夕空に映る心
雑食紺太郎
第1話
空が朱に染まっている。
夕刻を映す日の光が1つの教室を差していた。
「あー、くそっ。」
少年が1人悪態をついていら様だ。
「また上手く描けねぇな。」
少年の名は秋暮夕というそうだ。
彼は芸術の界隈で天才と認知されているという。
だが、彼の現状を見るに天才らしからぬ悪態をついている。
「はぁ、しゃーない。気分転換でもするか。」
そう言うと、彼は窓を開けて大きく深呼吸をした。
「すぅー、はー。」
もう一度。
「すぅー、はー。」
もう一度。
「すぅー、はー。」
あれから何度かの深呼吸の後、暫く窓の外を眺めている様だ。
「綺麗だな。俺の心もお前くらい綺麗だったらなぁ。」
彼の顔は悲しいような、呆れた様な顔をしていた。
「やっぱ、寒くなって来てるな。そろそろ閉めるか。」
窓に手を伸ばした時、強めの風が吹いた。
「うおっ。」
彼は思わず片手で手を隠す様な動作をとった。
「ふぅ。びっくりしたわー……ん?」
彼の足元に何かが落ちていた。
「これは、紅葉か。」
赤と黄色と橙色の綺麗なグラデーションだった。
彼はあまりの魅力に目を奪われていた。
「っは。そうか、そうか、それでいいのか。」
彼の顔は先程とは打って変わって輝いていた。
天才と言われ、目に見えない力に押されていた様に彼は感じていた。それを遂に吹っ切った様だ。
彼は立てかけてある真っ白なキャンバスに向かった。
それから夕日が完全に落ちる手前まで、彼はキャンバスに向かっていた様だ。
彼が想いをぶつけたキャンバスには……
窓の外から見える秋の色が鮮やかさとともに輝きを放っていた。
彼の心も晴れやかになったことだろう。
夕空に映る心 雑食紺太郎 @zasshoku_konntarou
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