晩餐

———扉の鍵を開け中に入ると物凄い勢いで背中を押されてしまう


「ベッドが4つあるわ!」


「ふかふかですね〜」


女子二人は勢いよく部屋に入り久々のベッドで浮かれている

補足を加えるとベッドは左右に2つずつ並べられており、ベランダ付きだ


「主よ!これはなんて飲み物だ?」


ヴァルネラが何やら赤黒い瓶を持って聞いて来る


「それは、ワインだな。お酒だ」


「なんとこれは酒か?ワインとはまた変わった名だ」


まさか部屋に置いているとはサービスがとても良い、ずっと泊まっていたいほどだ。しかし、夕食前に栓を開けそうになるヴァルネラを俺は止める


「それは食後に飲むと良いぞ」


「む?そうか、では食事の後だな」


少し残念そうに元置いていた場所に戻す


それよりも俺は風呂が入りたい

汗を流したくてしょうがない


三人に『先にお風呂に行く』というと三人とも一緒にお風呂に行くという

まあ、男女別だしな。久しぶりの湯はゆっくり入ろうとするか———



———お風呂場に着き女子三人と別れ、服を脱いでお風呂の扉を開ける

体をきれいに洗った後、待ちに臨んだ湯船に浸かる


「はあ‥‥癒される。丁度良い湯加減だ」 


ここのお風呂は女子と男子で壁が分けられているが、壁が天井まで届いておらず隣の声が丸聞こえになる。 


なんなら水を掛け合う事ができるがそのようなマナー違反はしない


ゆったりと時間を忘れそうになると女子風呂の方から声が聞こえてきた


「———ヴァルネラ様のお身体とても大人です!」


「はっはっは、大人の魅力という奴だ。心配せずとも貴様らもすぐに大きくなるわ」


女子風呂の方はとても楽しそうに会話している

余り女性の会話を盗み聞きするのは失礼だからな、体を流して上がるか


「‥‥ファシーノ様!この膨らみはなんですか?!」


「キャアッ!デリカートやめなさい!ちょっと‥‥まって‥‥」


———ああ、俺は盗み聞きなんてしないさ、紳士足る者そんなことはしない


「———ハァハァ‥‥デリカートあなたやってくれたわね。いつか借りを返すから覚えておきなさい」


「ふぅ‥‥堪能しました。それにしてもヴァルネラ様のはまさに兵器ですね‥‥」


———ああ、俺は盗み聞きなどしない。 


風呂扉の前で体を長めに拭いてなどいない


「———ん?この胸か?揉みたいのなら好きにして良いぞ。それに隣にいる主も揉みたいのなら遠慮などいらなぞ〜!」


ヴァルネラはわざと俺に聞こえる声で壁越しに話しかけてきた


こいつ絶対に確信犯だ


「俺はもう上がる。上せるなよ」


一言告げ、風呂を後にする

後ろの方から女性たちの会話が聞こえるが愉しんでいるようだ。いろいろと‥‥


俺はすぐに着替えて今度は食堂に向かう

食堂は広く、テーブルがたくさん並べられており自由に席を取れる


また奥にバーテンダー並びにキッチンがある。お酒の種類がたくさんあり、夜などはバーに変わるそうだ


俺は丁度四人用のテーブルを見つけ腰を下ろす。すると店員がこちらに素早く歩いてきた。よくみると先程の猫耳受付嬢だった


「まさかウェイトレスまでされているんですね」


「はい。こちらの職も兼ねております」


「そうなんですね。では四人前の料理をお願いできますか?」


「かしこまりました。子供ですのにとても大人びていますねっ!」


猫耳受付嬢は『ふふふ』と笑いキッチンに向かい歩き出した


少しすると美少女二人と妖艶な雰囲気漂う女性が食堂に歩いて来る


「———おお、なんだあの美人!」


「———可愛い‥‥こんな男臭い食堂に癒しが‥‥」


「———あの女性に踏み付けられたい‥‥」


など食堂の男たちが声を漏らし自分の願望を口走っている者までいる


それほどまでに彼女たちの破壊力は凄まじい


そんな彼女たちが俺のテーブルに来るのだから当然周りの男も黙っていない


「おいおい、あの子供の席に行くぞ」


「もしかして子持ちなのか!?あの見た目で!?」


「なんと若々しい。おい、お前声かけてこいよ?」


「いや、お前が行けよ!」


周りの男どもは誰が話しかけに行くか口論している


「主よ、いろいろと誤解されているか良いのか?」


ヴァルネラが周りの男どもの視線が気になったのか俺に尋ねてきた


「好きにさせておけ。それより料理を注文しておいたから席に着こう」


彼女ら三人はゆっくりと腰を掛け、料理を心待ちにしている。


「どんな料理が来るか楽しみね」


「はい。とても楽しみです!お肉ですかね?!」


「それよりも酒が飲みたいっ」


一人だけ酒と言っているので『ウェイトレスがきたら注文しろ』と告げる


数分たち自分たちのテーブルに大きな皿が運ばれて来る


「お待たせしましたっ!」


ウェイトレスが大きな皿の蓋を開けるととても大きなお肉がこれでもかと盛られている


「「「ゴク‥‥」」」


女子三人の目の色が変わる


「これが注文し放題なんて、これは罪ね」


「こんなにお肉がたくさん‥‥」


「すまないが酒を頼めるか?」


女子二人は肉に視線が固定されたいる一方でヴァルネラは酒をウェイトレスに頼む


「かしこまりました。それでこちらのメニューが牛型魔獣ムッカの盛り合わせです」


ウェイトレスが説明をすると酒を取りに戻っていく


「さあ、俺たちもたくさん食べるぞ」


俺の合図に皆が一斉に肉を各々の皿に取り分ける


ファシーノはナイフとフォークを綺麗に使い上品に食べる中デリカートは少し苦戦しているようだ


「ファシーノ様はさすがです。私も綺麗に食べたいです」


デリカートが落ち込みながら呟くとファシーノは優しく教える


「デリカート大丈夫よ、すぐに上手になれるわ。いつでも教えてあげるから」


やはりファシーノは大人だな‥‥ 

もう一人の大人は酒をガバガバと飲んでいるがこうも違うとは‥‥‥


「この酒なかなかではないか。ほらほら貴様らも水なんぞより飲め飲めっ!」


ヴァルネラがファシーノとデリカートのコップに酒を注いでいく


「おいおい、まだ13歳だぞ。酒を強要する大人がどこにいる」


「ここにおるぞっ?主も飲め飲めっ!」


こいつは女帝だよな?一応周りからはこいつの姿が別人に見えているらしいが

あの精霊女帝ヴァルネラと知ったらがっかりするだろうな


そして進められるがままにファシーノとデリカートが酒を飲んでしまった


「ヒックッ‥‥ちょっと〜料理がないじゃない。おかわり〜!」


「うぅぅ‥‥なんだか熱いですぅ」


「はっはっは良いぞ、小娘ども!夜はこれからだ!もっと飲め〜!」


この後はいろいろと大変だった

料理を食べ始めてから二時間経つ頃にファシーノとデリカートは眠いと言い出し

夕食はそこで終了した

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