第9話憂鬱生活スタート~とうとうご対面!!!~

「遠いところよくおいで下さいました…。お久しぶりです。夏陽国かようこく国王。雷覇らいは殿…」


とうとう、この日が来てしまった!!!謁見の間にて雷覇らいは殿を出迎える。

部屋の上座には怜秋れいしゅうが座り、わたしはその横で立ち扇子を握りしめながら、淡々とした口調で挨拶を述べた。

ガフッ。なんかめっちゃ見られてるんですけど!!睨まれてるんですけど~!!っこわい!!

早くなんか言ってよ。気まずいでしょ。この空気!!それとも、…。

仮病を使って、会うのを避けてたのがバレた??銀獅子ぎんししを怒らせた?わたしピーンチ!!


「あの…。」


とうとう、沈黙に耐えれなくなって声をかけた。


「申し訳無い、あまりに怜琳れいりん殿が美しいので、話すことを忘れいた」


「はぁ…」


ゲフっ!!!!何ナノ!!!のっけからそんなテンションなの!甘い!あっまいよ~。

心の中は大パニックだったけど、努めて冷静に対処しようとした。


「この4年…。ずっとこの日をお待ちしておりました。怜琳れいりん殿」


「またまた、そんな大袈裟な。わたし以外にも素敵な女性は沢山いますでしょう?」


ほほほ。といった顔で笑って見せてるけど、表情筋がピクピク震える。やーめーれー!


「あなた以上の女性がこの世のどこにいるというのでしょう!!少なくともわたしは見たことがない」


「まぁ!雷覇らいは殿はあまり女性と話す機会がなかったのかしら?それは勿体ないことですわ!!

隣国にはわたし以上に素晴らしい姫様が沢山おりますのに」


「まぁ、このまま話すのも何だし場所をかえませんか?」


怜秋れいしゅうが上手く割って入ってくれて助かった!!

あれ以上続くなら、胸焼けで死んじゃうところだったわ。ありがとう!!怜秋れいしゅう



場所を応接室に変えて、座って話すことになった。

わたしの横には怜秋れいしゅうが座り、わたしの前に雷覇らいは殿が座るかたちになった。

あとはお互いの従者がひとりづつ。

ってか!!雷覇らいは殿の従者、めっちゃイケメン!!雷覇らいは殿が肉食動物なら

彼は草食動物って感じで、かわいらしい顔をしている。褐色の肌に黄色みがかかった、ふわふわの髪。

絶対触ったら気持ちいいやつ!!!ふわふわの猫みたい~。


怜琳れいりん殿はよどほ、わたしの従者を気に入ったとお見受けする」


「えっ!そうですか?気の所為では~?」


ヤバい!思わず見つめてしまった!!!

すっごい!怒ってるんですけど!!ごめんなさい!!モフモフしたいって思って、ごめんなさい!!!


「とても珍しい容姿だから、見とれてしまったのでしょう。両目の色がそれぞれ違うなんてこの国ではいませんから」


怜秋れいしゅうナーイス!!!ありがとうございます!!助かった~。


「ああ。確かに彼の目は珍しいな。オッドアイと言って生まれつき片目の色素がないんだ」


「まぁ。そうなんですね。とっても神秘的で素敵ですね!!」


「お褒め頂きありがとうございます」


礼儀正しくお辞儀された。オッドアイって言うのか~!片目ずつ色が違うって。


「あの、目に見える景色は同じ色なんですか?」


わたしは思わずサイガって人に尋ねた。


「若干違います。少し光に弱いので右目だけで見ると、景色は薄く見えます」


「そうなのですね!すごいわ!」


わたしはニコニコしながら話していたが、急に部屋が寒いんですけど~。

怜秋れいしゅう雷覇らいは殿も何をそんなに怒っているの?!ちょっと目の話をしただけでしょ!!

なんで??わたし変なこと言ったかな?


「ところで、姉の結婚についてですが、いきなりのことでかなり困惑してます。僕としては姉の気持ちを大切にしたいと思ってます」


怜秋れいしゅうが話を遮って本題に入ってきた。

そうそう!今日の本題ってそれよね!!さすが怜秋れいしゅう!!


「弟殿の言うとおりだ。だが、わたしは真剣に怜琳れいりん殿を正妃として迎え入れるつもりでいる」


雷覇らいは殿、真剣なのはありがたいですが、わたしは結婚する気はありません」


きっぱりと告げた!ふう!スッキリ!!やっぱりいいたこと言わないのは体に毒よね~。


「なぜ?結婚しない理由はなんだ?」


「理由も何もわたしは、結婚しません。もう3度も結婚してますし、雷覇らいは殿と結婚する理由もありません」


「結婚する理由ならある。わたしが怜琳れいりん殿を愛しているからだ」


「っっっっ!!!!」


その場にいた全員が一瞬固まったような気がした。

愛!!!いきなり何を言っているの雷覇この人は?もちろん、愛は大事よ?でも一国の主が愛だけで結婚できるならだれも苦労はしない。

って言うか、わたしの気持ちは無視か!!!


