第5話 観察されてました

 まだエイミーがスヤスヤ眠る中、6人はソファーに座ってくつろいでいた。


「それにしてもノアはエイミーにメロメロね! 私が気付くまでエイミーに指を握られて動けなくなっているんだもの! なのに! ぜんっ全然助けも呼ばないし、むしろニコニコしてエイミーの寝顔見てるし!」


「エイミーの寝顔は可愛くていくらでも見れます!」


「ふふっ、ノアは初めての妹だものね♪ 嬉しいのよね?」


「はい! すごく嬉しいです!」


 ノアはエイミーに会ってからずっとテンションが上がりっぱなしだった。そんな様子の息子、弟にエマリーバ達は微笑ましく思っていた。そんな風に思っているところにガヤガヤと言い争いながら近づいてくる気配がある。皆その気配に気付き、誰が来たのか大体予想がついた。


「これはあの2人が来たわね」


「そうね~あの2人は仲が良いのか悪いのかよく分からないわ~」


「まあ、なんだかんだ言って仲がいいんじゃないかな?」


「あら、この気配はお兄様もいらっしゃるわよ」


「本当ね、言い争いを放置してるあたり流石ね」


 そして少し時間が経ち、トントントンっとノックする音。


「母上、ディヴァインです」


「どうぞ入って」


「「失礼します」」


「しまーす」


 そう言って入って来たのは、3人の男。2人は礼儀正しく、1人は軽い。だが、当たり前に3人とも美形だ。


「母上、新しい家族に会いに来ましたよ」


「母ー末っ子どこー?」


「お前はまた! はぁ、母上すみません」


「大丈夫よ、それより2人ともほどほどにね」


「本当よ! うるさくしてエイミーを起こさない様にね!」


 ヘーラルはあらかじめに2人がまた言い争わない様に釘を刺す。まだエイミーはスヤスヤ眠っているのだ。可愛い寝顔で眠っているのに、2人が騒いで起きてしまわない様に。


「おや、新しい家族はエイミーと言うのですか? と言う事は女の子ですか?」


「ディヴァイン正解だよ!」


「新しい家族はあなた達の妹よ。 今は寝ているわ」


「本当~可愛らしい小さい女神よ~」


「ほぉ、それは会うのが楽しみですね」


 ディヴァインは、エマリーバの1番最初の子供。ゆえに今までは10人の兄。今更1人増えただけではそんなに特別感はない。ただ兄妹が増えただけ、その存在に会っておこうそんな気持ちだった。


「えー、末っ子寝てるのー? つまんないじゃん!」


「デスティノ、あなたはもっとちゃんとしなさいな」


「エテェネル姉ー、自由にするのがいいんだよ!」


「はぁ、アンフィニの苦労がちょっとは分かるわね」


 デスティノ、ノアの上の兄で兄弟姉妹達の中ではまだまだ子供だ。しかし、神としては一人前としてやる事はやる。ただ自由で気ままな性格で、子供ぽっい。兄のアンフィニに探されて、言われるまで末っ子が産まれることも忘れていたし、何より末っ子を見に来たのもほんの気まぐれだった。


「寝てるのなら仕方ないですね。母上出直しますか?」


「アンフィニ、大丈夫よ。じきに起きると思うわ」


「そうですか、なら少し待ってましょうか」


「ええ、寝顔も可愛いから静かに見てみなさいよ」


「アンフィニ兄上、本当に可愛らしいですよ!」


「おや、ノアはもう妹に夢中ですか?」


「アンフィニ兄上も会えば分かりますよ!」


「そうですか」


 アンフィニはキラキラと目を輝かせながら話すノアの方が可愛らしいと思っていた。いつもデスティノには振り回され、アンフィニとってはノアは癒しの存在だ。新しい妹は、デスティノみたいな感じじゃない事を祈っていた。自分は神なのに。


「じゃあ静かにね」


 そう言ってエマリーバはエイミーの寝ているベビーベッドに案内した。最初にエマリーバがエイミーを見るとスヤスヤ眠っている。エマリーバはエイミーの今の状態を診ていると、最初の力が安定して来て見た目も少し成長したみたいだ。もうじき、起きるだろうと思いながら3人にエイミーを見せた。


「この子がエイミーよ」


「母上、この子はその、なんて可愛らしいのですか!」


「兄上の言う通り、本当に可愛らしい。なんだか寝顔を見てるだけで癒されます」


「母ー、俺抱っこしたーい!」


「デスティノそれは起きてからにしてちょうだい」


 3人は思った。寝顔を見ただけなのになんでこんなに可愛らしいのか!?と。ただ兄妹が増えるだけと思っていたディヴァイン。なのに一目見ただけでこんなに愛おしいとはと、衝撃を受けていた。アンフィニも、デスティノもそれぞれ衝撃を受けていた。


 そんな様子の3人の息子を見てエマリーバは、クスリと笑う。思った通りにエイミーを見て愛おしいとそれぞれが思ったはずだ。エイミーの力が判明した事でよりエマリーバは3人がエイミーのことを家族として愛すると確信していた。


「他の弟妹達の赤ちゃんの時を見て来ましたがこんなに愛おしいと思った事は初めてです」


「兄様、それはそれでなんか私達に失礼じゃない……」


「ほんと~ひど~い」


 エルデとヘーラルは失礼なディヴァインに文句を言うが、ディヴァインの関心はエイミーに向けられているため聞こえてない。


「癒しの存在はノアしかいないと思っていたけどこれからはエイミーも癒しの存在だ」


「アンフィニお兄様も失礼ですわね」


「僕はアンフィニ兄上の助けになれたら嬉しいです!」


 アンフィニも無意識に言っていて、関心はエイミーに向けられている。視線はエイミーに固定されている。


「早く起きないかなー」


「多分もうじき起きるから待っていてあげて」


「早く、早く」


 デスティノは早くエイミーが起きないかなと、じっとエイミーのことを見ていた。早く起きてエイミーと話したい!抱っこしたい!とワクワクしながら。


 そんな3人の視線を気配をビシバシ感じたのか、エイミーが身じろぎ始めた。そしてエイミーが目を覚ました。

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