冒険者ギルド


———太陽が闇から姿を現す時刻。太陽の煌びやかな光は人々を深い夢の中から目覚めさせる


ある者は家族の誰よりも早く起き朝食の準備をする

ある者は人々が道を歩く音、魔車の音で目を覚まし、仕事へと向かう

またある者は外の音や太陽の光にも屈せず寝続ける


平和の象徴とも捉えられる人々の日常。何も不自由なく暮らす家族


ここ獣族国ベスティアでは犯罪が極端に少なく皆が笑顔でいられると言われている。それも全ては獣王による統制、娼婦街の規律の賜物である


そんな犯罪の少ない国において一人の少年がいつもと変わらずひっそりと住んでいた———



「———はぁぁ‥‥‥よく寝た。今日も天気がいいな」



———俺はベッドから起き上がり大きく欠伸をする。窓から差し込む光に部屋が照らされ朝を告げていた


服を速やかに着替えてから部屋の扉に手を掛ける。ここは獣族国宿場街の一角に建つ普通の宿。一階のカウンターを抜け、外に出ていつもと変わらない道をいつものように歩き、ある場所を目指す



目指した場所は冒険者ギルド



冒険者ギルドとはギルドに登録した冒険者が魔獣を狩り、その魔獣から取れる角だったり牙、爪、肉や皮をギルドで現金に替える仕組みである 

また魔獣に限らず多種多様な依頼がある。この冒険者ギルドは五大国に支店を持ち、本店は人族国だという


素材を集める魔獣にもランクが存在しF〜Sランクまで存在する

冒険者ギルドは軍と同じく階級制でこれも下はFランク〜上はSランクまでの階級がある


そしてこの階級は軍と相互性であり、軍での統制や規律が性に合わない者は冒険者ギルドで生計を立てている


———なぜSランクまでしかないのか?と気になった事だろう


それは単純明快、なぜならSSランクは各国3名、SSSランクは1名と全て軍に属しているからである。この4名も冒険者ギルドに登録はできる。しかし軍の仕事や訓練で多忙なため全くギルドに利益が行き渡らない


そのため暗黙の了解として敢えて登録していない


また軍でのSランクの階級を持つ者は冒険者ギルドに登録してもよく、休日の合間や、自ら進んで狩りに出かける者もいるためギルドとしては希少な魔獣などが換金され利益が良く需要と供給が成り立っている


しかし、軍でSランクだからと言って冒険者でのSランクにはならない


冒険者のSランクはこの世界に数人しか存在せず、たとえ軍でSランクの実力があるとはいえ、冒険者のSランクに到底届かない


”史上最強の戦士”の称号は伊達ではないのだ。魔獣と人では戦闘スタイルや駆け引きがまるで違う。


冒険者ギルドの最高戦力こそSランクの称号を得る


それに、この冒険者ギルドと軍は少し違い、誰でも登録できる。年寄りや赤ちゃんでもできる。赤ちゃんの場合は13歳の全階級制定協会の試験までの身分証明としても利用され自由である



以上がざっくりとした冒険者ギルドの説明だ



そんなギルドの外観はとても洒落ている。モダンな作りに大きな窓ガラス。内部は五階建てで一階から三階の中央部分が吹き抜けになっており開放感がすごい


4階からは職員専用デスクワークや資料などが保存されている。5階はギルドマスターと言われる国のギルド長が自室を持ち仕事をしている


一階は酒場と受付カウンターが用意され受付嬢が3人スタンバイしている

ギルドでの登録は元々の階級が反映される。しかし、階級がない者もいるため広い敷地の裏庭に模擬訓練場があり、試験官が直々にそこで階級を定める


登録したならば早速仕事をしたいところだが、ルールがもちろんある

階級に応じて受けられる仕事も決まる。FランクならばFランクの仕事しか受けられず、AランクならAの仕事と下の仕事は全て受けられる


仕事を受ける際は階級ごとに分けられた掲示板から張り紙を取り、受付に渡しにいく。これでようやく仕事に掛かかれるわけだ



ちなみに俺はEランクである。Eランクの仕事は簡単で薬草採取や小さい魔獣の討伐がほとんど‥‥‥適当に掲示板を見ていると丁度、兎の討伐紙があったのでそれを剥がし受付嬢に持っていく


勿論登録証と一緒に渡す


「———これをお願いします」


「かしこまりました、“レオン様”。行ってらっしゃいませ」


そのまま俺は登録証を受け取りギルドから出る。広い道を歩き湖の方角の森へと入って行った


今回の仕事は兎型魔獣の討伐。非常に簡単で生きたまま素手で捕まえられる


しかし素早いのが特徴でほとんどのEランクは苦戦を強いられる


俺もEランクだが勿論そんなのは嘘だ。登録をする際テキトーにしていたのでこのようなランクになった。まあ、別に趣味程度にやっている訳だからこれぐらいのランクで丁度良い


