その魔法の名は 『虚無』
——来い
——ラ・ヴェラ・オスカリタ——
俺がそう口を開いた途端、周りの空気が魔力の渦に変わる。
この世界において魔力とは濃度が高ければ高いほど魔法の威力があがる。
また濃密な魔力ほど、色が着き可視化され始める。可視化される魔力など普通はあり得ないとされ、通常魔力は体内に流れる血液のような存在。
観えない存在だが生物の体内に確実に存在している力。
ある選ばれた者が顕現できる超越した力。
それが
そして俺の可視化した魔力は黒く青紫のラメが混同する
それはまさに誰が見ても息を飲む美しさ。時間を忘れ魅入ってしまうほどの濃密さと繊細さと吸い込まれそうな彩色
「———な、なんなのだこの魔力は!
リーダーの男は膝を崩しながら唖然と呟く
そして俺を囲っていた渦が徐々に消えていき、俺のすぐ目の前に魔法で創造された黒い剣が浮かぶ‥‥‥
この世界において魔法で、魔力自体で剣を創造すると言うことは上位の存在それも階級SSS以上の存在にしか未だ成し遂げられていない御技
ただ剣を魔法で作るのは簡単だ。錬金魔法があるからな。
だがこの剣は剣そのものが魔力の塊であり魔法そのものであり、
———そして俺はゆっくりと目の前の黒剣を右手で掴む
(ああ、この魔力‥‥‥懐かしい)
そうこの魔力は5年前のあのとき、自我が崩壊しそうな瞬間に漏れ出た黒い魔力を制御し黒剣の形に創造したものだ
「久しぶりだな。やはりこの剣が手に馴染む。店の剣だと鍛錬にはいいが実戦では使い物にならないからな。——さて、待たせて悪かったな。さあ始めようか、一振りで終わりにしてやる」
俺はそう宣言する。もちろん舐めて言っているが、舐めるだけの力が俺にはあるのだと確信している。その言葉を聞いたリーダーの男は屈辱の顔をし吠える
「——舐めやがって!ならば私の魔法で消し済みにしてくれる!この魔法をお目にかかれることがどれ程幸せな事か教えてやろうッ!最上級魔法トラッシェンデンツァ・フォーコ!」
彼の放った魔法は俺を旅立たせ…てはいない。
この魔法は火の超級魔法か初めて見るな。伝説のドラゴンのブレスもこんな感じなのだろうか。
手を口に当て考えていると、俺の目前まで迫って来た———が俺は動かない。
「ははッ!凄すぎて動けないのか!ガキが消し飛べ!!!」
「——いいや。動けないんじゃない。動くまでもないからだ」
俺は黒剣を構えて振り下ろす体勢に入った。今から降りおろす黒剣【魔法】は全てを無に記す。
——万物の根元を全て無に
——存在や価値も無意味。
——そこには何もない
——いいや‥‥何もなかったという概念すら存在しない
——それは虚無
この魔法を魔法と呼んでもいいのかすらわからない
深くため息をする。 振り上げた右腕に力を込めて振り下ろす。
(そういえばこの魔法の名前を付けていなかったな)
そう考えながら黒剣を振り下ろし、こう呟いた。
「——
完全に黒剣を振り下ろした刹那、黒い斬撃が天まで高く上り、大地を裂き、天と大地を裂き斬る。
目の前の超級魔法を、リーダーの男を、その背後にある木を森を山を縦に斬った。
いいや、斬ったではない。そこにあった空間がなくなった。いや、元々無かった
剣から放たれた黒い斬撃が壁のように残り、それはまるで黒い壁のような物を想像させた。目の前の惨劇を何も知らない者が見たらきっとこう思うだろう。
『神が天地を裂き、神の怒りに触れた』と
自分でもまさかここまでの威力があるとは思ってもいなかった。
(これは禁忌の魔法だな。今後は使用を避けるか)
それにしてもあっけなかったな‥‥名前も聞いてはいないし、まあ死んだからいいか‥‥それよりも、
「さてと、リーダーの男は死んだって言うか消滅?したし、親の仇も取れたからいいか。それに”バラトロ?と言ってたな。あいつの所属していた組織なのは間違いないが、子供を誘拐して実験に利用するとはとても良い組織とは言い難いな。」
そう考えながら歩いていると、誘拐されたであろう子が洞窟のすぐそばで蹲っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます