リトル・シスターズ
四宮マナ@異世界ファンタジー執筆中
始業式アルアル
第1章 俺の不幸な一日
第1話 『猫のエプロン、超絶似合わなッ!』
朝6時。
カーテンを開けるとヒンヤリと冷気が伝わってくる。地平線から出てきたばかりの太陽が同時にぬくもりも伝えてくれる。
しかし。
「兄さん、邪魔です。光が入ってこないじゃないですか」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。こっちの電気つけたから」
「オハー、起きるの早いね……、ふぁーーァ。腹減った」
家の中の住人はすでに目を覚ましており、朝一の気持ちよさは吹っ飛んでしまう。
これから一日が始まるというのに既に自分の目の死にっぷりが窓に映っている。
すぐ後ろにたたずんでいる長く美しい黒髪の少女がキリッとした声で。
「いつまでそこにいるつもりですか? そろそろ朝食を作ってくれないと学校に遅刻しますよ」
四宮冬香、四宮家の長女で長く綺麗な黒髪が特徴的で、彼女の美貌をより一層際立てている(クラスメイトいわく)。
彼女の言葉に間髪入れずに返答があった。
俺ではない。
朝早くからエプロンを身に着け、髪を後ろでポニーテールに結わえている少女・春奈だった。
「お兄ちゃん、私も手伝うから、とっとと終わらせちゃお?」
そして一番最後に起きてきた少女・夏美が
「ふぁァああ~~。私はまた寝るから、ご飯できたら教えて~~」
今、俺は朝起きてから一言もしゃべっていない。だが、会話が成立してしまう。
一切会話に入っていないはずなのに、朝食は俺が作ることになってしまっている。
早朝からフラストレーションが少したまったので大声とともにストレスを発散することにした。
「今からご飯作るから、待ってろ!」
カーテンを全開に開いてから袖をまくり台所に向かうのだった。
※
四宮カイ・17歳・高2。
黒髪・身長170とちょっと・顔は真ん中から少し上くらい。
俺の早朝は妹たちのモーニングコールから始まる。
「お兄ちゃん、遅いよ! ほら、エプロン!」
「別にいらないから」
「そういうわけにはいかないよ。服汚れるから、ハイッ、つべこべ言わず着る!」
ポニーテールの少女から押し付けられたエプロンに袖を通す。
四宮春菜、四宮家の次女で中学3年生。面倒見のいい、できた妹だ。
「別にエプロンを着ること自体に問題はないけど……」
俺が袖を通すと、別の少女の笑い声が響いた。
「ブハハハハハハハッ、アユ兄、そのエプロンまた着てるのッ。超絶似合わなッ!」
「何言ってるの夏美! すごく似合ってるじゃん」
「春姉、マジで言ってるの!? アユ兄にネコ柄のエプロンなんて無理があるって」
春菜と笑い声の主の言い争いを
四宮夏美、四宮家の三女で、中学一年生。姉妹の中でもっとも生意気である。
「そんなに変かな……?」
春菜に聞かれ、俺は自身の格好を見る。
パジャマの上から可愛らしい黒猫が
夏美が笑い飛ばす理由としては十分だ。
「それよりもアユ兄、髪とかして」
寝癖がついた髪を触りながら夏美が寝ぼけ
「その前に一つ良いか?」
「うん?」
「下着姿で歩き回るのだけはやめてくれっていつも言ってるだろ」
夏美の今の姿はパジャマではなく下着姿だった。
張本人である夏美は含みのある笑みを浮かべながら。
「なになに、アユ兄? 中学1年の妹の下着姿に興奮してるわけ? マジキモすぎてうけるんだけど」
「そこまでは言ってないだろ! 兄に頼み事する前に服を着てこい!」
「はいはい、わかりましたーッと」
リビングから
隣で春菜は俺と冬香のお弁当を作ってくれている。
冬香と俺は高校生であり、春菜と夏美はそれぞれ中学3年生と中学1年生なので給食が出てくる。
「いつも悪いな。俺と冬香が用意するべきなのに」
「気にしないで。お兄ちゃんとお姉ちゃんも忙しいだろうし、できることをしてるだけだから」
「いや、春菜もそろそろ大会も近いだろ? それに、学校行けば、学食があるから……」
春菜は
「ほら、でたよ。学食。無駄に
「わ、わかってるよ」
今、両親は海外出張しており、家には俺と妹達しかいない。
そんななかで家事全般を春菜がやっている。
中学3年生といえば、部活も勉強も忙しいはずなのに俺達のために家事をこなしてくれる。
そんな春菜を見つめる。
「ど、どうしたの、お兄ちゃん?」
「ゥ……、お前はいつまでもそのままでいてくれ」
「何言ってるのか分からないよ」
はっきり言って他の姉妹に比べて春菜はよくできた妹だ。夏美や冬香の影響を受けないで欲しい。
「よし、できた! お兄ちゃんのほうはどう?」
「ああ、こっちもできた」
そんな会話を交わしながら俺は皿にトーストとスクランブルエッグ、ミニトマトを添える。
そしてリビングのテーブルで新聞を開いている冬香と、スマホをいじっている夏美のまえに朝食を置いた。
「夏美、朝からスマホいじるのはやめろっていつも言ってるだろ。いい加減にしないと没収するぞ」
「アユ兄がお母さんみたいなこと言ってる。マジ受けるんだけどォ。別にいいじゃん。アユ兄に害があるわけじゃないんだしィ」
「またその言い訳か。冬香もなんか言ってくれよ」
俺は同い年の妹・冬香に助けを求める。
「関係ないことで話題を振るのやめてください。私は忙しいんです。兄さんと夏美のじゃれあいに付き合ってる暇はありません」
新聞をとじた冬香は運ばれてきた朝食を一人で食べ始める。
「そうそう。時間は大事だよ。私もアユ兄にかまってる暇はないから」
話題の中心にいたはずの夏美もここぞとばかりに朝食を食べ始めて、会話を強制終了させる。
全身がワナワナと震えながらも、俺は怒りを抑える。
「あとで覚えてろよ……」
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