第2章 本番は本気で!!
スポーツ観戦は2階席で!
今日はついにやってきたスポーツ大会本番の日だ。
俺は体育着に着替えて、グラウンドで同じクラスのメンバーが参加しているサッカーの観戦をしていた。観戦とは言っても、他のクラスメートに合わせているだけなのだが……
ちなみにバレーボールはいつから始まるのかと言うと、昼ご飯を挟んだ後で2時間後になる。
それまでは完全に自由行動なので、事前に琴乃葉に言われた通りに女子のバレーを観戦しに行くことにした。
「小鳥遊! お前も女子のバレーを見に行くのか?」
「あぁ。後輩に来いって言われててな」
俺に話しかけてきたのは大川だった。大川は「ふ~ん」とだけ言ってついてきた。
「大川はどうしたんだ?」
「俺も似たようなもん。女子バレーの奴に言われたから見に行く。ついでに千秋にも言われたから」
大川はバレー部のキャプテンをやっていることもあって、かなり顔は広い。実際に普段から大川の様子は教室で見るが、大川に1年生や同級生が訪ねてきているのを見ることもある。
「そういえば、千秋と琴乃葉が試合しているって聞いたな……」
「そうなのか?」
「そ、そーだぞ」
大川は俺の単純な疑問に笑いながら答えた。俺が思わず怪訝な顔をしていると大川は続けて話し始めた。
「やっぱり2人とも仲良かったのかな? って思ってな」
「2人ってどういうことだ? ちなみに言っておくけど俺と千秋は話したこともないぞ」
「そっちじゃないよ。俺が言っているのは琴乃葉の方。小鳥遊の反応を見る限り当たっているそうだな」
「さすがに普段から話していたらそうも思われるか」
「そうだな。2人が付き合っているって疑う奴もこの学校には結構いるしな」
大川は俺に笑いながらそう言ってきた。それに続けて「まだ付き合ってはなさそうだけど」とも言ってきた。余計なお世話だ。
そして、大川はそれまでヘラヘラとしていた顔を一転させて、真剣な顔になった。
「それと…… 勝手にだけど小鳥遊の事を調べさせてもらった」
「……どこまで知っているのか?」
「琴乃葉と小鳥遊が同じ中学校出身だということ。何か理由があってこの町に来ていること。琴乃葉の事情は知っているけど小鳥遊のことにまで踏み込むつもりはないから安心してくれ」
「本当にそれだけか……?」
「それだけだ。……でも今日の試合は期待しているからな」
大川はそう言い残して俺の少し前を歩き始めた。体育館に着くまでのたった数分間。その時間はどこかいたたまれなくて、長く感じた。
それよりも、大川は俺が昔バレーをしていたことを知っている。そのことは最後の一言からも容易に想像できた。
体育館に着くと、それまでの空気を一転させて、俺は大川に「1人じゃ飽きるし一緒に見ないか?」と誘われた。
特に断る理由もないので、俺と大川は階段を上がって2階へと上がった。
2回には観戦にきている生徒が多くいた。今は女子の試合をやっていることもあって、同じく女子生徒が多くいるように思えた。
バレーボールの試合をやっているのは合計で3面。この学校の体育館はそこそこの広さを持っているので、同時進行で3面分ができているようだ。
その中で他とは比べつかないほどに盛り上がっているコートがあったので、そこを見てみると、俺が体育館に来た目的であった試合が行われていた。
「コトハン、ラストお願い!」
聞きなれた声がしたので、その声の持ち主をよく見れば先日にも一緒にビーチバレーをやっていた夢が琴乃葉にトスを上げていた。
夢のあげたトスを琴乃葉はバレー部顔負けのスパイクで俺と同じクラスの女子がいるほうのコートへと叩きつけるが如く落とした。
それに千秋は「ドンマイ! 次取ろう!」と見方を鼓舞した。
「1年生の方、かなりヤバいな…… あれでバレー部がいないのか……」
「そうなのか…… ちなみに俺のクラスの方は?」
「うちはバレー部が3人に、千秋含めて経験者が2人。残りも全員が運動部だ」
「そんな俺たちクラス相手に1年生は互角に当たっているのか……」
俺は大川と一緒に琴乃葉が試合をやっているコートに近づきながら、そんな説明を受けた。
歩いている途中には「あの試合すごいね!」と言っている声も聞こえてきた。そんな噂を聞きつけてか階段を駆け上がってくる生徒もチラホラと見えた。
「いえーい! コトハン、やっちゃえー!」
この気の抜ける声は…… と思い見てみると、案の定亜紀が言っていた。
先ほど琴乃葉たちのチームが点を取ったので、サーブ権が移って丁度琴乃葉がサーブを打つことになったらしい。
琴乃葉は落ち着いてサーブトスを上げて、ジャンプサーブを打った。
そうやって打たれたサーブは千秋たちのコートに落ちかけたところをバレー部の手によってあげられる。
だけどそのレシーブはかなり乱れて弾け飛んでいった。
「琴乃葉、容赦ないな……」
「あいつってあんなこと出来たのか…… 普段はあんなに大人しいのに……」
「それは猫を被っているだけだぞ」
俺と大川は琴乃葉の容赦のないサーブを見て、冷静に琴乃葉のサーブの強さを分析していた。
だけど、そんな専門的なことは他の観戦者にはどうでも良かったらしく、サービスエースに対して大盛り上がりを見せた。
それから琴乃葉の2回目のサーブが行われたが、それは千秋が驚くほどに綺麗なレシーブをあげて、そのまま女子バレー部のセッターがトスをあげた。
そして、そのトスを上げたのはレシーブで体勢を崩していたはずの千秋だった。
千秋のスパイクからは驚異的な音をあげて亜紀の方へと向かった。亜紀は強いスパイクがきたことで身構えてしまって取ることはできなかった。
激しいサーブとスパイクの応酬が繰り広げられた、俺たちのクラス対琴乃葉が率いるチームの対決は幕を閉じた。
勝ったのは琴乃葉が率いていたチームで、そのチームは抱き合いながら喜びを共にしていた。あ、亜紀がこっち見てピースしてきた。それから亜紀は口パクで何か言ってくる。
「……タカちゃん先輩も頑張れ、か?」
なんて言うか、生意気な後輩だな。思わず笑ってしまった俺は大川に心配もされてしまったが、その後大川が千秋たちに話しかけに行ったので1人他の試合を見ることにした。
ちなみにだが、琴乃葉のチームはその後も圧倒的な強さを誇り優勝した。
(もうそろそろ俺の出番か……)
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