第59話 充足の時


 コトコはいろんな物を見るようになった。帰りがけに街中を歩いてどんなアクセサリーが流行っているのか、そしてその色は? かたちは? と眺めるのだ。


 流行りのものを作りながら、たまに自分が好きなデザインのものを作る。スワロフスキーのビーズをあしらった華やかなコーム。慣れてきたらワイヤーを足してボリュームがあるものを作ってみる。


「……」


 ——出来た。


 頼まれていた物を作った時とはまた違う充足感を指先まで感じて、コトコはため息をつく。


 辛い時のため息とは異なるそれは、今までになくコトコを満たしていった。





 つづく

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