第44話 やっぱりヤベー奴だった
「な……ま、まさか本当に?」
鼻血を見た時点で怪しいとは感じたが、やはりこいつもショタコンなのか……?
思わず口にした俺の疑問に、エルニアは紅潮したままの顔を激しく左右に振った。
「い、いいえ、その、違うんです! 見た事も無いような綺麗なお顔だったので見惚れてしまったのは事実ですが、べ、別にやましい感情を抱いた訳では──!!」
「無い? 本当に? こ~んな間近で見てもそう言える?」
しどろもどろな言い訳を途中で遮ると、フェーレスは俺を背後から抱え上げ、エルニアの鼻先に俺の顔面を近付けた。
「はぅあ!?」
ブシャァッ!
途端に噴出した鼻血が、俺の顔へと正面から襲い来る。
「──ぉおおああああ!! 目が! 目がああああああ!!」
フェーレスに腕の上から抱き締められていた為に回避が出来ず、まともにそれを浴びた俺の視界が真紅に染まった。
「ああ! も、申し訳ありません!」
「いっ
咄嗟にエルニアはハンカチで俺の顔を拭うが、凝固しかけた血がざらりと肌を擦る感覚に俺は悲鳴を上げた。
「あああすみませんすみませんすみません!!」
「ふっ……ここまでのポンコツだとは計算外だったけど、あたしの勘は正しかったようね」
俺を解放したフェーレスが、最早ぺこぺこと頭を上下するしかなくなったエルニアを見下ろしながら勝ち誇っている。
アンバーからタオルを受け取って顔を拭く俺を他所に、フェーレスの追撃が続く。
「最初の反応でピンと来たのよ。あんたとあたしは同類だってね。ほら、白状しちゃいなさい。あんたも
ああ……敢えて触れなかったのに、わざわざ掘り出しやがってこの馬鹿が……!!
「──いいえ! それは大きな誤解です!!」
確信的だったフェーレスの言葉を、エルニアは意外にも力強い言葉で即否定した。
「確かに
……ん?
俺の疑問符を置き去りに、エルニアはそのまま熱の篭った弁を振るい始め、固く握りしめた拳を己の左胸へ叩き付けると、高らかに宣言する。
「私が真に親愛を捧げるのは、12歳以下の清らかな乙女のみ! その点は履き違えないで頂きたいのです! そして美少女を愛でる事とは、即ち紳士、淑女の精神を己に科した者にしか許されません! 例えその子が本当は女の子であったとしても、決して穢さずの覚悟を貫く事をここに誓いましょう!!」
広い会議室へと、エルニアの良く通る声が拡散していった。
やがてその残響が消え、静寂が訪れる。
「……はぁあああああ……」
数秒後、俺の口から魂が抜けるかのように溜め息が溢れ出し、意思に関わらず身体が膝から崩れ落ちた。
何故こうも超弩級の変態ばかりが集まって来るのか……
俺は四つん這いの姿勢で、がっくりと項垂れる。
「……ことごとく他者の本性を暴いてしまう自分の美貌が怖い……」
「お……お気を確かに、ヴァイス殿……」
アンバーが気遣って来るが、お触り禁止令を出している為に、手を差し伸べる事もできずにおろおろするばかりだ。
セレネとグレイラも隣で唖然としている。
「──あ~っはっはっはっは!! まっさか
対して事の元凶は腹を抱えて大笑いだ。
そちらを睨み付けるように視線を向けると、すぐ側に立つエルニアの様子も目に入る。
「あ……あ……!」
頭にヤカンを乗せれば湯が沸きそうな程に顔中を紅く染めたエルニアは、見る見る内にその目へ涙を溜め始めた。
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