さよならの昇光

高柳孝吉

さよならの昇光。

バッタさんが死んでたよ。顔に傷があったバッタさんが、踏み潰されて、ぐじゃぐじゃになって、死んでたよ。


その数ヶ月前。バッタの赤ちゃんがたくさん産まれた。みな、希望?に満ちて、生きる力を体いっぱいに育んで。その中の一匹が、皆からはずれ、草原に飛び出した。元気にぴょんぴょん跳ねて、見つけた美味しい草をむしゃむしゃ食べ始めた。ーそこに、大きなカマキリが忍び寄って来た。そして、鎌のような前足を振った。子バッタの顔をかすめた。危ない!その時母バッタが、子バッタをくわえて飛び跳ねて行った。間一髪セーフ。母バッタは泣きながら、子バッタに

「たった一匹で離れて危ない真似をするんじゃないよ。」

と子バッタの顔に出来た傷を撫でながら叱った。子バッタも、泣きながら

「うん、わかった。心配かけてごめんね。もう、一匹で離れないから。」

と誓った。


子バッタは、跳ねて行く母バッタを追いかけ、そして少し離れて、空を見上げた。朝日が、昇って来るところだった。母バッタは、朝日を背景に子バッタを見た。長い時間ずっと子バッタは、朝日を見つめ続けた。

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さよならの昇光 高柳孝吉 @1968125takeshi

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