クラス1のブスと言われる女の子に恋をした
楽樹木
1.きっかけ
俺は何をするにも退屈していた。
そんな放課後の教室でのひととき
「退屈だなー」
「彼女でも作れば楽しくなるんじゃないかにゃー」
俺の言葉に答えたのは一番仲がいい男友達である沢渡浩二(さわたりこうじ)
茶髪のロン毛を後ろで結んでポニーテールにしており、髪型だけなら女っぽいが顔は濃いタイプのイケメンだ。あとコミュ力が異常に高い。
話すようになったのは1年の時に席が隣だったのがきっかけで、2年でも同じクラスになった。
付き合いは1年間程度ではあるが、気兼ねなく何でも話せるのは浩二くらいだろう。
「彼女ねえ」
「学年1の美少女に、あっからさまに好意寄せられてなびかないとかホント信じらんない」
「別に好きじゃねーからなー」
「まさかそっちの気で俺狙いとか?とかとか?」
自分で自分を抱きしめてクネクネする浩二。
ちなみにこいつは僅かにオネェ要素はあるもののちゃんと女の子が好きである。
「ねーよバカ。さて、そろそろ帰るか」
「マックかどっか寄ってかない?」
「いいぞー」
そうして教室を出ると、噂をすればというか
「あっ、響君。今帰り?」
さっき話題に出た学年1の美少女と言われている白百合愛(しらゆりあい)と出くわした。
亜麻色の肩にかかる髪が夕陽を反射させて輝き、猫のように大きくクリっとした目に高く整った鼻筋、小振りだけどふっくらとした桃色の唇はまるで黄金比のようでテレビで見るハーフのモデルとかタレントを連想させる。
隣には友達の女の子を連れていて、名前は確か平川だったかな。
「ああ、浩二と寄り道するけどな。それと、名前呼びはやめてくれって言ったはずだが」
「まぁまぁ。で、どこ行くの?」
「まだ決めてないけど」
「私達も一緒にいいかな?」
「浩二、どうする?」
「俺はいいよん」
と、浩二が言うので4人で学校を出る。
そもそも俺が学年1の美少女と言われる白百合と知り合ったのは、3ヶ月前にこの辺りを騒がせた通り魔から助けたからである。
偶然に白百合が襲われそうになっている現場に出くわした俺は、庇った拍子に腕を浅くナイフで刺されつつも三学期開始当初で教科書が詰まった鞄を通り魔の側頭部にぶち当てて気絶させる事に成功した。
その後は、警察の事情聴取を受けたり表彰を辞退したり色々と大変だった。腕は五針くらい縫ったな。
白百合は白百合で刺された後に私のせいで怪我をと五月蝿いので
『女の子の体に傷がつくより、男が怪我した方が千倍マシだろうが』
と言って黙らせたのだが、それ以降も何かと絡んでくる。
どうせ吊り橋効果的なもので一時的に上がった熱ならそのうち冷めるだろうと放置しているが、まだ冷めないらしい。
マックに着いて4人席に座った。
「響君いつも学食だよね?お弁当作ってきてあげようか?」
「そうだよ、青羽君。作ってもらいなよ!」
「いや、悪いからいいよ。俺学食好きだし。その日の気分で好きなもん食えるし」
「むー、つれないなぁ」
「それに白百合から弁当受け取ったら周りが怖い」
「白百合ちゃん、俺なら作ってきてくれたら喜んで食べるよん」
「うん、考えとくね」
「それ実現しないやつー!」
実際には白百合と一緒にいて周りからやっかみを受けたりした事はない。
俺もある程度は容姿がいいからだとか
女子が秘密裏にやっている校内イケメンランキングの5位だと女子にも広い伝手がある浩二が言っていた。
髪は黒くミディアムのツーブロックで平凡といえば平凡。
身長も175で別に高くはない。
顔は母さんに似ているな‥いや、似過ぎている。2人で並んだら100人中100人から姉弟か親子と言われる。
そんな凡庸で部活にも入ってないから先輩や後輩にも面識がほとんど無い俺が、なぜランキングに入ったのかはよく分からない。
別に自己評価が低いわけではないが、可もなく不可もなくくらいに思っている。
結局マックで1時間ちょっと駄弁り、その帰りに平川が何かを見つけたのか指をさした。
「あれ、うちの学校の制服じゃん。何あれ!だっさ!」
顔を向けると同じクラスの相沢美麗(あいざわみれい)がいた。
確か‥クラス1のブスとか言われていたな。
今は名前順での席配置なので俺の前に座っているから背中はよく見ているが、しっかりと全体を見た事は無かった。
背は低く150センチくらいか?ボサボサの長い黒髪、黒縁眼鏡、眠たそうな垂れ目、低い鼻、そばかす。
そのあたりが要因でブスと言われてしまっているのかもしれない。
俺は相沢を見ても別にブスだとか思わないのだが
むしろ、人を卑下しないと自分を保てない方がよっぽどブスだと思う。
そうは言うが俺も、もちろん普通の美的感覚はある‥はず
例えば白百合は別に好きではないが美人とは思う。
そう、あるはずなんだ。
なのに‥‥
相沢は長い横断歩道で、小さい体で一生懸命にお婆さんに肩をかしていた。
真っ直ぐに左手を挙げながら、右手はお婆さんの腰にまわして手にはお婆さんの荷物だろうものを持っている。
きついのだろう、汗をたくさん額に浮かべて前髪を汗で顔に張り付けながらも笑顔でお婆さんと話をしている。
何故かその笑顔から
俺は目が離せなかった
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