と言うことで適当に十数匹を狩っていると時間も正午を回っていた


「よしこんなもんだろう。ギルドに戻って昼でも食べよう」


俺は一度ギルドに戻るため森を抜けて広い道を歩く


ギルドの前に到着すると何やら中が騒ついていたので恐る恐る中の様子を見る事にした‥‥‥



「———おいおい、あのねーちゃんとんでもねー顔と体してんなぁ」


「ああ、ありゃたまんなーぜ」


「それにSランクの掲示板から張り紙を取ってきてたな。まさか最強のSランク様があの容姿とは益々気になるぜ」



騒つきの原因はギルド内部の酒場で男どもが一人の女性に目を奪われていたからだった。俺は騒ぎの原因でもある女性に視線を固定すると‥‥‥



「すごいな‥‥‥」



その容姿に思わず呟いてしまった。美しい額を露わにし深紅の長い髪を巻き、髪と同色の瞳を宿している。そしてその女体はまさにダイナマイトボディー


そして戦士なのだと思わせる衣服。これはビキニアーマーというやつなのだろうか。ビキニの上には面積が少ない最低限の衣服しか身につけておらず、腰には剣ではなく刀を下げていた


そんな彼女は受付で話をしているので俺はその横の解体受付に移動した

解体受付に兎を渡し現金に換金する。それまで少しの時間が必要なので待っていると後ろから厳つい冒険者が近寄ってきた


「———おい、ガキ。そこを退けっ」


顔が赤くなっている男は酒を飲んでいると思われ、そのまま俺に肩を勢い良くぶつけてきたのでわざと尻餅をつく


その姿を見て満足したのか調子に乗る男は隣の赤髪の女性に話しかけ始めた


「なぁ、ねーちゃん。今から俺と飲まねーかぁ?なんなら明日の朝まで付き合うぜぇ?ゲヘヘヘへ!!」


下衆な笑みを浮かべて女性に近寄る男はとても正気とは思えない。こんな岩みたいで壁のような男を相手する女性などいないだろう‥‥‥


そんな岩のような男に赤髪の女性は艶やかな唇で語りかけるのだった、


「———貴方のような男に興味は無い。他をあたれ」


「———っな!このアバズレめ!この俺が折角誘ってやってるのをっ!」


赤髪の女性に即拒絶された男は怒りに顔が沸騰している。男は血が上ったのか強引に女性の体に腕を回し引き寄せようとした


しかし、赤髪の女性は男の腕ををスルリと交わし、男の股間に脚で蹴り上げ金的をお見舞いする


‥‥‥これは俺でも悶絶するわ


男はそのまま膝から崩れ落ち股間を抑え悶え苦しんでいる


「‥‥うっ!‥‥ぐぅっ‥‥」


「その汚い手で触るな。この体は既に予約済みだ」



な、なんともかっこいいセリフを吐き、悶え苦しむ男に述べると俺のところに近寄り手を伸ばしてきた。その手を俺は掴み取り勢いよく起き上がる


「大丈夫か少年。こんな輩に絡まれて災難だったな」


「ありがとうございます。よろしければお名前は?」


「‥‥‥ヴィオラという。少年の名は?」


「レオンです。助けてくれてありがとうございます」


ヴィオラと名乗った女性はとても優しく暖かい手だった。大胆な格好に似合わない優しい口調はギャップがあり見惚れてしまう


俺とヴィオラさんが受付の前で止まっているとそれを遮る知らせが耳に届いた


「———冒険者の皆様!ただいま東の領域にて魔獣の大群がこちらに迫ってきています!Bランク以上の冒険者は強制的に出動を命じます。軍と連携して対処にあたってください!」


どうやら“また魔獣の大群”が攻めてきたらしい。ここ半年で妙に魔獣の動きが活発になりこうして攻めてきている。これで何度目だろうか数えるのも疲れるほどに魔獣の知らせが届く。Bランク以上は軍と連携して対処の事だがBランク以下でも出動はできる


しかし、ほとんどが足手纏いなので参加しない。そして俺も一度も参加していない。この国の冒険者や軍でも十分対処できると踏んでいるからだ


「‥‥‥ヴィオラさん行くんですか?」


「ああ、まただな。最近は妙に魔獣が活発だ。まるで何かに逃げているようにこちらに毎度向かってくる‥‥」


俺はヴィオラさんにそう尋ねるとどこか遠い目をして、お別れを言いそのまま出口へと行ってしまった。恐らくすぐに向かうのだろう。冒険者の最高ランクというのは忙しい存在だ


「俺は宿にでも戻るか、お昼は屋台で買って行こう」


俺はギルドで換金してから外に出て適当に昼を調達して宿に戻った

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