第14話 はぁ…そう


 「私の名前は初音はつね優衣。そして、もう1つの名前はVtuberで活躍してる梅1.00ホーチュンスよ!!」


 「はぁ、そう」


 嫌われるには、とりあえず冷たくすればいいよな?


 俺がなんて事もないように、返すと…びっくりしたような顔をした。


 「え!? それだけ!? 琴音からアンタが私が推しだって聞いたんだけど!! 他にもっとリアクションがあるでしょ!!」


 「いや、Vtuberの中で1番の推しだが…推しだからと言って、どうもしないだろ」


 思っていた事とすれば…現実の容姿までいいとは、思ってもいなかったぐらいだろう。


 「推しなのに、その態度…ありえないわ。普通なら「キャー! 握手してー!」とか「いつも応援してます! 頑張って下さい!」とあるでしょ!?」


 「俺をお前の普通枠にいれるんじゃねぇ!!」


 「な、なに突然怒ってるのよ!」


 「うるせぇ!!」


 …とりあえず、これだけ理不尽に怒れば帰るだろう。


 俺なら、間違いなく帰る。ついでに嫌いになってくれ。


 「アンタ〜嘗めるんじゃなわよ!!」


 「ぐぁ!」


 イッタ! 信じられない…コイツ本の硬いところで殴りやがった!!


 「全く…アンタ。余り私を嘗めないことね…ネタは上がってるのよ!!」


 ネタだと…? まさか、身内に俺の情報をバラした奴がいるのか!?


 だが、昔から付き合いがある友人は、親友と呼べるぐらい仲だし、裏切る何てことはないはずなんだが…。


 もし、仮にあの中に裏切り者がいるのだとすれば…まぁ、それは仕方ないだろう。


 アイツに裏切られるようなら、諦めもつくぐらいだ。


 …な。


 「何のことだ?」


 「私…知ってるのよ?」


 無意識に喉がなり、冷や汗が噴き出る。


 「男の中には、好きな女の子を虐める人がいるということをよ!!」


 「………ハ?」


 「そりゃあ? 私可愛いし? 虐めたくなる気持ちも分からなくもないけど、女の子には優しくするものよ!」


 …とりあえず、友人達が俺の情報を漏らしていないことに…安堵する。


 「好感度が上がれば、自然とそうるかもな」


 「それなら私と一緒にいる時点で好感度が上がってるはずでしょ!?」


 何て自信に満ち溢れた奴だ。


 俺とは真逆な性格だな。


 「いや、上がらんわ。勝手に上がっていくとか好感度、嘗めすぎだろ」


 「でも私が会ってきた男の人は、皆そうだったわよ?」


 え? 何? 自慢?


 「そりゃあよかったな」


 「よくないわよ! 私に近づいてくる男の人は全員、下心いっぱいで…心から安心出来る人なんていなかったわ!!」


 まあ、それだけ容姿がよけりゃあ…それもそうか。


 「ふ〜ん」


 「ふ〜ん…て、それだけ!? ここは慰めて私の好感度を上げる所でしょ!?」


 黒髪ショート…いちいちめんどくさいな。苗字で呼ぶか。


 初音は、俺の態度に不満を持ったのか…手元にあった本で床を「バン! バン!」叩き出す。


 俺はそれを呆れた眼で見た。


 「別に好感度を上げる必要ないだろ」


 「なんでよー!!」


 床を「どん! どん!」と…足で鳴らし、怒り始めた。


 「…お前、いい加減に帰れよ」


 全く帰りそうになり初音に、俺は心からそう願った。

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