この世界で

やのつばさ

第1話

 頭が痛い。喉が渇いた。

 

 水……。

 

 腕を動かそうにも、重くて動かせない。

 自分の状況を確認しようと、目を開けてみようと試みるが、瞼が重くて開けられそうに無い。

 

 とにかく頭が痛い。自分はいったいどうしてしまったんだ。

 

 自分の身に何が起こっているのか、記憶を呼び起こそうと集中してみるが、酷い頭痛に意識が朦朧とするばかりで、原因の1つも思い出せない。


 唯一出来た事と言えば、酷い頭痛から解放される為に、再び意識を手放す事だけだった。







 ギルベルトは少し急いでいた。


「クソッ。思ってたより砂嵐がヤバイな」


 数ヵ国を渡って旅をし、今は、砂の国ケルフランクを訪れている。

 しかし、気象の変化が思ってたいたよりも早く。内心焦っていた。


 だが、砂嵐より気になっている物があった。

 どこからか、甘く芳しい花の香りがするのだ。

 そして、その香りはギルベルトの心を掴んで離さない。


 「何処からなんだ......」


 必ず見つける。気持ちばかりが焦る。



「ん?」


「見つけたぞ!」


 カラダが半分砂に埋もれていて、我ながらよく見つけられたと思う。まぁ見逃す気はさらさら無いが。

 

 見つけた瞬間、身体の奥から不思議な力が湧いて来る。

それと同時に愛おしさが溢れ出す。

 

 もう離さない......。


 ギルベルトは意識の無い小さなカラダを、宝物の様に丁寧に胸に抱き、額に口づけた。

 そして、そっとマントの下に抱き入れると

ようやく安心した様にマントの下の、小さな背中を優しく撫でた。


 もう大丈夫だ。


 ギルベルトの口元が微かに綻んだ。


「よし。街まで急ごう」






 

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