第2話:出会い? 再会?


マスターと猫太郎に続き、残り2人も契約が完了した。


『 さて、契約が完了したマスターの方には、一度お戻り頂きます 』


「 戻るって言われても・・・・・・ 」


猫太郎のマスターがつぶやいてる、知らないよな戻り方なんて。 

俺も知らん。


『 戻り方は簡単です。 《 ゲート 》と唱えてから、寝て頂くだけです 』


「 案外簡単なのね 」 モモのマスターだ。


『 お戻りになられましたら、もう一度 《 ゲート 》と唱えて寝て頂きたいのです。 さすれば、この場にお戻り頂けます 』


『 こちらとあちらでは、時間の流れが異なっております。 あちらの1時間が、こちらでは6分から12分と言われております。 中には1分程の方もいらっしゃいますが、個人差が在りますので 』



「 5倍から10倍か 」

「 浦島太郎には、ならないんだな 」


3人以外のマスターは、冷静に計算してるな。



「 ちょっと待って! でも、こっちで1年過ごしたら、その分年を取るじゃない! 」


どこにいても歳はとるけどな。

1年を365日として、5倍で73日、10倍で36.5日なのだが。


おばさんは、こちらで過ごす時間の分が気になるのか。

10倍のスピードで年を取るんだから。



『 ご心配には及びません。 ゲート効果によって、マスターの肉体年齢は固定されます。 ですから、100年こちらで過ごされましても、あちらの世界のお姿はそのままです 』


「「「 そんなに生きられるか!!! 」」」


マスター達のツッコミは正しく行われた。


_________________________



マスター3人は、ゲートキーパーが用意した薬で眠りについた。


ゲートキーパーが、『 安らかな眠りにつける薬草です 』 って紹介したんで、マスター全員から総ツッコミされた。

永眠する訳じゃ無いんだから、言い方が悪いと。

ションボリしたオオカミは、ちょっと微笑ほほえましい。


マスターが眠りにつくと、空中に現れた平面な光のリングに光りの粒子となって吸い込まれて行く。

ゲートキーパと3人の獣人が残されたが、その場から動こうとしない。


しばらく待つと空中に光のリングが現れ、光りの粒が出てきて寝ている人の姿になった。

最初の1人に続き、10分ほどで残りの2人も戻ってきた。



「「「 こうなるのか(ね) 」」」


戻った3人は、残りのマスターに呼びつけられて質問攻めに。 

突然の出来事で興奮してなかなか眠れなかった人は、深夜営業の薬屋に市販薬を買いに行ったとか。



『 さて、この様に何時でもお戻り頂けます。 ですからご心配なく 』


「 戻れるなら問題無いな。 で、何をすればいいんだ? 」


『 それもご心配なく。 魔王を倒して欲しいとか、世界を救って欲しいとかでは御座いません 』


「 じゃあ、何すればいいの? 」



『 マスターとのエージェント契約は、獣人だけの特権で神からの祝福と言われております。 こちらで何をなさるかは、エージェントと話し合って決めて頂いて結構です 』


「「「 ・・・・・・ 」」」


『 1番人気はお店で働く。 2番人気は工房で働くです。 人族であるマスターは、獣人と違って器用な方が多いので。  ごくまれに、冒険者になる方もいらっしゃいますが・・・・・・ 』


