第12話 開き直り


 結果的に盗み聞きになってから数日…アルバイトが休み日で、ダラダラと家でVtuberを見ながら、ス◯ブラをしたりで、休日を満喫していた。


 最近は、色々な事があったからなぁ…体は休めても、考える事が多くてゆっくりする事は出来なかった。


 俺は千円のタラ◯ラしてんじゃねぇ〜よの蓋を開けて3本を口に咥える。


 これは幼少期から、好んで食べていたお菓子で、小さい頃は小さな袋に入っていた物を購入していたが…大人になった今、贅沢な大盛りサイズを買える。


 それだけは、大人になってよかったと思っている。



 そんな事を思っていると、『ピンポーン』とインターホンが聞こえた。


 しかし、今はス◯ブラをやっていた事もあり…手が離せなく、3分程待たせる事になってしまった。


 もちろん、その間にインターホンが、しつこい位に鳴っていた。


 「はぁ〜い、どちら様?」


 家のドアに付いている、覗き穴から見ると…帽子を深く被り、マスクをしている、見るからに怪しい人物が眼に入った。


 「開けて」


 「え…嫌です」


 「どうしてよ!!」


 「え? だって、見るからに不審者だし…特に最近は物騒だから何かあったら怖いし」


 そう言うと、ドアの前にいる不審者は…どこかショックを受けたような雰囲気が感じられた。


 「不審者…不審者…」


 ヤベェな…マジで不審者じゃねぇか。


 本当に通報しようか考えていると、不審者が突然帽子を取り…黒い髪が露になった。


 その顔は、前に俺が強制的に連れて行かれた場所にいた、黒髪ショートの女性だった。


 「これで不審者じゃないと分かったでしょ! 周りの眼も気になるから開けて!!」


 …正直嫌なんだが。


 人がせっかく休日を満喫しているのに、なぜ部外者を家に招き、休日を台無しにされなくちゃいけないんだ。


 「ちょっと! 休日を台無しってどうゆう意味!?」


 「あ…やべ、言葉に出てた」


 「あの〜どうかされましたか?」


 ドアの前で騒いでいたせいか…隣に住んでいる人が、不審に思ったのか声をかけてきた。


 「あ…その」


 何か急にしおらしくなったな。


 そういえば、この前の電話で言ってたな。普通に喋れるようになるには、回数が必要だと。


 てか、まずい! このままじゃ隣の人から管理人に、変な事を言われるかもしれない!


 俺は素早く扉を開け、声をかけた。


 「いや、ちょっと虫が出ましてね。退治するまで外に出ててもらったんですよ」


 「そうなんですか?」


 急に出てきた、俺に不審な眼を向け…黒髪ショートの女性が頷いたのを確認すると、自分の家に入っていった。


 「アンタが早く開けないから、不審に思われちゃったじゃない…」


 「見るからに、不審者な格好をしてる奴が何を言ってるんだ…」


 周りに聞こえないように、こそこそと話していると、黒髪の女性が何か気がついたのか、ピタリと止まった。


 そして、赤髪の女性とはまた違った、笑みを浮かべ…


 「お邪魔しまーす!!」


 「あっ! おい!」


 俺の横を素早く通り過ぎ…部屋に入っていく黒髪ショートの女性を見ながら、態度が180度変わったのは、絶対に開き直ったからだと思いつつ…部屋に入っていた女性を追いかけた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る