第31話 年の初めの
元旦——。
まだ暗い時間にコトコは起きた。最近は朝寝を減らしているし、何より元朝詣りをしてみようと思ったのだ。
早い時間を選んだのは、混雑を避ける為と——家族連れを見たくなかったからだ。いや、もっというならばお一人様の自分を周りから隠す為だろう。
——今なら目立たないよね。
そう思って初めて行く近所の神社に向かう。まだ薄暗いのに赤い提灯が道沿いに並び、ちらほらと屋台まで出ていた。
少しだけ並んで、握りしめた御賽銭を放った。
——カンッ。
硬い音がして、コトコの投げた硬貨は賽銭箱に弾かれる。
「嘘でしょ」
神様に嫌われた気がして、コトコは慌てて賽銭を拾い、もう一度賽銭箱に押し込んだ。
心臓がバクバクと鳴る。
——神様、嫌わないで。
慌てすぎて二礼二拍手したかすら覚えてない。
元旦から嫌な予感がして、御神籤は引かずにコトコは帰った。
つづく
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