マイアーレ商会
俺たちは受付のある一階まで降り、受付嬢に追加の料金を渡した
「もう一泊お願いします」
懐から昨日と同じ値段の金を置く
「はい。かしこまりました、ではいってらっしゃいませ」
猫耳受付嬢は笑顔で俺たちを送ってくれた
ちなみに獣武祭に出場することは誰にも言っていない
———宿を出た俺たちは商業地区、商店街に足を運んでいた。商業地区まではルートは案外分かり易かった。道がとても広く端から端まで15mの距離はある
それに魔車が道の中央を走り、歩行者は道の端を歩く
しっかり道の端は歩行者専用になっている
俺は一人感心していた‥‥‥
(時代は止まらず進んでいる‥‥ていうか魔車かっけー)
一人で耽っているとどうやら目的の場所に到着していた。一直線の道に店が左右に建ち並美、全ての建物がモダンでオシャレな構造ばかりだ
この一直線の道は先が見えない程に続いている
またこの道は魔車が通行禁止なため、中央を歩いても平気だ
日用品に飲食店、宝石店に鍛冶屋。様々な店舗が並び色付いている
「防具はどこだろうか‥‥」
防具屋を探し歩いているととても立派な建物が現れた
看板を見ると『マイアーレ商会』と書かれており、武器に防具、宝石、洋服など多種多彩だ
俺は気になったので三人に聞いてみる
三人とも首を縦に振ってくれたので、早速入ると綺麗な女性店員が話しかけて来た
「———いらっしゃいませお客様。今日はどの様な御用でしょう」
笑顔を絶やさないセールスマンのようだ
俺が防具について聞いたら『ではこちらへ』と案内された
女性店員がもう一人来て美人親子を案内する
美人親子ことファシーノ達は洋服が見たいと言って反対側に行ってしまった
俺は女性店員の後ろを歩き防具の棚に案内された
「では何かありましたらお呼びください」
女性店員はそれだけ告げ何処かに行ってしまった
目の前に立て掛けられた防具の種類に迷っていると一人の男性がこちらに歩み寄って来る。薄気味悪い笑顔を作りながら俺に話しかけて来た
「———これはお客様。何かお悩みですかな?」
「ああ、防具を悩んでいてな。種類が豊富で迷っていたところだ」
俺は店員?に悩んでいた事を告げると一緒に選ぶと言うので甘えさせてもらう
「お客様のご予算の程は?」
店員は予算を聞いて来たので『金ならある』とだけ告げると
先ほどの薄気味悪い顔がなくなり満面の笑みを向けて来た
「そうですか!そうですか!申し遅れました、私マイアーレ・ポークと申しますっ!このマイアーレ商会のオーナーでございますっ!」
なんとこの立派な商会のオーナーだとは恐れ入った
でも見た目が豚なんだよな‥‥いや、豚の獣人か‥‥
「お客様。先ほど一緒に来られた方々はお連れの方ですかな?」
マイアーレはどうやらずっと見ていたらしい
終始笑顔のマイアーレの目がゲスのような笑みに変わるとこを俺は見逃さなかった———
(こいつ、絶対何か企んでいるだろ‥‥‥薄気味悪い)
俺はマイアーレを睨みつける
「おっとお客様そのような目を向けないでいただきたい。別に取りはしません。なんせ次に出店する店は美女揃いですから」
「‥‥‥それはどう言う事です?」
俺は疑問に思って渋々聞いてみた。すると包み隠さずにペラペラと話てくれた
こいつアホだな
「はいっ!特別ですよお客様?‥‥‥実は娼婦の店を営もうと思っており、それでですな、あの”花魁”を店に付けようと言う計画でございます。ゲヘヘ」
花魁という言葉を聞き背中に衝撃が走る
(俺の予想通りなら花魁といえば昨夜屋上から見たあの人だろう。しかしどうやってあの花魁をこいつが‥‥こんな豚が‥‥)
俺はマイアーレの顔を伺ってさらに探りを入れる
「それは‥…どの様にあの花魁を加えると?とてもじゃないが買われる様な花魁ではないでしょう」
「ゲヘヘヘ。獣武祭に‥‥あの花魁が出ることを知っていますか?一昨年から出場しているのですが、物凄い戦闘を繰り広げて決勝まで行ったんですよ。しかし一昨年も昨年も準優勝止まりで賞金を逃し、今年で優勝できなくば私が彼女を買うことになっているのです!私はですな最高級館に金をドッサリと寄付しているのですよっ!‥‥ゲヘヘ」
———あの花魁が獣武祭に出場していたとは、それに決勝までいく実力の持ち主と‥‥‥とんでもない人だったとは意表をつかれたな
しかしそれよりも気になることが花魁を買うと‥‥一体どう言った経緯で買うのか?花魁はあの娼婦街を統括している者。そのような人がこいつに買われると‥‥なぜだ?
どんなに金を積まれても決して買われるような存在ではないはず‥‥
これはとても根が深い話のようだ
よそ者がどうこうできる話ではないのだろう‥‥
それにこいつは俺を子供だと侮り過ぎている必要以上の情報をこいつは漏らしてしまった。それほどに花魁を手に入れることが嬉しいのだろうな、このアホは
「そうなのですか。しかしあの花魁がなぜ勝てないと思うのです」
そう、俺が疑問に思ったのはここだ。
一昨年も昨年も決勝まで行っても準優勝で敗れてしまうのが謎だ
準優勝でも天才的な戦闘能力だ。獣人からしたら準優勝でも誇れるだろうに
いったい如何してだろうか
疑問に思っているとその答えをマイアーレが勝手に言ってくれた
経営者の知識だけはあるようだが、やはりアホだ
「それはですな、あの獣王の娘。王女リコリス・ヴォルペが居るからですっ!」
おっと、ここで王女様の登場か。なんとも楽しくなりそうだな
「王女はそこまで強いのですか?」
「ええ、そうですともっ!とこれ以上は今日の獣武祭のお楽しみですな!」
———王女リコリス・ヴォルペ
一体どれほどの強さを持っているのか‥‥
俺はマイアーレに促されるまま胸当てだけを買い、店を後にした
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます