狼煙
———俺たちは門を盛大に破壊して強行突破した
「———この音では近隣の住民が起きてしまうわね‥‥」
「構わない、どうせ軍の奴らが嗅ぎ回ってくるだろう」
これだけの音だ、近隣住民の眠りを妨げてしまったに違いない。軍の出動と到着までそう時間はないだろう‥‥早いこと済まさなければっ
すると数百人はいるだろうか、武装している奴らが俺たちに気づき、目を細める
一瞥すると一人一人が中々の魔力を秘めている‥‥‥だが、俺たちの敵ではない
「———なっ!!堂々と正面からよくもっ!何者だっ!?」
おっと‥‥‥戦い前には名乗るのが常識なのだろうか。それにしても随分と大勢ではないか。
あの豚はやはり何かとんでもない奴らと取引してたな‥‥あのアホが
‥‥‥仕方ないこちらも名乗るとするか
「———俺たちは
「道をあけろだと?我々を、知ってのことかっ!?我々に歯向かう者は女だろうがガキだろうが殺せとの命だっ!お前達の無謀さをその身を持って知るが良い!!行けっ!!」
「‥‥‥お前達のことなど知るかっ行くぞっ!」
「「「了解っ!」」」
俺の言葉を合図にエリーを奪還する戦いが幕を開ける
◊◊◊
「ハァ‥‥今日はなんて不運な1日だったのでしょう」
ある一人の女性が今日の出来事をベッドの上で枕を強く抱き締めながら思い返していた。
「———獣武祭は優勝ということに表前では宣言されたけど、本当は‥‥」
リコリスは寝室でレオンとの戦闘をつい数分前の如く思い出す———
———観客達が闘技場を逃げ出したのは自分の責任。それでもあの少年には勝ちたかった‥‥自分よりも頭半分背の低い少年。それに‥‥
「私の最高峰の”オリジナル魔法”を受けて尚無傷なんて‥‥あの美しい
少年について考えれば考えるほどに胸が苦しくなる‥‥‥
あの場面でわっ、私のお漏らしをしていたことを少年は見ていた‥‥‥
そのことも考えると恥ずかしくて屈辱的で顔がっ‥‥‥!
「なぜ、あの時『すまなかった』なんて言ったの‥‥何故、頭を撫でたの‥‥もうっ!!」
枕に八つ当たりしてふかふかのベッドに投げつける。それでもあの時の情景は頭から消えない
「あの時、私はどんな表情をしていたのかしら‥‥‥」
———リコリスを近くで見た者にはわかってしまう
その表情がどの様なものか‥‥レオンだけがその真相を知る唯一の人物
リコリスはモヤモヤしている心を防ぎ、そのままベッドに顔を埋めた
———そしてここは獣族国ベスティアの中央、王の城
この城は鉱山での鋼などを基に築き上げられた城。言えば要塞
城の周りは城壁で覆われており厳重警戒
”城”と表では公表しているが実際は軍本部。城の敷地内は莫大に広く半径1キロはある。その敷地内に本部やら宿舎やら模擬戦闘場などが点在する
城内部には王族と階級が高い者にしか出入りが許されておらず、それ以外は城内部に入ることができない
女王ストレニアとその娘のリコリスはこの城の主
———そして、時刻は24時を回り、皆が寝静まる時刻
そんな中、女王は未だに眠ることが出来ずに起きていた
薄い下着だけ身につけ、ほとんど裸の状態でワインを飲む
三日月の光が窓から差し込み、真暗な部屋が窓際だけ青白く輝く
その青白く輝く窓際に座りながら女王はリコリス同様物思いに耽っていた‥‥‥
「———今日は大変な一日だった。まさかあの様な者が現れようとは、」
ワインを一口飲みまた耽る
「我ら
———
SSランクが何人集まろうと卑怯な手を使おうと罠に嵌めようとSSSランクに全て敵わない。
国の象徴であり、国の財産。絶対的強さを持つ”オリジナル魔法”
そして超越した魔力の持ち主であり、世界で唯一五人の
そんな常人からかけ離れ逸脱している
———このストレニア・ヴィルぺ・ディエーチがたった一人の少年に恐れを抱いてしまった‥‥‥
これは王座に着いてから長い歴史の中でもトップクラスに入る由々しき事態であるっ
「我ら以外にも可視化できる
少年を取り逃がしてしまった責任感と納得出来ない魔力。頭の中が一杯になり舌打ちをする。
そしてグラスのワインを飲み干し、眠りに着こうとベッドへと足を運びだした瞬間————
—————ドゴォォォォォン!
「——っ!何だっ!?」
———突如、大きな爆発音が国全体に響き渡った。そしてこの爆音と共に軍本部に混乱が生じる
「‥‥‥ドンドンドンッ!陛下!」
「何事だっ!?」
ドアを叩く音と女王を呼ぶ声が部屋の中にまで響き渡る
緊急事態の時だけはSランク以上の者は王の城内部へと立ち入ることができる。
女王の寝室まで来たと言うことは緊急事態が生じた事を裏付ける合図‥‥‥
「———はっ!商業地区の方角にて何らかの爆発が生じました!これより我隊は音の方角へと向かいます!」
「ついでにSSランクの一人もつけろ!見回りから至急こちらに呼べっ!妾もすぐに向かう!」
「———はっ!」
返事をした兵士はそのまま廊下をかけて行った。残された妾は急いで戦闘用の防具を身に着ける
妾の戦闘服は全身黒いライダースーツの上に防魔のベストを着こむ
身体のシルエットがくっきりと露わになるがこれが一番動き易く夜に最適‥‥
すると妾の部屋にノックもせず、勢いよく入って来る者が現れる
「———お母様っ!先程の爆発は!?」
「リコリスっ!お前は残っておれっ!」
リコリスが部屋に入って来るなり爆発の事を聞くが、残れとリコリスに怒鳴りつける
「何故です?!私も向かいますっ!」
「だめだっ!大人しくしていろ?!わかったな?」
その言葉を言い残し妾は廊下を勢い良く走って行く
我が子のリコリスだけは、万が一でも怪我を負わせたくない‥‥‥
「クソっ何故ここまで忙しいっ!」
廊下を掛け降り一階まで来ると、我が軍が魔装車に乗り込もうとしているのを目にする。ざっと数百人の兵士が魔装車に乗りこんでいく。だが、それでは間に合わん!
「———くそっ!そんな物では間に合わんっ!」
妾は魔装車に乗り込まず自らの脚で地面を蹴った。前に進む魔装車を追い越し先へと進んでいく‥‥‥
「一体、何が起きようとしているのだ。二つ‥‥いや幾つもの強大な魔力を感じる。この妾の国を滅ぼすきかっ!」
———女王は怒声と共にその黄色い九つの尾を靡かせ、怒りの篭った瞳で風を切り音の方向へと姿を消した。一方のリコリスは女王に残れと言われても諦めていなかった。何故なら‥‥
「———感じる‥‥あの少年の温かい魔力が‥‥」
———太陽が空に姿を現していた午後の記憶。その記憶が私の頭に訴える
さらには幾つもの強大な魔力の波動。
幾らお母様とて無傷では済まされない‥‥‥
「こうしては入れませんっ着替えて早くいきましょう!」
一体何が起こっているのか。知らない所、見えない所で何が起きようとしているのか‥‥真実を知る為に私は早急に着替え廊下を掛け出した———
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