最終試合 王女VSローネ(レオン)

試合が終了し、俺はファシーノ達の応援席に戻ってきたところだ


次の最終試合まで一時間ある。ゆっくりと休むとしよう


それにここまでくるのにもたくさんの人集りが押し寄せてきて、試合を労ってくれた


案外悪くわないかもしれない‥‥


「ただいま。はは、少し危なかったよ」


「ほんとよ。ヒヤヒヤしたわよ」


「私もドキドキしました」


「‥‥主は心配させるのがお得意のようだな」


三人とも、心配してくれていたのか‥‥流石に危なかったのは事実だが


「———俺もダメかと思ったよ。けどこれまでの経験を土壇場で生かせたのが勝機だったな‥‥」


「経験?」


デリカートが不思議そうに聞いてきたので、少し恥ずかしいが過去の経緯を説明した


「俺はずっと人の魔法や剣術を見ては真似てきたんだ。そして自分の型に嵌め込んで、改良していった。そして今の俺がいる。今回のは彼女の魔法を受け続けて、吸収して自分なりに改良した産物だ」


「「そ、そんな事ができるの?!」」


「ほう!主は面白い事をするのだな!」


ファシーノとデリカートは驚きのあまり目が飛び出しそうだぞ


ヴァルネラなんて酒を片手に笑っているし‥‥


「まあ、最初は全くできなかったがな。経験を積んでいたらできた。これは才能なのかもしれないな‥‥‥」


「誰もが貴方のような存在だったら怖いわよ‥‥」


ファシーノは驚き疲れたのか、もうどうでも良いみたいな表情になっている


‥‥そんな顔をしないでほしい、悲しくなる



そんなこんなで休憩しながら会話を楽しんでいたら残り10分の知らせが耳に届いた


「もう、そんな時間か。それじゃあ最後、行ってくる」


「行ってらっしゃい」


「頑張ってください!」


ファシーノとデリカートは清く応援してくれたがヴァルネラはこちらをジッと見つめ何かを言おうとしていた


「どうした?」


「———言い忘れていたが先程の”エリーとは何を話していたのだ?」


ヴァルネラが言い忘れていたこと‥‥それは二人の美少女を沸き立たせるのに威力を発揮した


「「それはどう言うこと?」」


ヴァルネラの奴わざとギリギリまで話さなかったな‥‥


ファシーノが怖い顔で迫って来るので包み隠さず話すことにした


マイアーレ商会の豚に買い取られると言う事、それに人質がいると言う事。

そのために優勝しなければいけない事。などなど‥‥


「そんな事が!?許せないわっ!女性をそんな手で奪おうなんて!」


「かわいそうです‥‥」


「なるほどな、そういう事か」


ああ、もちろんこんな事を聞いてしまえば黙ってはいられない 


俺も三人も———


三人は同じ女性として彼女を救おうと考えるだろう


「この試合の後、いいや夜かもしれない。忙しくなるぞ」


俺が一体何を考えているのか。何をしようとしているのか


‥‥三人の表情を伺うと三人はすでに決めていた様子だった


「ふっ、やはり俺たちはとんだお人好しだな」


そして三人に背を向けて下の闘技台に降りていく


レオン達がこれから関わる事の裏には強大な組織が絡んでいるなどこの時はまだ知る由もなかった‥‥



◊◊◊



俺は闘技台に着くとすぐに準備体操を始める


リコリス王女が来るまで何もする事ないからな


最終試合なのに緊張感がまるで感じないでいる自分が怖い


「いちにっさんしっと。ふう、体が解れるな」


「———とても余裕そうですね」


体操をしているといつの間にかリコリスが闘技台に上がっており、声をかけてきた


「いいえ。王女。あなたとの対戦は貴重なものです。ぜひ指南していただきたい」


俺は何時もの口調をやめた。しっかりと王族に対する礼儀や口調を重んじる紳士なら同然相手に合わせなければならないからなっ!


「そうですか。それはいい事です。では私が教えて差し上げます。そして、あなたの正体も‥‥」


「‥‥私の正体ですと?」


(どういうことだ?リコリスは何かを知っている様子‥‥女王がSSSランクなら他国から情報がきているはず‥‥。先程の戦闘で俺を勘繰っているな‥‥少し面倒くさいことになりそうだぞ)


「———とぼけても無駄です。その仮面を外して差し上げます」


リコリスの方は俺がこれまでの事件の犯人だと思っているのだろうか 


もしこの試合でリコリスに勝利してしまえばそれは確信に変わってしまうな‥‥


俺は貴賓席の方に眼を向ける。そこには脚を組み、頬杖を着きながら俺を観察している女王がいた


(ちっこの試合で見定めるきかよ‥‥)


俺は内心舌打ちしどうするか考える。先に駄目元で誤解を訂正するか、どうしようか‥‥


「———何を言っているのかさっぱりです。私はただ純粋に王女と戦いたいのですが‥‥」


「‥‥そうですか。それは失礼しました。こちらの勘違いです。忘れてください」


王女は謝罪をしてきたが絶対にまだ疑っているな


確実に暴いてやるっていう顔をしているし‥‥どうしたものか


「それでは最終試合を開始したいと思います。最終試合は女王陛下にお願いします!」


実況者が話し終えると貴賓室にいる女王に皆の視線が集める


女王が左腕を上げ、


「それでは———始めっ!」


腕を下ろした瞬間に戦いの幕を開けた

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