第3話 接触(Boy meets girls)
ログを漁り、リアルタイムの書き込みをチェックし、愛称や人間関係から名簿と突合して、個人の絞り込みを進める。
おおよそ、このあたりと目処をつけたあたりで……。
逆に、先方から呼び出しがかかった。
ま、調べているの、当然のようにバレるよな。
友達の友達で繋がる情報経路は双方向にオープンだから、どうにも仕方がないほど好きになってしまって調べているなんて話、誰かの親切で向こう側に伝わってしまうだろうさ。
それに……。
相手は、それなりに他校から声がかかることも多いほど綺麗だと。だから、「またか……」なんて感じもあったらしい。
でも、いい機会だ。
顔を合わせて、俺の予測が間違っていたら、土下座して謝ればいい。
メールでなんやかんややりとりして、呼び出されたのは駅前のビル内のフリースペース。
カラオケボックスとかでなくてよかった。人目もあるし、逃げることもできる。きっとこれは、向こうも同じことを考えている。
待っているのは、女の子2人だという。それが俺の見通しを甘くしたことは否定できない。また、決して自分が浮ついたとは思っていないけど、綺麗な子だという事前情報も、俺の未来予測を修羅場から遠いものと予測させていた。
あとから思い返せば、根拠なんてまったくなかったんだけど。
「はじめまして」
俺と視線が合うなり、女子2人、そう挨拶してきた。
すぐに判った。
ターゲットとした高校の制服を着ていたからね。
「はじめまして」
そう返して……。
なんで、俺が相手だと判ったんだろう?
俺、逃げることを考えて、人の波に紛れやすい私服を着て来たのに。
姑息と言わば言え。
相手のネットでの書き込みの用心深さを見れば、俺だって自衛する。
促されるままに、自販機で自分の分の炭酸水を買って同じ壁際のテーブルに付く。
あらためて挨拶を交わして、とはいっても、ネット上のハンドルネームで胡麻化して、本名は名乗らなかった。このために、実在感がある名前にしておいたんだ。
俺だって、用心深いんだよ。
ただ、ネットのコミュニティの話は、調べる過程で使わざるを得なかった。
だから、俺がなんのために会いたいか、予想はされていたかもしれない。
改めて顔を合わせて。
……すごいな。
片や、たぬき顔の究極。芸能人にもここまで可愛いのって、そうはいない。ぷっくりした頬っぺたと、わずかにたれた大きな目があどけなさを演出している。援交なんて無茶するまでもなく、道行くお婆さんあたりからだっておやつとお小遣いをせしめられそうだ。
片や、人という生き物はここまで綺麗なのかっていう究極。モデルでも、ここまで綺麗ってのは、絶対にいないんじゃないか。
同じ大きな目でも、挑むようなシャープさと、すっと通った鼻、小さな唇が近寄りがたいまでの女神感を出している。
ここまでくると、同席できて舞い上がって嬉しいというより、現実感がない。
「私達を探していたんでしょう?」
「はい」
たぬき顔に単刀直入に聞かれ、そのまま俺は素直に答える。
「どう?」
これは、たぬき顔が綺麗な方に投げた言葉。
「どうもないわ。
聞くまでもないでしょ。アンタが見た通りよ」
綺麗な方が答える。
「じゃ、仲間が増えた?」
「いや、それほどのものじゃない」
……いきなりソレか。
単刀直入にもほどがある。
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