あやかし奇譚
みなづき
天気坊
※この台本は声劇台本として書いたものです。ご利用の際はご一報いただけると作者が狂喜乱舞します。
登場人物
明日見 秋斗(29)♂
明日見写真館の店主。町をぶらぶらとしては写真を撮って帰ってくる。のんびりと過ごすのが好きで、いつもにこにこ笑いながら妖怪の話を聞いている。
明日見 奈々(28)♀
冬馬の妻。大人しく控えめだがしっかり者。誰に対しても敬語で喋ってしまう。芯がしっかり通ったしっかり者。変わり者の夫を陰ながら支えている。
秋斗をシュウさんと呼ぶ。
天気坊
天気を司る妖怪。子供のような容姿をしているが、少し変わった話し方をする。
名前のない()内は描写なので読まなくて大丈夫です!
それではどうぞ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
奈々(ちょっとだけ、私の話を聞いてくれませんか?楽しくて優しくて、少しだけ怖い、私と、旦那さんと、妖怪さんの話です。お話にする前に、この話の感想を聞きたいのです。)
(写真館内)
奈々「シュウさん。今日も雨がふってますよ。傘は持ちましたか?」
秋斗「ああ、持ったよ。しかし…こんなにも雨が続いて、2週間連続で雨なんか降るもんかねえ…。」
奈々「シュウさん。忘れ物は無いですか?体を拭くためのタオルは持ちましたか?シャツの替えは?」
秋斗「持ってるよ。さすがにそこまで忘れないってば。」
奈々「それでもです!シュウさん、この間濡れたままのジャケットで帰ってきて風邪をひいたじゃないですか!」
秋斗「うう……気をつけるよ…。い、行ってきます!」」
奈々「行ってらっしゃい!全く、シュウさんにも困ったものです………あ、傘を忘れてますね…。」
(場面は変わり、町内の商店街に入る。)
秋斗「……あ、降ってきた。」
(ポツポツと雨が降り、次第に強くなっていく。)
秋斗「……おいおい。こんなに強くなるなんて聞いてないよ。…まあ、こんな風景を写真に収めるのもいいか……ん?」
天気坊「どうしよう…。どうしよう…。みんな困っちゃうよ…。」
秋斗「…こんにちは。君も、雨宿り?」
天気坊「っ…!?お兄さん、オイラが見えるの?お兄さんも妖怪……?」
秋斗「ああ、見えるよ。生まれつき妖怪が見えるだけの人間だけどね。」
天気坊「そっか…オイラのせいで困ってるよね…すぐにどうにかするから…!待ってね、まってね!」
秋斗「君のせい…?一体なんのこと?君に…妖怪としての君に関係があることなのかな?」
天気坊「うん…オイラ天気坊って言うんだ。この提灯を使って天気を操作するんだけど、提灯が破れちゃって、直せないんだ…。そのせいで雨ばっかりになっちゃって…。」
秋斗「そういう事だったのか。妙に雨ばっかり続くと思ったんだよねえ…。」
天気坊「ごめんなさい…。」
秋斗「あ、違う。ごめんね。君を攻めた訳じゃないんだ。……そうだねえ…1度、僕の家においでよ。僕は不器用だけど、僕の奥さんなら直せるかもしれない。」
天気坊「お兄さんの家…?いいの?」
秋斗「ああ、彼女も妖怪は見慣れててね。君みたいな子だったら尚更歓迎すると思うな。」
天気坊「本当はオイラが直さなきゃ行けないんだけど…。このままじゃみんな困るから、お願いします!」
秋斗「うん。それじゃあ…とりあえず、走って帰ろうか。」
(店の中にびしょびしょの秋斗と天気坊がかけこんでくる。)
奈々「シュウさん!こんなに酷い雨なのに傘を置いていったで………あれ、その子は…。」
秋斗「天気坊。妖怪の1種だね。困ってるみたいなんだ。奈々、器用だろう?」
天気坊「えっと、お兄さんに提灯が治して貰えるって聞いて…それで…。」
奈々「…ハンドメイドとかならできますけど…。んー…少し、やってみます。」
天気坊「本当に!?」
奈々「ええ、頑張って見ます。そして、シュウさんは早くお風呂!天気坊くんは…必要なさそうですね。」
天気坊「オイラは妖怪だからね!」
(秋斗 風呂へ向かうためフェードアウト)
奈々「…これは少し、難しそうですねえ…。」
天気坊「やっぱり難しいかなあ…。」
奈々「直せないとは言ってませんよ。」
(優しく天気坊の頭を撫でる。)
天気坊「本当!?」
奈々「はい。でも、確かに道具がない時にこれを直すのは難しいでしょうね…。」
天気坊「…そうなのかあ…。」
