第2話 洗濯もの

「ぃや!」


月曜日の朝10時。

いつもと変わらない毎日。

いつもと同じ日常の、なんてこともない行動を繰り返していたあたしの心情に、ふとした亀裂が入った瞬間だった。

悲鳴にも似た言葉を発した途端に、あたしの心の中の何かが崩れ落ちた。


中古マンションの7階のバルコニーは陽当たりが良くて、真冬でもお日様が出ていたらポカポカと気持ちが良い。

出社する夫を見送って、物干し竿いっぱいに洗濯物を吊るしながら、近所の小学校の校庭を走り回る児童達を眺めては微笑む。

1日の中の幸せな時間ー。

キッチンからはラジオが流れている。

別に大好きな番組はないけれど、昼下がりのBGMにはラジオが一番だと昔から思っている。

そんなあたしを夫はこう言ってからかった、


「美咲は昭和だな。ラジオなんかスマホで流せばいいのに。わざわざアンティークなラジオを買うなんてもったいない」


その言葉をあたしは無視していたけれど、昭和だななんて言われると「おばさんだな」って遠回しに言われているみたいですこし腹がたった。

けれど事実だから仕方がない。

あたしはもう36歳なんだし。


夫と結婚してすでに10年の月日が流れた。

同じ会社の先輩と後輩。

付き合って2年経ったホワイトデーに夫からプロポーズを受けて、苗字を大野から佐々木へと変えた。

子供はまだいない。


ありきたりの毎日はいつも穏やかで、それはあたしの思い込みかも知れないけれど満足していた。

だけど、ふいにそれはやってきた。

夫の下着が、急に汚らしく思えてしまったのだ。

洗濯槽の中でぐるぐる回る男物の布切れが、あたしの洋服と絡まり合っている光景が不快でならなかった。

何故だろう。

あたしは洗濯機の電源を切ると、夫と自分の洗濯物を別々に洗う事に決めた。

躊躇なく、自然に身体が動いていた、

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