂は無料、トレーニングルームは24時間体制という最高な環境。一学年教師や職員の職員室もあり、研究室が完備されている。


また一学年専用の練習場が学園内に3箇所あり魔法の練習や模擬試合ができる。全学年共有施設としては学園地区内にある山や森川など、そして大図書館である。大図書館は世界のあらゆる魔法書や学者の研究所が収められ自由に観覧できる。


そして、全寮制であり一学年約10000人が住める寮が10棟程、学園内に建てられている。無論男女別けられ、夜は警備が巡回している。

まあ、ウルティア先生が説明した内容はこんなものだ。実際に立ち寄ってみないとわからないので今後の学園生活で分かる事だろう。


「———そして最後に一番重要な事を話します。よく聞いていてくださいね?」


話が終わったかと思っていたが先生は最後に重要なことがあると言い出した。先生の雰囲気も変わるとAクラスの生徒達も鋭く感付き聞き耳を立てる。俺も何が重要なのかしっかりと聞くことにしよう。


「———この学園では主に、“序列システムが施行されています。序列システムとは全学年対象であり、全学年の総合を持ってして定められています。一年生の皆さんは入学試験の結果が先程お配りしたカードに記載されているはずです。その番号、序列が現在の皆さんの位です。1年生の優秀者でも入学したばかりですので序列はとても低いです。2学年の最下位よりも下です」



‥‥‥なるほど。序列システムか、なかなか面白いことをやってくるな。俺の組織と全く同じことが繰り広げられるというのか。

しかし、この序列をあげるにはどうしたらいいのだろうか? 


現在の俺の序列はカードを見るなり22222位というぴったしの位置にいる。ファシーノのカードを除くと俺よりも若干上であった。少し悔しいが入学試験での結果からすれば当然だな、まずAクラスにいる俺がおかしいくらいだ。



「———ウルティア先生!序列はどうやってあげるんですかー?!」



すると教壇の前に座る如何にも真面目そうな奴が手を挙げて問い出した。

先生はそんな真面目君に向かって「いい質問です」と言ってさらに説明を続けた



「———この序列ですが、上げるためには一つしかありません。単純明快。自分よりも上位の者に決闘を申し込むことです。申し込まれた上位の者は申し込んだ下位の者と必ず決闘をしなくてはなりません。学年は関係なく拒否はいかなる理由があろうと無効です。幾らでも決闘が可能ですが一日一回限りです。不届き者が何度も挑戦し疲労で勝利するという事態を防ぐ為です。要は上位の者が勝てばいいだけです。負ければその者の序列位と入れ替わります。しかし、下位の者が上位の者に敗れた場合はペナルティがつきます。それは1日その者に服従する事です。度が行き過ぎない程度の行為ならよろしいですが‥‥

異性の場合、主に女性に対して恥じる行為を要求する男性はいくら勝者でも見過ごせません。確認次第その者に罰則を設け、人情に外れた行為を行った者は退学処分です。ですので、皆さん気をつけてくださいね?あの子可愛い、あの人かっこいいとかでわざと服従しにいくタイプもいますが‥‥

まあ、それは置いといてこの序列システムは後に卒業した時や、学園生活を充実するために大いに役に立ちます。序列が上がり、同級生や上級生に勝利し、学園内の頂点に君臨することができればあらゆる事項や取り組みが可能です。その表立っての顔が生徒会です、生徒会は序列一桁の者達によって構成されている最強の生徒達です。その中の生徒会長はこの学園の一位の称号を持つ者だけが就ける位です。生徒会長になれば新たに施設を設けたり、新たに規則を設けたりと、思いのままにこの学園を支配できます。卒業後のランクはSランクと確定し配属先でも最上層の立場になります。ですので皆さん頑張ってくださいね?学年は関係なしに上級生に挑んでいきましょう!————とそろそろ時間ですね、これから2学年Sクラスの模擬試合があるので皆さん見学に行きますよ!それでは行きましょう!!」



と、ハイペースな説明のあと破天荒な一面を見せる先生。

とてもわかりやすい説明で助かった。序列システム‥‥決闘‥‥そうこれは間違いなく



—————災難がくる、確実に降り注ぐ‥‥ので準備をしよう。拒否ができないというのだから回避できない。しかし、下位の者が負けた場合の服従というのがまた面白い。この規制によって下手に決闘を申し込めない。上級生は下級生にお灸を据えたら痛い目に会うとかいうパターンが浮かぶな。それはそれで面白いが恨みは買いたくない者だ。


「レオン、皆んな移動しているから行きましょ?」


つい考え事をしていたら俺の顔を覗き込んできたファシーノ。長い黒髪から見える表情がまた愛おしく、可愛い。


「ああ、すまない。少し考えてな」


そう言うといい香りのするファシーノはクルッと回転しスカートをふわりと浮かせる。立ち上がる俺の腕を取ってAクラスの生徒達の後ろをついていくのだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る