二章 穢れの少女
大国
——ここはエルフが納める大国アルベロ・デル・モンド——
名前の通り世界樹を中心に築き上げた大国である。
そして誰もが驚愕する大国。まるでお伽話の世界に入ったような幻想的な光景に誰もが心奪われる。
世界で一番綺麗な大国と言われており、世界樹は見上げても先が見えない程に高く、エルフ王の城は世界樹の頂にあると言われている。
国内には川が無数に流れ、枝分かれのように張り巡らされた水の上に、都市が形成されている自然と調和した街並み。また山の方角にはとても高く流れ落ちてくる滝があるのだが、そこから水が流れて来るのだろう
このエルフの国は半径20kmある程のまさに大国と誰もが言葉を揃える。
さらにエルフの特徴としては耳が少し尖っていて、エルフ達が最も重要視しているのが”白髪”である。
エルフは白髪を自分の命と同等に扱い日々手入れをしている。白髪こそエルフの絶対的威厳であり、森の民と言われているエルフは『風魔法』を最も得意としている。無論この大国はエルフだけではなく他の種族も大勢暮らしている。王がエルフだと言うことで別に差別は存在しない
しかし、どんな綺麗な国に観えてもそれは表だけを見ればの話であり、裏に潜む闇には誰もが見落とす事がある。どんな種族よりも下、種族の汚れと言われている”奴隷”が存在する。その9割は主に貴族に売られていくことから、奴隷の存在が表面に上がらず隠されてきた。
奴隷には売られた者、騙された者、自ら堕ちていった者、様々存在する
が、ある一人の『少女』はどれにも当てはまらなかった
◊◊◊
———エルフ大国の奴隷商の地下奥深く、水が天井から滴り落ちる。何十年も手入れが行き届いていない地下空間のさらに奥。手足に枷をされ、体は擦り傷だらけで血が滲み、頬は痩せ、真面な食事を食べていない容貌。
日の光を一生浴びることがない地下空間にいる”彼女は人生に絶望していた
———何で私だけ‥‥
———何で私だけ他の人と違うの‥‥?
———何で私だけこんな生き方しかないの‥‥?
———何で私だけこんな運命なの‥‥誰か‥‥
彼女はただひたすら絶望し、そして願った
———この絶望を、地獄を、この枷を‥‥誰かお願いどうか‥‥助けて‥‥
———後何年、何十年待てば良いのだろう
そのまま彼女はいつもと変わらない深い眠りに入っていく
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