プロローグ

青い空と白い雲。それに目の前に広がる海。

ちょっと視線を遠くへやれば、渦潮の上を通る大鳴門橋。

そんな絶景の中、日が上りきらない砂浜にレジャーシートもなくただ寝そべっている制服姿のJKたちがいる。


一人はちっちゃい。

男物の服を着たら性別がわからなくなりそうなほど体に凹凸はなく、けれども他をよせつけないほどかわいい顔がこいつを女だと理解させる。


一人はでかい。

俺よりも身長は高く、ナニがとは言わないが、それもでかい。けれども太いとか言うわけでもなく、体型もすごい。顔も美少女のものであり、モデルであっても違和感はない。


一人はメガネ。

横の二人を足して二で割ったらこうなるのかと思う。町中で見たらまず間違いなく目を惹かれるが、横の二人の間だとその美貌は隠れてしまう。だが、横の二人になくてこいつにあるのがメガネだ。メガネがあることによって人は変わる。こいつの場合はメガネが魅力を引き出している。


そんなやつらをただ見ている変態さんなわけではない。

「おーい、起きろ!朝飯買ってきた」

じゃん負けの罰ゲーム。朝飯の買い出しのパシリの帰りだ。

「おい、起きろって」

誰も起きない。

揃いも揃ってスースー寝息をたてていやがる。

仕方ない。手前から起こすか。

「おい、部長起きろ!」

「んにゃ~。もう歩けない……」

おい、寝言が……

「何言ってんだよ、起きろって」

揺すってみるが起きる気配はない。

「ふ~ん、起きる起きるって、あと5分」

家じゃねーぞ。どうなってるんだ、こいつの感覚は。

「五分も何もあるか、アホ」

寝たままだと困る。こうなったら……

「悪く思うなよ」

一応断りを入れ、袖を捲る。腰に力を込めて、両手をこいつ腰の辺りに添えて

「それ!」

力一杯押す!

「イタタ。ひどいじゃないか。女の子を投げるなんて!」

「投げてねーよ!転がしただけだ!勘違いすんな」

今起きたのがちっちゃいやつ。部長こと、板東真奈。

「まだあと二人寝てるし、そいつら先でも良かっただろ!」

「一番手前にいたからな。寝てる場所が悪い」

「クソ!そんな理由とは。ボクの寝る時間を奪うのには何とも陳腐な理由じゃないか」

顔はかわいいが変なことで怒るし、すぐ拗ねるし、でもなんか完全には怒れない。憎いやつだ。

「うるせー!そんなこといってる暇あるならとっとと残りも起こすぞ」

「は~い」


次は真ん中。

こいつは少し揺すると起きてくれた。

「あら、おはよう。真司くん、真奈ちゃん」

メガネ美少女。笠井葵。俺のことを唯一名前で呼ぶやつだ。

「はいはい、おはよう。ぐっすり寝やがって」

「あらら、女の子の寝顔が見れたんだからラッキーでしょ」

「そうか、書記ちゃんはそれが目当てか~」

最後にこいつ。どうやら部長は起こすことに成功したらしい。でかいやつ。副部長の新居さくら。

「なに!そうだったのか、書記係」

「俺も眠いのにわざわざ朝飯買ってきてやったのに」

「それはそれ、これはこれ。乙女の寝顔は高くつくよ~」

「まぁまぁ、朝御飯に免じて許してあげましょ?選ぶのは最後で良いわよね?」

「はいはい。どうぞお選びになって」

「やったー!あっフルーツサンドイッチもーらい!」

「それ、私も目を着けてたのに……」

「なら、私は塩おにぎりを」

「くっそー、あっ、から◯君あったー!」

「なあ、俺の分残る?」

ワイワイ朝飯を食いながら海の景色を眺める。

海風がさっと吹いて時間を感じさせる。


俺たちが何をしているのか。

海を眺める訳でも、釣りをする訳でも、サーフィンをするわけでもない。

それは「旅」だ。

俺達は旅部。

あらゆる場所へ出掛け、そこの風を感じ、心のメモリーに保存する。

これは俺達が現代を旅する物語だ。

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