エピローグ 2

「悪魔さん…………っ!」

 ぴょこんと飛び出してきたのは、紛れもない、マリィだ。

 出て行ってから2年が経ち、背も伸びていた。魔女の呪いの中にいたからか、身長は低めではあるが、これ以上ないほど綺麗な16歳の少女。大人っぽくもなったがそれよりも、魔女が来る前の昔のマリィの雰囲気に近くなっていた。懐かしい、明るい笑顔。

「マリィ」

 マリィが走り寄ってくるのを見るのは、これが初めてだった。つい、見とれる。

 走り寄ってきたマリィは、悪魔の服にしがみつくようにして背伸びをした後、ぴょんぴょん飛んでくる。

 もしかして届かないのか、と思い、少ししゃがむと、首に抱きつくようにしてきた。

「…………」

 あまりのことに、驚く。

 そのまま座ると、落ち着いて抱きつけたらしく、満点の星の下、森の前の草原で、二人で座り込んだ。

 ……これは本当に本物のマリィだろうか。想いすぎた上での幻想か妄想か、それとも誰かに謀られてはいないか。

 ゆっくりと頭を触ると、確かに自分の魔力と障壁を纏っている。……本物だ。

 抱きついたまま、マリィが話し出す。

「エルリックをお城に送ったあと……、国を回ってきたの。……この街に居た人を探しに……。この街に、戻りたいんじゃないかと思って。けど、何人かにしか会えなかったわ。家族にも、友達にも、会えなかった。……執事だったトーマスには会えたけど、私が知っているより若返ってた。……会えた人は皆、もう、自分の居場所を持ってたの」

 抱きついてくる手に、きゅっと力が入るのを感じた。温かい。

「……それで」

「…………」

 静かに、マリィの声に耳を澄ませる。

「それで、本当に一人になった時、私にも、今どうしても、会いたい人がいることに気づいた」

 少し、震えているようにも感じる声。

「……だから、時間はかかったけど……私も、会いたい人に会いに来た」

 それだけを言うと、マリィの手により力が入る。

「…………」

 そこまで聞くと、それに返すように悪魔もマリィを抱きしめた。

「一緒にいたいの。ずっと一緒にいたいの」

 マリィが改めて顔を離す。火照ったマリィの顔が見える。そのキラキラした目に映るのは、紛れもなく悪魔だった。

「うん……僕もだ」

 輝く星の下。それはいつまでも輝く星の下。

 悪魔は大切な言葉を言った。

「おかえり、マリィ」

 すると、幸せそうな声で、マリィが応える。

「ただいま、悪魔さん」

 馬を離してやり、ひょいとマリィを持ち上げると、空中へ飛ぶ。

 ふんわりと抱きしめると、ここにいるという実感が持てた。

 つい、嬉しさが出てしまい、くるりと旋回しながら、屋敷へ向かう。

「きゃぁぁ」

 マリィが笑っている。

 人の居なくなった街で、二人きり。

「お腹は空いている?何か作ろうか」

「……一緒に食べてくれる?」

「もちろん」

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