第8話 私の力

 すべての万物から愛される力とは?なんぞや?と頭にはてなマークをいっぱい出す。思わず首が傾げる。


「ふふっ、そんなに悩まなくて大丈夫よ」


「悩んでいる姿も可愛いな〜」


「父上そうですね!」


 なんかお父様とノア兄が違うことを言っているが、そんな事は頭に入ってこない。いまいちピンっとこない。


「母上、それはどの様な力なのですか?」


「それはね〜」


 お母様が言うには、すべての万物から愛される力とは、本当にすべてから愛されるみたいだ。神はもちろん、天使、精霊、妖精、神獣、人、などなど……。一見意思のない自然からも愛されるらしい……。えーっと、それは、すごく、すごく、チートなのでは!?!?自分にそんな力があるとは思えないけどな……。


 ちょっと自信がなくてしょんぼりしてるとお母様が私のことを抱っこしてくれた。


「エイミー、あなたは人の時の記憶があるから自分にそんな力があるとは思えないのでしょう?」


「……あい」


「でもね、エイミー。 元々あなたは人だった時も産まれる世界が変われば神の愛し子になっていた存在なのよ」


「そうなの?」


「ええ。 あの世界の神はあまり干渉はしないからね。 見守る事が多いの」


「へぇ〜」


「だからね、神の愛し子になれた存在だから、エイミーあなたがこの力を持つ事はお母様予想していた通りだったわ」


「!!!」


「大丈夫よ、この力は悪い事じゃないし、自信を持ちなさい」


 お母様はにっこり笑って私の頭を撫でてくれた。そっか。確かにお母様が言う通り、悪い力じゃないし、むしろとってもいい力。私なんかがって思っていたけど、前向きに自信を持っていよう!そう思うと自然と笑顔になった。


「あい!」


「うん、エイミーは笑っている方が可愛いわ♪」


「エイミー、心配する事は無いんだよ。その力を持っていようが持ってなくても私達家族はエイミーの事愛するからね」


「っ! ……あい! おとうしゃま! ありがとう」


 本当嬉しい……。もしかしたらこの力せいでみんな優しいのかな?ってちょっとだけ思ってたからお父様にそう言われて安心した。


「あと、その力で周りがあなたの願いや思いを叶えようとすると思うわ。 でも、その願いが間違った事やいけない事だった時は私達もちゃんと叱るわ。 だからエイミーは色んな事を経験して学んでいきなさい」


「あい、おかあしゃま」


「うん、いい子ね♪ あと、まだ違う力があるかもしれないから当分はこの城で過ごしてね?」


「あい」


 当分はこの城にいないといけないらしい。まあ赤ちゃんだからそんなに遠くには行けないだろうけどね。この部屋しかまだ分からないから違う部屋も見てみたいなとか思う。


「じゃあエイミー、当分は僕と一緒にいようね!」


「あっ! ノアー! ズルいぞー!」


「ふふっ、早い者勝ちです! それにデスティノ兄上はお仕事あるじゃないですか?」


「えーーー! 仕事よりもエイミーと一緒にいたい!」


「デスティノ、ちゃんとお仕事してね♪♪」


「……母」


「してね♪」


「……はい」


 ……お母様笑顔なのに怖い。どこでもお母さんは強いんだな……。


「それにしてもそろそろセレネ達、来てもいい頃よね?」


「遅いね〜」


「今日みんなで集まるって言ってたのにな」


 ラル姉様、エルデお姉ちゃん、フィーお兄たまが言いました。みんなで集まるって言うことはまだ会ってないお兄様お姉様と会えるのかな?


「まあ滅多にみんな集まることは少ないし、緊急ではないからね」


「父上そうですね。 これ以上増えるとエイミーを抱っこ出来ませんからね」


「あー! またディヴァイン兄上が抱っこしてる! 僕も抱っこしたい!」


「ノア、諦めろ」


「……」


 そうです、またいつの間にかディーお兄様に抱っこされています。ディーお兄様は私を抱っこするのが好きなようです。


 みんな、赤ちゃんが珍しくて抱っこしたいみたいです。もう正直誰の抱っこでもいいです。小さくあくびをして抱っこで争っているお兄様、お姉様達を見ていました。








 ところ変わって、ここは闇が支配する領域。闇属性の憩い場。常に夜で光は月の光のみ。そんな闇の領域のトップである女神セレネに訪れた客人。


 光を纏いながら現れた女神ルチアーノ。その光から逃れようと下位の神や精霊、妖精、動物達が逃げて行く。


「ルチアーノ、光の威圧を出しながらここへ来るではない」


「ごめんなさい、セレネお姉様。 ちょっとした悪戯ですわ」


「ここは妾が支配する領域よ。 下位の闇属性の子達にはそなたの光は恐ろしいのじゃ」


「ふふっ、それよりもここでくつろいでいる様ですが約束をお忘れですか、セレネお姉様?」


「約束とな?」


「やっぱりお忘れでしたわね。 今日は末の子が生まれ会いに行く約束をしたではありませんか」


「おお! そうじゃった!」


「セレネお姉様が一緒に行こうと仰ったからわたくし待っていたんですのよ? それなのに全然いらっしゃらないですもの」


「すまない……、すっかり忘れておったわ」


「多分、わたくし達が最後になってしまいますわ! 早く末の子に会いたいというのに!」


 思わず力が入ったのか、ルチアーノ光の威圧が力を増す。辺りが光で眩しくなる。


「ルチアーノ! すまない! その光の威圧を抑えてくれ!」


「もう! 早く行きますわよ!」


「分かった、分かった! ちょっと待ってくれ。 ーーーーカエいるか?」

「こちらに」


 そう聞こえて闇の中から1人の男が現れた。


「カエ、妾は末の子に会いに行ってくる」


「かしこまりました。 行ってらっしゃいませ」


 こうしてセレネとルチアーノは急いで末の子に会いに城へ向かった。








 もう一方の2人も城へ向かっていた。アッシャムスがインヴェルノを迎えに行き、引きずる形で連れて来た。


「インヴェルノ、ずっと閉じ籠っていたのか?」


「ーーーーーうん……」


「今日はみんな、母さんに呼ばれてただろ? 新しい子が生まれたと」


「興味ない……」


「いや、だからって呼ばれてるのに行かない訳できないからな!」


「めんどくさい……」


「あー! とりあえず会っとけ、なっ!」


「ーーーーーうん……」


 アッシャムスは心の中で『はぁ』っとため息をついて隣のインヴェルノを見た。閉じ籠っていたところを無理やり連れて来たからなのか、機嫌が悪い。もう周りが吹雪いている。こんな調子で末っ子を怖がらせ無ければいいが……。


 そんな心配をしつつ城に向かった。

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