人族軍会議

———レオン達がエルフ大国に侵入したのと同時刻


ここは人族国チリエージョの中心


人族軍本部での重要会議にある女性が急遽出席していた


「———ではディア・ロンバル。今回の災害について報告をしてくれ」


最初に話したのが人族軍総司令パエーゼ・プレチーゾ。

世界最高峰の選ばれし者セレツィオナートにして五人の中の一人

容姿は紫色の髪に艶のある肌。大人びていてスラッとした肢体。


髪色と同じ瞳で彼女は私を見ている


「はッ!数日前よりマルゲリータ町での災害について私の大隊が派遣されました。そこで目にした光景が、天が裂かれ、大地が山が横断されていました。付け加え夜に調査していたところに男女の”子供に夜襲を仕掛けられ敗北しました‥‥」


「ほっほっほ。敗北とはまた笑えるのう。お嬢さん」


「軍人が負けるなどどう言うことかわかっておるのか?」


「まあまあお二人ともその辺に、何か理由があるかもしれないわ」


ディアの敗北発言を最初に意見したのがラツィオ・ベージュ。 

年はこの中で一番上にいてSSランクの白髪の老人。とても愉快あるお人だ。

参謀本部のトップでもある


二番目の発言者がパーニア・カンパ。

中年齢の男性で公爵家の主。茶色の髪をオールバックにまとめた威圧的な顔をしている。軍団長


最後の発言者がエミリア・ローマ。

黒髪のロングパーマに透き通るような肌。出るとこが出ているスタイル抜群のお姉さん的存在。年齢不詳。軍団長兼師団長

そして私のことを妹のように接してくれているお姉さま的な存在


「———話せ」


そして最後にパエーゼ総司令が鋭い視線で私を睨む


「はッ!私は彼に敗北したことは事実です。彼は私を倒し、そして亀裂の発生源へと向かいました。何をするのかと視線を送れば‥‥彼は魔法を使いました。しかしその魔法が問題でした‥‥」


話を遮る私にパーニア・カンパは話を早めるように促す


「それで魔法が何だと言うのだ。ディア・ロンバル」


「———その魔法は私ながら見惚れる程に美しく荒々しい‥‥そんな可視化できる魔力ヴィズアリタを周囲に放ったのです」


「———何と!そんな事があるものか!その眼は飾りかお嬢さん」


「ディア・ロンバル。Aランクになって尚そのような虚言を言うか」


「ディアちゃん。それは信じれそうにないわ‥‥」


SSランクの三人は信じられず私を相手にすることをやめる


「ディア・ロンバル。その可視化できる魔力ヴィズアリタの使い手はその後、何をしたのだ?」


しかしパエーゼ・プレチーゾはその話を詳しく説明するように促す

部屋の空気がより一層に重くなる


「彼は可視化できる魔力ヴィズアリタから剣を創造しました‥‥」


「‥‥またも虚言を!」


「———黙れ」


パエーゼ総司令の唐突な発言にパーニアは萎縮する

他の三人もこんなに不機嫌そうな総司令を見たのは初めてかも知れない


「ディア・ロンバル。 続きを」


「はッ!剣を創造した彼は亀裂に近づき何らかの魔法を使用しました。 直後、天の亀裂、大地の亀裂が剣に吸収され、厄災級の災害が何もなかったかのように元に戻りました」


この場の全員が驚愕を超え、雷に打たれたような衝撃が走っただろう


「剣を創造だと‥‥馬鹿な」


パエーゼ総司令でさえも先ほどの内容は信じられないと驚愕している様子


「なぜ、そのような者が今まで表に現れなかった?」


「‥‥‥総司令、この話信じるおつもりで?」


「パエーゼ殿、虚言ごとを鵜呑みにすると?」


「私はどうしたらいいかしら‥‥」


SSランクの三人はパエーゼに意見を尋ねる

その様子を私は黙って見ているしかできなかった


「ディア・ロンバルに確認したい。その厄災をお前達で修復できたか?」


パエーゼ総司令が私に問い詰めるが、その答えは彼女にとって予想外の知らせだった


「いいえ。不可能でした。私どもの大隊を駆使しても解析すら出来ずに行き詰まりでした‥‥」


「そうか‥‥我々の能力ですらも解析できないか。ディア・ロンバル先程の意見は誠だな?」


パエーゼ総司令は最後にもう一度、私にこれまでの発言は本物か偽物か問い掛ける‥‥


「誠です‥‥」


私は即答気味に返すことしかできなかった


「では、どうするおつもりで? 可視化できる者がパエーゼ総司令と他の四人以外に存在していたとなると大騒ぎですぞ。それにあの大戦から丁度5000年。何か裏がありそう匂いがします」


ラツィオは私の発言を一応に信じ、パエーゼ総司令に意見している


「ラツィオ殿、ディア・ロンバルの話を信じると言うのかね?貴方はとても聡明なお方だ。このような小娘の発言など信じては示しがつきませんぞ」


パーニアはラツィオに喧嘩腰に食い込んでいる。


そこにエミリアが透かさず割り込む


「パーニア様、その様な物言いですとディアを信じたパエーゼ様を侮辱する事と変わりませんか?」


「ほう‥‥パーニア。私を侮辱するか?」


エミリアの発言でパーニアは我に帰り‥‥


「こ、これは失礼しました!私ながら少々頭に血が昇っていたようで申し訳ございませぬ」


「よい。頭に血が昇ったのはお前だけではない。信じたくもない現実を前にするとそうなる」


「あ、ありがたき幸せ‥‥」


一部始終を見ていた私はホッとする。そこに目でウィンクしてきたエミリアに微笑み返す


(やはり、貴方は憧れるお方だ‥‥)


私が彼女に耽っていると会話が続けれる


「それにしてもエルフ領と人族領での事だ。エルフ側もこのことは知っているはずだ。情報を隠蔽しようにもできんだろう。一応エルフ側にも詳細を送ってくれ」


「かしこまりました。してなぜこのような時に姿を現すのでしょうか‥‥」


ラツィオの発言に全員が頭を悩ませる。


「それを知っていれば苦労はしない。国民に知られれば大問題だ。今まで力を隠していた者かも知れない。全く、可視化とはどんな奴だ‥‥」


パエーゼ総司令は深いため息を吐く


「全くです。わしも警戒しておきます」


「パエーゼ殿の指示に従いましょう」


「私も軍をさらに鍛えなおしますわ」


SSランクの三人とも意見が纏まり背筋を伸ばす


「ああ、頼んだ。では会議を終了とする!」



この後、人族軍の上層部では一層に警戒を強めた。


今回の報告は上層部だけに一時的に止まったがいずれ“その名前”が世界にまで広まることなどまだ誰も知らない。 

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