第6話憂鬱生活スタート~いざ城下街へ!!~

いや~。久しぶりの街はいいね!!わたしは思いっきり伸びをする。

わたしが城下に街よく来ていた理由は、いくつかあるけど一番大きいのは

街に知り合いを沢山つくり、国の様子を把握するためだ。

わたしの国、秋唐国しゅんとうこくは宝石や金がたくさん取れる。

そのおかげで街には沢山の商売人が出入りしている。

宝石を買い付ける人や、それを売る人。人が多い分統制も難しい。

状況を知るには自分の目で見るほうが早い。でもわたし一人でやるには

限界があるから知り合いをたくさん作ることにしたのよね!!


きっかけは息抜きにお忍びで、街をウロウロしている時だった。

困っているお婆さんがいて、助けてあげたらお礼に街をよく知っている人を

紹介してくれて、その人が困っていることを助けてあげたらまた別のを人を

って感じで人脈を作っていたの!わたしってば天才!!


「おっ!シュウじゃねぇか!最近見なかったけど元気だったか?」


果物屋さんの店主が話しかけてくれた。因みにシュウは

わたしが変装している時の名前。


「よっ!久しぶりだな!最近はずっと仕事で忙しかったんだ」


今ではこんな感じで街のあちこちにわたしの顔見知りがいっぱいる。

ありがたいことに、街の様子を教えてくれるから大体のことは

把握できるようになった。人脈って大事よね!うん。うん。


「最近変わった事はなかった?」


「そういえば、この先の高級旅館にすごい金持ちが来たって、ウチの女房が騒いでたな」


「へぇ・・・。そうなんだ。どんな人なんだろな?」


「多分この国のヤツじゃないのは確かだなあ。着てる服が全然違うそうだ」


「おもしろそうだな。ありがとう!ちょっと様子を見てくるよ」


「おう!またいつでもウチの店に寄ってくれよな!!」


店主のおじさんに手を降ってその場を後にする。

高級旅館に来ているのは、おそらく雷覇らいは殿だろう。

もうこの国に来てるなんて・・・・。

彼の国からここに来るまでどんなに急いでも、馬車で2週間はかかる。

つまり送られてきた手紙はこの国にはいってから送られてきたと思っていい。

やっぱり、気の抜けない相手だわ。ぐぬぬ。

まぁ、気にしても仕方ない。問題はここからどうひっくり返すかよ!!

あの旅館なら知り合いは何人かいるから情報はすぐ手に入る。その上で対策を考えよう。


聞いたとろこによると、2日前からそのお貴族様は滞在しているらしい。

褐色の肌をしていて髪の色は銀色。すごく体格がいいことと

首の周りは詰襟で、肩と腰にゆったりと布をまいている服装。

間違いなくその服装は夏陽国かようこくの服。

礼儀正しく、イケメンなため働いている女の子達が騒いでいるそうだ。

わたしにはどうでもいいけどね!!


「よし!そろそろ滞在先に行きますか!お腹空いてきたしね~」


あんまりウロウロして、見つかったら大変だからね!!

旅館で働いている女の子たちに頼んで、何かあったら連絡してもらうようにしてる。

商売のチャンスがほしいからと適当に理由を言えば問題なかった。

滞在先はこの旅館の目と鼻の先にある、一般人向けの旅館だ。

まさかこんな近くにわたしがいるだんなんて、雷覇らいは殿も思わないでしょ!

灯台下暗しってね!!


*-------------------------------------*

【高級旅館の一室にて】


「はぁ・・・。お前の姫さんへの執着には恐れ入るよ、やってることが

一国の主じゃねぇわ」


雷覇らいはの従者サイガがため息交じりにぼやく。


「国は関係ない。俺は彼女以外は考えられないからな」


雷覇らいははゆったり長椅子に座りながら答えた。

そうだ。怜琳れいりん以外は考えられない。この4年間ずっとこの日を待ってた。

その間の出来事は、腸が煮えくり返るほどの出来事ばかりだった。

夏陽国かようこくに嫁ぎ降家したと思ったら、次々に各国に嫁いでいった。

いずれも結婚相手が運悪く亡くなり、今は独り身だが・・・・。


「この日のために4年も待ったんだ。必ず手に入れるさ、どんなことをしてでも」


雷覇らいはは満面の笑みで、窓の外に目をやった。

3日後やっと彼女に会える。きっと4年前とは比べ物にならないくらい

美しくなっているだろう。そう思うだけで胸が高鳴った。

早く会いたい。触れたい。抱きしめたい。そんな思いでいっぱいだった。


「いや~。姫さんまじで可哀想に思えてきた。銀獅子ぎんししに好かれるなんてなぁ」


「うるさいな!なんでだよ!銀獅子ぎんししは関係ないだろ?むしろ

俺は絶対に彼女を幸せにするんだ。いいことだろ?」


「何でそんなに自信満々なんかね~キモいわ~まじで」


「ふんっ!なんとでもいえ!」


この時まだ俺は知らかった。まさか彼女に会えるまでに10日もかかることを。


*-------------------------------------*


「う~ん。よく寝た~」


旅館の一室で一晩過ごしたわたし。こんな状況でも寝れるわたしって

そうとう図太いよな~。とか思うけど、そうでなくっちゃやってられないからね!!


窓を開けて雷覇らいは殿が宿泊している旅館を見る。

まだこれといって動きはなさそうだ。

あと2日後には、わたしに会いに王宮へ向かうんだろうな・・・。

まぁ、怜秋れいしゅうが、うまく対応してくれるんだけど。

でも、何と言って結婚を断ろう?ちょっとやそっとじゃ、諦めるはずがない。

なんせ、あの銀獅子ぎんししだ。あの手この手で結婚に持ち込もうと

するに違いない。うーん。どうしたもんか。


女が好きで男性は好きじゃないんです!!とでも言ってみる??

いやいや!


「誰を好きになろうと関係ない、俺が怜琳れいりんを好きだから関係ない」


とか言いそう~!!次は体が弱くて子供は作れない。嫁としてふさわしくない。とか?


「子供ができなければ養子で貰い受ければよい。そなたは俺の傍にいるだけでいい」


うわ!!言いそう!!めっちゃ言いそう!!

んじゃ、顔がタイプじゃないとか?性格が嫌い?とか


「そなたが気に入るように努力しよう。見た目も性格もそなたに相応しい男になろう」

ガフっ!想像しただけでゾッとするけど、言いそうだな~。


「はぁ・・・・」


布団に倒れ込んで、枕を抱えながら思い返す。

こんな事なら手紙のやり取りをしているときに、はっきり断るんだったな~。

でも、あの時は雷覇らいは殿の手紙で救われた部分もあった。

嫁いで旦那様があっという間に亡くなってしまった。落ち込まないはずがない。

そんな時に、雷覇らいは殿は体調を気遣う手紙をいくつもくれた。


「いいお友達でいましょう!!」


と言ってみたときのことを想像したが、これも無理そうな気がしてならない。


はぁ。何でわたしがこんなに悩まないといけないんだ!!

だんだん、腹が立って来た!!絶対に会ったらガツンと言ってやるんだから!

わたしは決意を新たにするのである。


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