学園都市 入学試験の受付


「———おいおい、ここが湖の上だと‥‥もう国じゃねーか!さすが学園都市とは言ったものだな‥‥‥さて入学試験の受付はと———」



時期は春。現在、俺はと言うとファシーノの言っていた学園都市に来ている。18歳になった俺は入学試験の受験資格があり、試験を受けに来たと言うところだ


初めてこの学園都市に足を踏み入れたが全ての規模が桁違いだ。湖の上にあると聞いた時は半信半疑だったがまさか本当に湖の上にあるとは‥‥‥

湖の上というより湖に建設された広大な土地というべきか‥‥?


大陸の湖が100だとするとそのうちの20は土地となり巨大な都市に様変わりだ



まあ、一から説明すると俺達が住んでいるこの大陸は非常に広大であり、その中心に位置する湖もまた広大である。その湖のさらに中心に学園都市という島ができた。上空から見れば八角形になっており、この都市は城壁で覆われている


この学園都市までの航路は二つあり一つは各国から湖を魔船という魔力を動力とする船で行き来する


二つ目は各国の湖側から道路が学園都市まで伸びており、どの国からでも向かえる。主に魔車を利用してだ 


またこの学園都市は商業地区、住居地区、工業生産地区、学園地区を軸に四つのエリアに分かれている。さらに緑生い茂る森もあれば、水だってある。なんなら水上都市と名を変えてはと思うのだが


まあいい、説明はざっくりこんなものだろう。それよりも———



「レオン、受付はあちらのようよ。早く行きましょう」


「ああ、そうだな」



———あろうことかファシーノまでついてきた


随分と楽しそうに俺の横を歩く。側から見ればカップルと思われるだろう。ファシーノが楽しそうにしているなら俺はそれで構わないが、如何にも周りの視線が注がれる。注目されたくはないが、彼女の笑っている姿をみれるのなら構わない


学園や学生なんて俺には縁がないものだと思っていたが、人生というものはどう転がるかわかったものではないな‥‥‥



———そして学園都市の中心に向かって歩いていたが、様々な店を見て回ったので一時間程かかり目的地まで到着した。学園都市の中心は学園地区になっており、入学試験は学園内で行われると思うが‥‥‥


それよりも規模の違いに驚きを隠せない。世界最高峰の学園であり、全種族が集まる庭は分かるがここまで広いものなのか?

このテオドーラ魔法剣士学園は広大な土地に幾つもの建物が連なり一つの街として機能しているように見える



———数十分かけて学園内を歩いていると俺達は人が沢山いる場所に目を留めた。あそこが受付なのだと察すると、近くまでより列の後方に並ぶ


「凄い人の数だな。何千人‥‥いいや単位が違うなこれは」


「万単位でしょうね。これだけの受験者がいるなんて世界最高峰なのは確かね」


そう、今現在並んでいると言ったが学園の庭のような場所にいる。受付はその奥の事務なのだがこれでは日が暮れてしまう。受付だけで1日が終わってしまいそうだ‥‥


俺は少し落胆していると周りの受験者からは色々な“声が聞き取れた”

聞き耳を立てているわけではないが強制的に耳に入ってくる話題がそこら中に飛んでいる



「———ねえ、知ってる?今年の受験者のなかにあの六幻楼アルターナがいるらしいわよ。一目でいいからお会いしたいわぁ」


「ええ、知ってるわ。2年前の‥‥‥厄災の魔獣による災害。各国に魔獣の大群が侵攻した戦い。その中で僅か16歳という若さで最前線に立ち侵入を食い止め、あのキメラを倒した人族国の英雄達。今ではBランクという噂だけど同じ年齢なんて信じられないわ」


「そ・れ・に!魔族帝国の令嬢やエルフ大国の若き天才、天族の王女様方も私たちと同じく受験者なんて‥‥…凄い偶然ね!それに獣族国の王女様は噂によると特別講師を担当するのだとか‥‥!もう今年は驚くことばかりだわ!」



———なるほどな。アザレア達は六幻楼アルターナと呼ばれ英雄になっていたか‥‥‥やはり今年入学試験を受けにきたのか


まあ学園で会おうなんて置き手紙を置いたのは俺なんだが‥‥2年前に久しぶりに会った時は仮面を付け正体を隠していたからな。5年前に旅に出て以来会っていない事に話をあわせないと。


あいつとも久しぶりに話をしたいな。きっとこの人混みの中にいるのだろう


それにもう一つ気になるが各国の王族が一同に集うという事。それも同じ年齢で‥‥‥リコリス王女は違うが講師という噂。何故だが大変によろしくない事が起こりそうで怖いな



偶然なのか必然なのか、否考えすぎか‥‥



「———ピィ——ピピ——受験者の皆さん!このテオドーラ魔法剣士学園にお集まり頂きありがとうございます」



学園内放送なのか、声を拡張しているのかわからないが学園内に響き渡る女性の声が耳に届いた。何か試験について説明でもするのだろうか‥‥‥このまま日が暮れるまで並ぶのは御免蒙る



「———各国からお越しいただいた皆様。受験はこの場ではなく学園内に位置する第1演習場、第2演習場、第3演習場で行います。本日は整理券を配布し“明日”から試験を開始いたします。1〜3000の番号の方は明日に実施します。それ以降は二日後、三日後と6000、9000の3000間隔で実施いたします。なお、試験合格者は全員の試験が終わり次第学園内の掲示板に番号を写します。それでは皆様ご武運を———」



と放送は終わり、続々と前に進む人の列。整理券を貰った者は直ぐに学園内を背に出て行く。現在時刻は午前11時であり、回転率は凄まじくこの流れだと午後3時までには整理券をもらえそうな勢いだ



「———今日は整理券と、それはありがたい。日が暮れるまで並ぶのは疲れる。それに試験の内容を“敢えて”言わなかったな。本当の実力を見るためか‥‥‥」


「ふふ、本気を出してはダメよ?貴方は世界を揺るがす力を持っている。それに世界から追われている大罪人‥‥‥力を解放すれば直ぐに正体が明るみになってしまうわ。まあ貴方ならそんなヘマはしないでしょうけど、気をつけてね」


「平均を取るさ。そこまで俺も馬鹿ではない。それに今回、学園に通う目的は“奴らの動きを掴む為‥‥‥俺の正体もこの学園にて息を潜める事。この役割は全うするさ———」



———そう、俺が学園に通う真の目的はバラトロの情報を探るため。そして5年前からの約束でもある幼馴染との再会。何も言わずに家を出てしまったことを怒っているのだろうな‥‥‥再会したらなんて言われるのだろうか‥‥‥


殴られないよな?



そんなこんなで時間は過ぎ、俺達はようやく整理券を受け取る事ができた

番号は12000と、この順番だと四日後に試験になる。しかし、俺たちの後ろにはまだまだ沢山の受験者が控えて居る。これでもまだ早い方なのだろうか‥‥四日後までこの学園都市を観光でもするかな


「レオン、さっそく商業地区に行きましょう!」


とファシーノは無邪気に笑い幸せそうだ。いつも大人な雰囲気のファシーノが今では少女にしか見えない。大人なファシーノも好きだけどこっちもアリだな

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る