彼の視線、私の視線

OKAKI

 私は地味子だ。

 真っ黒な肩にかかる髪は、2つに分けてくくっただけ。制服は、校則通りきちんと着る。スカートを短くしようとか、学校に来るのにお化粧をしようと思ったこともない。そもそも、お化粧自体したことがない。

 高校デビューとか言って、急に派手になって雰囲気の変わった子もいるけど、私は地味子のどこが悪いの? と開き直って、高校でも地味で通している。

 それでも、中学から仲良しのあきちゃんに加えて、新しい友達も出来た。みんな私と同じ、化粧っけのない顔をした地味子揃いだけど、楽しい高校生活を送れている。




「リナ! 宮嶋くん来たよ」

 あきちゃんの小さな叫びに、そっと後ろを振り返る。宮嶋くんが、男子達としゃべりながら教室に入って来た。

「宮嶋くんが歩いてる!」

「笑ってる!」

「カッコいい!」

 あちこちから、控えめな黄色い声が上がる。宮嶋くんは、女子の熱い視線や黄色い歓声に気付いているのかいないのか、澄まし顔で後ろ真ん中の自分の席に座った。

 宮嶋くんは、入学式の時から目立ってた。頭1つ以上抜きんでた高身長、スラリとした体形。短く刈り込まれた髪は、染めてなさそうなのに少し茶色い。切れ長の涼し気な瞳とスッと筋の通った高い鼻。その全てが日本人離れをしていて、周囲の人、特に女子の目を惹きつけた。

「宮嶋くんと同じクラスってだけで、運を使い果たした気がするね」

「まあ、そうだね」

 あきちゃんみたいにミーハーになれない私は、宮嶋くんを別世界の住人だと思ってた。後ろの席との間に透明な仕切りがあるような、テレビの向こう側の人を眺めているような、そんな遠くの人だと思ってた。


 あの日までは。

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