第24話 優衣視点④


 「んぅ…?」


 いつの間にか、眠っていたようで、眼を擦りながらベットから体を起こすと…記憶が甦る。


 そうだ…私、彼にフられたんだ…。


 確か、その後はマネージャーから、暫くは活動休止と言われ…自宅まで送ってもらって、それから…覚えてない。


 あれから、何日経ったのかも分からない。


 彼は、私の人の領域にズカズカ入って来たり…わがままなのが無理だって言ってた。


 彼の言葉を思い出す度に、胸が張り裂けそうで、痛くて痛くて、涙が出る。


 「うっうっ…私じゃッ…駄目だった」


 辛いよ…苦しいよ…。


 布団に包まり…枕を濡らしていると、突然玄関の扉が勢いよく開いた。


 「優衣ーーー!! ああ、こんなに見窄らしくなっちゃって…。私は! 私は悲しい!!」


 「琴音…うるさい…熱い」


 流石に、今は琴音のテンションについていける気力がない。


 そして、抱きつかないで。


 「優衣…彼の本当の気持ちを聞きたいと思わない?」


 「え…?」


 本当の気持ち…? でも、彼は私にもう2度と自分の前に現れるなって…うぅ。


 「ああ…もう! 泣かないの! ほらほらほら! 私は笑ってる顔の優衣が好きだぞー?」


 琴音はそう言って、私の顔を自分の大きな胸で抱きしめ…頭を撫でられた。


 くすぐったい…でも、少し元気が出た。


 琴音がいてくれて良かった。


 「お! 少しはマシな顔になったね!!」


 「マシな顔って…酷くない?」


 「フフフ〜いつまでも、落ち込んで優衣が悪いんだよ? なんなら、私が良い男紹介してあげようか? イケメンかつ、高収入! 性格もよし! 今ならお得だよ!!」


 「…ううん。いい」


 一瞬彼の事を忘れて、次の恋を探そうとも思ったけど…このまま彼を忘れたくない。


 それに、琴音はさっき何て言った?


 「私は、彼の気持ちを聞きたい」


 初音そう言うと、琴音はどこか寂しそうで、でも嬉しそうな顔をして微笑んだ。


 「そっか」


 でも…また、拒絶されると思うと、体が震える。


 それでもーーー


 「琴音、私と一緒に行ってくれる?」


 「もちろん! それに私の可愛い優衣を泣かした男に10発殴らなくちゃ気が済まないからね!!」


 「それなら、私も1発やっちゃおうかな?」


 「うん! やっちゃえやっちゃえ!!」


 シャドーボクシングをしだした、琴音を見て思わず笑みが溢れた。


 琴音…アンタが1番の友達だよ。


 ありがとう。


 「さっ! 行こうか! と…言いたい所だけど…まずは、お風呂に入ってこーい!! 髪もボサボサだし、ちょっと臭いよ!!」


 「ッ!?!?」


 臭いよ…臭いよ…臭い。


 琴音…友達だと思ってたのに、アンタとも話し合う必要があるみたいだね。


 でも、その前に…。


 「お風呂にお湯を入れてくる」


 私は、お風呂場に向かい…軽く湯船と周りを洗い、42度のお湯を湯船に入れた。


 お湯が湯船に音を出しながら…溜まっていく。


 ジョボジョボジョボ


 彼に会うの…怖いな。


 今、貴方は何をして、何を考えているんだろう…。


 

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