第22話 聖女の出現 【ウィリアム視点】
「何故、どうして、君は……どこに行ってしまったんだ…」
「もう、諦めた方がよろしいのでは……」
彼女、エラが姿を見せなくなって、
一年と三ヶ月──。
一度愛してしまった心は、そう簡単には変えられない。
諦めの悪い私の友、私達の王子。
これは執着というのか、それとも真実の愛なのか。
日々、何かが足りない部分を誤魔化すように、エリーは業務を押し込み、文献を漁り、何か手がかりはないかと、彼女の姿を探す。
そんな時だった──。
聖女が現れたと、報告があった。
王子であるエリックは政務で国を出ていたので、側近である私がまず話を聞いた。
「で? どこの誰なんです?」
「はい、レイ男爵家の養子であるカーラと言う名の少女です。」
「カーラ……」
残念だが〈エラ〉ではなかった。
しかし、まだ分からない。
この一年の間に、何か変化が起こっても不思議ではない。
「歳は17、元々平民で一年程前、レイ男爵に気に入られて養子として迎え入れたそうです。」
「一年前……? しかも、17歳……」
『もしかしたら…』と期待した。
物語の中だけの真実の愛は、こうして出来上がるのかと…。
だが、期待のし過ぎは良くない。
現実はそう甘くない。
「容姿は、どんな方ですか」
「いえ、それが、王子が迎えに来ないと家から出さぬと仰っていて……。」
「ふん、生意気だな。 婚約出来るからとつけ上がっているのか。」
「はい…、恐らく……。 親子の関係も築けぬまま大事な娘をやるのだから、それなりの物がないと渡さないと……」
聖女が使える魔法はとても貴重だった。
致命傷でもない限り、どんな傷でもすぐに治し、病に悩まされる事なく人生を送れる。
戦争でも負傷者が出ないので、聖女が居ればどの国とも暫く和平が結べる。
「面倒だな……。 そもそも本当に聖女なのか?」
「はい、目隠しでしたが、負傷した騎士の傷が跡形もなく……、私の知り合いですので間違いないかと。」
「はぁ……、そうか…」
だから、聖女が現れた際、逃さないようにと王家の誰かが、結婚する決まりだ。
勿論、今の王家にはピッタリの人物が一人だけ。
エリーが婚約しなければならない。
よっぽどの事がない限り、婚約してから一年後には、正式な妻となる。
まだ、分からない。
その〈カーラ〉と言う人物が、逢瀬を重ねていた〈エラ〉なのか……。
「殿下が帰ってくるまで、待つしかないか…。」
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