第10話 あなたの胸で
「麻巳」
「お…母…さん…?」
それは突然に訪問してきた変わり果てた母親の姿。
~ 紫原 麻巳 side ~
大好きだったおばあちゃんと中学1年の時別れて義務教育だった中学の時は、両親とうまくいかない中、何とか中学を卒業した。
卒業してすぐに家を出たい一心で、とにかく一人暮らしの話をすぐに両親に持ち掛けた。
反対され喧嘩になる日々が続いた。
そして ―――
「あなたの我が儘は誰に似たのかしら?」
「死んだおばあちゃんにそっくりなんじゃないか?これを持って出て行きなさいっ!」
「その変わり、私達はあなたに今後一切何の援助もしないから!」
「それを覚悟の上で出て行くんだな!」
その日以来、連絡もしないまま今を至っていた。
それを急に母親が訪れたのは、一体どういう事なのだろうか?
「こっちに戻って来ない?」
「えっ?」
「お父さんが倒れちゃって…」
「………………」
「少しでも良いからお父さんとの思い出作ってあげてもらえないかしら?」
「思い出? 今更? そんな事出来るわけないでしょう? 第一、向こうが会いたいと思うわけないじゃん! 私は両親である二人に私の我が儘だって事で追い出され出て行った娘! 会う資格なんてないから!事実だし!」
「…麻巳…」
「第一、向こうは知ってる訳?」
母親は首を左右に振った。
「だったら尚更じゃん! バイトだってあるんだし、私、戻らないから!」
「麻巳…じゃあ、一目でも良いからお父さんに会ってあげて」
「…無理だよ…私…忙しいし! とにかく帰ってっ!帰ってよっ!」
私は追い出すように追い返した。
私はゆっくりと体を崩していく。
「…今更…急になんなの?」
~ 優崎 玲二 side ~
隣が騒々しく彼女の部屋に足を運ぶと、母親と思われる女の人と言い合いしている彼女の姿だった
母親を追い返すようにした後、崩れていく彼女の姿に俺は放っておけず、彼女に声をかけた。
「紫原さん?」
振り返る彼女は何処か切なく無理して我慢しているように見えた。
「…ごめん…騒々しかったよね…」
無理して優しく微笑む中、切ない表情を見せる姿が、あの頃を思い出させた。
グイッと彼女の手を掴み立たせると、俺は迷う事にき彼女わー抱きしめた。
すると彼女も俺を抱きしめ返した。
「紫原さん、今日バイトは?」
彼女は首を左右に振った。
「君の傍にいて良いかな?」
彼女はゆっくり頷くも、すぐに体を離した。
「紫原さん?」
「…ご…ごめん…大丈夫…。…好きな人…いるって…言ってたっけ? この間そういう話…聞こえてしまって…平気だから部屋に…」
グイッと俺は抱き寄せ、しっかりと、ぎゅうっと抱きしめた。
「好きな人はいないから安心して。彼女から離れて諦めさせる口実だから」
「…優崎…君…」
見つめ合う私達。
俺は抱きしめた体を離し彼女の両頬を優しく包み込むように両手で触れた。
「ずっと傍にいてあげるから…」
そう言うとおでこにキスをした。
彼女は俺に抱きついた。
「…傍に…いて……」
「分かった」
俺達は抱きしめ合った。
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