奈々「はい。そうなんです。」
天気坊「お姉さんたちは、どうしてオイラが見えるの?人間なんだよね?」
奈々「……そうですね。強いて言うなら、写真のおかげかもしれないですね。」
天気坊「しゃしん……って、その機械で撮れるやつだよね?」
奈々「はい。その写真です。シュウさんが前、妖怪が写った写真を撮ってきたんです。」
天気坊「オイラたち、こういうのに映らないって聞いてたんだけどなあ…。」
奈々「そう、だから私たちもびっくりしたんですよ。なんせ、舌をベロって出した妖怪が写真に写ってるんですからね。」
天気坊「……そうだよなあ…オイラたち、やっぱり人間から見ると怖いのかあ…。」
奈々「でも、シュウさんは興味津々だったんです。なんだこいつ!会ってみたい!なんて言って探しに行く始末で。それから、妖怪が見えるようになったんですよね。」
天気坊「ふーん…。でも、オイラとしては良かったよ。会えなきゃ一生この提灯、治らなかったからねえ。」
奈々「それなら良かったです。たまーに……危ない目にも会うんですけどね…。」
天気坊「それって…」
秋斗「上がったよ〜。……お、提灯、だいぶ治ったんだねえ。」
奈々「そうですね。明日には多分…って。シュウさん!頭もちゃんと拭いてください!せっかくお風呂に入ったのに、風邪を引いちゃ本末転倒じゃないですか!」
秋斗「ご、ごめんごめん…。ちゃんと拭くからさあ…。」
天気坊「提灯が直ったら直ぐに、晴れにするな!2人に風邪をひかせたくないからな!」
奈々「ふふ……ありがとうございます。……ここを縫って……はい。天気坊君。直りましたよ。」
天気坊「本当!?へへ…ありがとう。」
秋斗「良かったねえ。これでやっと雨も終わる。」
天気坊「待ってろ!すぐに晴れさせるからね!」
(天気坊が提灯を逆さに持ち、ゆっくりと降り出すと雨が弱まり、雲が切れ、ゆっくりと太陽がかおをだし、見事な天気雨になる。)
奈々「綺麗…。」
天気坊「あ、あれっ?しっかり晴天にしようと思ったんだけど…ごめんな?やっぱり1回帰って、提灯をしっかり直した方がいいみたいだ……。」
秋斗「……ううん。雨に光が透き通って。キラキラしてすごく綺麗だよ。」
奈々「それに、見てください。虹がかかりましたよ。ふふ……久しぶりの晴れ間がこんなに綺麗なのは素敵ですね。」
天気坊「そうなのか…?でも、提灯をしっかり治したら、もっと綺麗なものを見せるからな!やくそくするからな!」
秋斗「期待して、待っているよ。」
天気坊「うん!だから、何でもない日も、また来ていいか…?」
奈々「天気坊君は悪いことをしませんし、シュウさんも私も歓迎しますよ。ねっ?シュウさん?」
秋斗「うん。もちろんだよ。だから気軽に遊びにおいで。……そうだ。その証に写真を撮ってあげようか。」
天気坊「しゃしん……ってあれだろ?オイラが映るのか?」
秋斗「大丈夫。だって、僕と奈々には君が見えているんだから!」
奈々「シュウさんと私が見えている妖怪は、みんな写真に写りましたよ?」
天気坊「……それなら、撮ってもらうぞ!」
秋斗「決まりだね。」
(雨上がり、虹が映る写真館前。)
秋斗「さあ、撮るよー!2人とも、もっとよってよって。」
天気坊「なんか、緊張するな…。」
奈々「ただ、1枚取るだけだから大丈夫ですよ。」
秋斗「タイマーをセットして……っと。」
奈々「撮れたみたいですね。」
天気坊「えっと、オイラは……」
奈々(そこには、満面の笑みを浮かべる天気坊くんと、穏やかに笑うシュウさん、そして私が写っていました。)
天気坊「オイラが写ってる!」
奈々「本当ですね!やっぱり、シュウさんのカメラだけ、特別性なんでしょうか?」
秋斗「分からないけどつまり、これでいつでも写真を取りに来てもらえるって訳だね。」
天気坊「また来るからな!今度来る時はオイラ、もっと綺麗なものを見せるからな!」
奈々(これが、短いけど私とシュウさんのお話の一幕。他にもたくさんの妖怪さんとあったんだけど、それはまた別のお話。)
あやかし奇譚 みなづき @Narumaronruna
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。あやかし奇譚の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます