第5話憂鬱生活スタート~怜彬《れいりん》逃げる~
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彼だけには会いたくなかった。
彼の瞳、声、髪の色全てあの人に似ている。見ているだけで目眩がしそうになる。
胸が苦しい。息もできない。涙が出そうになる。今すぐにでも逃げ出したい。
そんな衝動に駆られる。
ああ。本当の憂鬱はこれからなのね‥‥。
今わたしの目の前にいる人は、
黄金の瞳に、褐色の肌。銀色に輝くの髪は後ろでみつあみをしてゆったり流している。
まっすぐ
扇子を握るてに力が入る。必死に笑顔を作り、動揺が悟られないようにする。
大丈夫‥‥・。いつも通りしていれば、大丈夫。
「遠いところよくおいで下さいました‥‥。お久しぶりです。
震える声を抑えながら、
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~10日前~
「うぇーん、
文通の一件を
黙ってたのは悪いけど‥‥・。あんなに怒るなんて‥‥。
自室のベットにうつ伏せになりながら、さっきまでのやり取りを考えていた。
「はぁ‥‥。」
「姫様。着物のままで寝ないで下さい」
部屋付きの侍女。リンリンに窘められる。彼女は私が小さい頃から
ずっとお世話をしてくれている。ラカンと同じくらい信頼できる人。
黒曜石のような瞳に、ボブカットの黒髪。黒色の侍女服を着ているから
威圧感ハンパない!
「だって、リンリン。
弟に嫌われた姉は生きる価値なしだわ‥‥・」
「
うぅ‥‥。リンリンめ容赦ない。かわいい顔なのに、全然かわいくない!!
しぶしぶ立ち上がり、部屋着に着替える。
まぁ。明日話し合うって言ってくれたから大丈夫よね!うん!
それよりも‥‥。よ!!2週間後の
そっちの方法を考えないと!!
要するに会わなきゃいいのよね~。さてさて。どうしたものか‥‥・。
部屋着に着替えたわたしは、机に向かってペンをとる。
思いつく限り書き出す。書き出すのが一番よね!!うん!!
まずは、仮病よね~。でも
きっちり影武者用意して顔を見られないようにしないね。
もしくは最初の面会は会うことにして、その後どこかに身を隠して帰るのを待つか‥‥。
う~ん。
なんとか、
ある程度書き出したところで考えがまとまってきた。あとは準備あるのみ!!
善は急げ!だ。
「リンリン。いくつか用意して欲しいものがあるんだけど‥‥。」
と言おうとして振り返ると、すでにリンリンの手には袋があった。
「準備しております。王宮の外へ出られるのですね?」
「すごい!!さすがリンリン☆話が早くて助かるわ、後は滞在先なんだけど‥‥」
「すでに何件か宿泊施設を抑えております。」
うぉぅ!!エスパーかよ!さすが、仕事のできる侍女様は違うね!!
袋の中身を見ると、変装用の衣装にカツラ、滞在用のお金など全部入っていた。
「よし!早速あしたにでも
「かしこまりました」
リンリンが頭を下げ部屋を出ていこうとしたとき、ノックが聞こえた。
「はい。どうぞ」
部屋に入ってきたのは、
なんか‥‥。嫌な予感がするんだけど‥‥。
「
「何かあったの?」
「とにかく急ぎの用件だということでございます」
「わかったわ。リンリン着替えの準備をお願いね」
「かしこまりました」
従者が出て行ったあと、わたしもすぐに着替えて
執務室には
なんか雰囲気暗いんだけど‥‥。
「どうしたの?
「姉さん。大変なことになった。ひとまず落ち着て聞いてね」
神妙な顔で
いやー!!聞きたくない。わたしの勘が当たっていれば
「3日後に王都につくそうだよ、
「はっぁ?3日後?どういうこと?」
「今、急ぎの使者がきて予想より早く王都についたから姉さんとの謁見を3日後にしてほしいと」
「くそっ!!やられた!!」
わたしは、思わず唇をかみしめた。時間差だったのね!!はなから2週間後にくるつもりはなかったのだ。
ということはあの手紙を送ったころにはもう王都近くまで来ていたんじゃない!!
ふふふ‥‥。なかなかやるじゃない。
だがしかーし!!残念。わたしのほうが一歩、先をいっているわ!!
「姉さん、
準備している。もしかしたらこちらの情報も筒抜けかもしれない」
「そうね。
相手の行動を予想して、一歩も二歩も先に手を打ってくる」
「でもこれはチャンスだよ。姉さん」
ニヤリと黒い笑顔で笑う弟。でもそれもかわいいぞ!!
「どういうこと??」
「3日後ここに来ても会わなければいい。こちらは準備不足で迎えいれられないってね。
その間時間を引き延ばして対策を考える」
「なるほど~!!相手の出方を逆手に取るのね!さすが我が弟!頭いい」
ガバっと、
『
「そうでしょう~。僕って頭いいんだよね~」
と言いながら
『わかったよ。姉さん。こっちのことは僕に任せて。気を付けてね』
「これでもう安心ね!!わたしは部屋へ戻って、どう対応するか考えるわ!!」
満面の笑顔でわたしは
「わかった。3日後どう対応するか僕も考えておくよ」
「ええ。じゃあわたしは部屋に戻るわね」
そう言ってわたしは執務室をでて自分の部屋へ向かった。
「リンリン」
「かしこまりました」
すぐにリンリンが持ってきていた袋をもらうい、変装用の服に着替えさせてもらい、
カツラを被る。どこからどう見ても少年にしか見えない。
あとは手袋をして…。指先って結構ばれるのよね。貴族って。
匂いもできるだけ消してってと。城下街の人はこんな香りさせないもんね。
うん。うん。完璧!って‥‥手慣れてるって?
そりゃそうでしょう~。わたしは、わりと?結構?お忍びで城下街へ行っているのよね~。
だから、今日が初めてじゃないのさ!!てへ!
行動力あってよかった~。ふふふ。これで
見てなさい!!ぜったに思い通りになんか、ならないんだから!!!
かくしてわたしは、その日中に城をあとにして城下街へ向かうのだった。
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