第470話 ビンとガラドン、はるばるパトロール
雨上がり、畑仕事をして一息ついていると、森の奥からガラドンがやって来た。
その上にビンが乗っている。
「ショートー!」
「おうビン。ガラドンと二人でどこ行ってたんだ」
「パトロール!」
「おお、パトロールかあ。……って、じゃあどうして森の奥から来たんだ?」
「めえめえ」
「ガラドンといっしょにね、ちょっとこのへんをぐるーっと」
そう言えばフックから、ビンが二、三日留守にしていると聞いたような……。
五歳児が外泊してもあまり心配されないというのは凄い。
まあこいつは地上最強の五歳児だからな。
とりあえず、お帰りということで飯などを出してもらった。
ガラドンも腹が減っていたらしく、もりもりと食べる。
「どこ行ってたんだ」
「うん、あのねー」
ビンが語りだした。
要約するとこうである。
黄金帝国方面の様子を見に行こうと思ったら、ガラドンも同行すると言い出した。
では一緒に行こうということで、ビンはガラドンの背中に乗ったらしい。
日にちも掛かりそうなので、フックとミーに許可をもらったとか。
「何かあったら村長に探してもらうからな」
とフックは言っていたが、規格外の我が子のことを、多分フックは信頼していただろう。
ミーは心配していたようだが……ギアがふがーとむずかりだしたので、そちらに掛かりきりになった。
こうしてビンは旅立ったのである。
「黄金帝国に行ったのか」
「いけなかった! あのねー、ずーっときたのほういってねえ」
北に行ったのかあ……。
北方には氷に包まれた国がある。
この季節はちょうど冬のはず。
昼間でも真っ暗だったりして、大変憂鬱な季節だ。
日照量が多いことを愛する俺はあまりよりつかなかったな。
魔王の手下を倒してすぐに退去した気がする。
「そこでねー、じめんのこおりがとけちゃっててたいへん!」
「異変が起こってたわけか」
「じめんのしたにおっきいかいじゅうがいてねえ」
「あっ、そんなものが封印されていたのか!」
凍りついた大地とは言えど、大半は地面がある。
だが、広大な北の大地には永久氷みたいな場所もあり、その上にも都市ができたりしていたのである。
どうやらその氷の下で眠りについていた巨大モンスターがいたらしい。
モンスターなのか、神々の一角なのかはわからんが。
で、ビンは人々の助けを求める声に応じて、ガラドンとともにその怪獣とやらに挑んだそうだ。
外見は……。
ビンが念動力で土を固めて作ってくれた。
ほうほう、牛のような角があり、ライオンみたいな前半身にタコの触手みたいな下半身か。
これ、古い神々の一つだろう。
思わぬところで神様が見つかったな!
ずっと封印されるかどうかしていて、魔王大戦によるダメージを免れていたのだろう。
そして復活した。
「勝った?」
「かった!」
ビンはアーキマンを身に纏い、全高50mの巨人になった。
ガラドンも巨大化して全長100mの姿になり、怪獣と戦ったそうだ。
ガラドン、いつのまにそんな技を覚えていたんだ。
「めぇめぇ」
俺だって常に進化してるんです、とでも言いたげなガラドン。
以前にアリたろうに敗れてから、力を磨いていたらしい。
山賊程度を粉砕できても、勇者村では全くドヤ顔できないもんな。
巨大化は実際に大きくなっているのではなく、ビン同様に実態のあるエネルギーを纏っているらしい。
うーむ、ワールディアに謎の変身巨大ヒーローが二人現れてしまったな……。
「ショートのことおしえてきたよー。こんどあいさつにくるって!」
「分かり合ってしまったか。ビンは優しさに溢れているなあ」
「めえめえ」
俺はやる気だったんですけど、ビンの兄貴の顔に免じてね!
みたいなガラドン。
ビンの弟分だもんな。
この話は勇者村四天王の間でも共有するらしい。
……というかトリマルが欠番になっているから、アリ太郎に話すだけだもんな。
そう言えば、トリマルが自分探しのために四天王を一時的に卒業したとして……新しい四天王を迎えねばな……。
「じゃ、ショート! ぼくあそんでくるね!」
食堂の椅子からぴょんと飛び降りたビンが勇者村ちびっこチームのところに走っていく。
うーん、エネルギッシュ。
「おーい、フックとミーにちゃんと帰ってきたって報告しておくんだぞー!」
「うんー!」
元気な返事が戻ってきた。
ガラドンもその場でコロコロしたうんこを出した後、とことこ去っていく。
自由だ。
さて……。
北の方から新しい神が挨拶に来ると。
それから俺の課題としては、新しい四天王を選抜しておかねばならないわけだな。
新しい四天王……。
「サイトとか」
「えっ、そんな面倒なもん嫌ですよ」
通りかかったサイトに嫌がられてしまった。
お前こう言うときだけタイミングがいいな。
「じゃあ暫定四天王はサルナス、お前だ。サイトがいるということはお前もいるだろ」
「あ、は、はい!」
あちこちから複数のサルナスが現れた。
それが集まってきて一人になる。
「なんなんです? その四天王って」
「形式的なもんだ。強いやつが四人いたら四天王だろ……」
「はぁ」
サルナスがきょとんとしているのだった。
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