「わたしは雷覇らいは殿を好いてません!だからわたしとの結婚は諦めてください!」


「それならば、結婚してから好きになって行けばいい。必ずわたしを好きだと言わせてみせよう」


満面の笑みで雷覇らいは殿は答える。う~ん。やっぱり話しを聞かないタイプね。こいつ!!


雷覇らいは殿を好きにはならないです。だからどうぞ諦めてください。そもそも4年も文通してたのですよ?

わたしがその間に好きになっていないのなら、今後も好きになることは無いです」


「文だけではわからないことがある、今日のように顔を合わせて話をすれば変わるかもしれない。わたしのどこが不満だ?」


っもう!!いヤダ雷覇この人、言葉通じないの??理解力ないの?馬鹿なの?


「人の好みは色々あるという事です。雷覇らいは殿はわたしの好みではありません!」


「うむ。それは顔か?性格か?」


引き下がらないな~。まぁ想像してたけど…。グイグイくるな!どうなってんのよメンタル!!

わたしなら、冒頭部分で撃沈してるわ!ここまで来たらわたしと結婚というよりかは何か他の目的があるんじゃないかって思っちゃうわ!

はっぁ!!ま…。まさか!!怜秋れいしゅうってことは無いでしょうね!!!

あり得るわ!こんなにかわいくて、スタイルも良くて、頭もいいんだもの。それなら尚更、断固阻止!!


「どちらもです!!」


「なるほど…。わかった」


え?え?わかってくれた?本当に!!やった~ばんざーい!!わたしは思わずその場で小躍り思想になった。


「では、この話はなかったことに…」


怜秋れいしゅうが言いかけた時だった。


「今日から一ヶ月間、毎日ここへ通おう!それでお互いのことを知っていけば問題は解決だ!!」


「はぁ?!」


ちょいちょいちょい!待てぇい!!!何で話がそう飛ぶ!!今の会話でどこに、通い妻的な要素があった!!!

ってか、あんたは国王でしょう!!!!

あまりにも突拍子もない提案に、わたしは固まってしまった。


「どういことですか?雷覇らいは殿」


落ち着いた口調で怜秋れいしゅうが尋ねた。


「言葉のとおりだ。今日から一ヶ月間、毎日城下街から王宮へ通う。なに、滞在先は心配しなくてもいい

城下街で宿を一ヶ月間抑えている。ちょうど、周辺国の調査もしようと考えいた。問題ない」


「あくまで姉はついでってことですか?」


「いいや、ついでは調査の方だ」


空いた口が塞がらない。なんで?どうしてそうなるの?怜秋れいしゅう雷覇らいは殿が色々話しているけど

頭に入ってこなくなってきた。目の前がくらくらする。私の気持ちは?なんで無視するの?


「それに我々がこの国に滞在すれば多少なりともお金を落とすことになる。メリットしかないと思うが?」


「それにあまりこんな事を言いたくはないが、こちらは強硬手段に出ようと思えばいつでも出れる」


「っっっ…!!!」


急に雷覇らいは殿のまとう空気が変わった。ビリビリして痛い。目つきもさっきとぜんぜん違う。

銀獅子ぎんししだ!!銀獅子ぎんししを起こしちゃったよ~!!!(泣)


「戦争したいのか?あなたは?」


口調は強いものの、怜秋れいしゅうは至って淡々と答える。さすがだね!!天晴だ!!


「そんな気はない。怜琳れいりん殿が望まないからな。だからわたしは穏便に話を進めたいとおもっている」


何よ!!さっきから聞いていれば、自分勝手なこと言って!!ブルブル怒りで体が震えるのが分かる。


わたしのなにがわかるの?



わたしのなにを知っているっていうの!!!


………………・・。




ブチ!!!わたしの堪忍袋の緒が切れた……。


「いい加減にしてください…。雷覇らいは殿。さっきから聞いていれば好き勝手ばかり…。」


怜琳れいりん殿?」


「あなたがわたしをどう思うかは勝手です。だったらわたしの気持ちは?なんでわたしの話を聞いてくれないんですか?理解しようとしてくださらないのですか?」


だんだん、気持ちに蓋が閉まっていくのが分かってきた。体の温度が下がってく。

もう、どうでもいい。戦争でもなんでもすればいい。それでもわたしは結婚しない。そう決めているから。


「そなたを理解しようとしている。だから毎日会いに来ると言っている。何を怒っているんだ、怜琳れいりん!」


「それは雷覇らいは殿がしたいだけですよね?子供が駄々をこねているのと同じだわ。もう結構です…。戦争でもなんでもしていただいて構いません。そうなったら二度とお会いする必要もなくなりますし…。丁度いいですね…・」



わたしはそれだけ吐き捨てるように言って部屋を出た。完全にキレてしまった。もう無理。

何を話しても伝わらない。理解されない。もっとちゃんと話を聞いてくれる人だと思っていたど。

愛していると言われる側の気持ちも考えてほしい…。それがどれだけ苦痛か。

どれだけ身を引き裂かれるように感じるのか…。







「わたしはもう誰も愛さない…。誰も好きになんてならない…・。」


簪を握りしめながらわたしはそう呟いていた。




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