廃家の前の女

ツヨシ

第1話

その日はいつもとなんら変わることのない朝だった。


学校へ向かっていると、目の前にひろきがいた。


同じ高校に通う同級生だ。


俺は小走りでひろきに追いついた。


「おはよう」


「よお、おはよう」


二人してたわいもない会話をしながら歩いていた。


すると突然、ひろきが立ち止まった。


「おい、どうした?」


ひろきはなにも言わない。


そして俺などいないかのようにゆっくりと振り返り、ただ一点をじっと目を見開いて見た。


少し前に通り過ぎた、何年も前から廃墟と化している家の前あたりだ。


目が異様なほどに真剣だ。


俺はひろきの肩を叩いてもう一度言った。


「おい、どうしたんだ?」


「なんだ、あの女?」


ひろきはそう言った。


――女?


道は真っ直ぐで見通しはいい。


しかし女どころか誰一人見当たらない。

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