「「「 冒険者!!! 」」」



『 ただ・・・・・・、ゲートを通るには、信頼度の累積・・が必要なのです。 ですから、比較的高齢のマスターが多いので・・・・・・ 』


全員が同時に周りを見て、目が合うと何となく気まずい雰囲気になる。

確かに10代は居ない、ざっと平均すると30台か。

体力的には厳しいのかも。



『 その辺は、エージェントと話し合いをお願いするとして・・・・・・ 』


オオカミが合図をすると、獣人達は立ち上がり俯いたまま退出していく。


「「「 ??? 」」」


『 これから皆様を個室にご案内致します。 そちらで、エージェントと顔合わせとなります。 これには、少々事情が御座いますので、了承を頂きたいと存じます 』


深々と頭を下げる、オオカミゲートキーパー。



_________________________



俺は神官っぽい服のイヌ獣人に案内され、扉が並ぶ廊下を裸足で歩いている。

寝た時の服装でこっちに来てるから、裸足だ。

裸足で歩いてもケガをしない用に、キッチリ掃除してるから大丈夫だって言ってた。

それでも、大理石?の上を裸足で歩くのは落ち着かない。


一緒に歩いてるのはラブラドールの獣人。 結構背が高い、俺よりは低いけど。


「 ここは、ダナン王国のゲート神殿になります。 これからご案内するお部屋は、しばらくの間自由にお使い頂いて結構です。 お食事も3食ご用意出来ます 」


「 かなり良い待遇ですが、大丈夫なんですか? 」


夢の中で費用を気にするってどうなんだ、とは思うが。


「 はい。 ゲート神殿は王国が費用を拠出しており、国民からの寄付もあり、資金は必要以上に御座います。 ですから費用はご心配なく。 もちろん、対価などは要求致しませんのでご安心下さい 」


「 なるほど 」


ラブがほほえむとこうなるのか。

横から見ると、歯が剥き出しになってちょっと怖い。


「 ほとんどの方が、エージェントと新しい生活をするって、1ヶ月ほどで出て行かれてしまうんです。 もっと、ユックリして頂いて良いんですけど 」


「 なるほど? 」


「 ゲートが開くのは不定期なんです。 それまでは意外に暇なんですよ。 ですから、気になさらずにユックリして下さいね 」


「 なるほど 」 暇なんだね、それでだ。


「 手を下げても良いですかね。 しんどくて 」


「 結構ですよ。 すみませんが、手の平だけは前に向けていて下さいね 」


神官っぽいラブ獣人は、付き添っているだけで案内しているんでは無い。

俺の手の平からは細い光が出ており、その光の行方を観察しているだけだ。

原理が判ってるから、1人でも部屋に行けそうなんだが。

他人の家だしな、神殿だけど。


幾つかの扉を過ぎ、少しずつ光りが斜めになってきた。 目的地は近そうだ。


「 こちらになりますね 」


ラブ神官が扉を示すんで、自分でドアノブを回して扉を開けて室内に入る。

開けてはくれないんだな。


「 ご主人様だ~~~ 」


声と一緒に白い固まりが、飛びかかってきた。


「 うをっ! 」



「 ご主人様~~~ 」


彼にしがみ付きフンフンしてる犬獣人。

タレ耳で、全身白のマルダックスの犬獣人。


「 チルか! 」


理由は判らないが判る、間違い無くチルだ。


「 はい! お待ちしてました~~~ 」


2人ずつ案内されているので、それなりに時間は掛かっている。

それでも、30分も待っては居ないはず。

大歓迎される理由がわからない。


でも、コンビニから帰って来ただけで、思いっきり歓迎してくれてたか。



「 それでは、お話を始めましょうか 」


ラブ神官は、あくまでも冷静だった。 




室内に入ってすぐ、椅子が2つと大き目の長椅子が1つの応接セットが目に入る。

俺とチルは長椅子に案内される。


「 それでは、何かご質問はありますか? 」  クンクン


「 まず最初に。 ここは何処ですか? あと、こっちのチルとあっちのチル、関連性は在るんですか? 」 グリグリ


「 残念ですが誰にも判りません。 こちらの世界は、あちらの存在が 【 もし獣人だったら 】が実現した世界、パラレルワールドじゃないかと、あるマスターが仰っていましたが 」  スリスリ


「 では、どこか判らない世界で、あっちとは関係無いと? 」 クンクン


「 申し訳御座いません。 神のなされた事ですので、判りかねます 」 ふんふん


「 神のみぞ知る、ですか 」 クンクン


「 はい。 どちらの存在も、マスターと過ごす事は決定事項、運命と言っても良いでしょう。 それだけは、決まっているみたいです 」 クンクン




「 エージェント契約のデメリットは? 」  クンクン


俺は慎重派だ。


「 特にこれと言って・・・・・・、強いて上げますと。 エージェントの結婚相手を探す事、でしょうか 」  フンフン


「 結婚相手ですか。 本人が、自由に選ぶんじゃ無いんですね 」  クンクン


気に掛けておくとしようと、忘れなければだが。



_________________________




「 そろそろ、落ち着きましょうか!! 」


ラブ神官のチョップがチルの額に入る。 しかも水平だ。


「 痛いです~。 マスターの確認してたのに~ 」


「 落ち着きなさい。 そんな事では、何時まで経ってもエージェント契約を結べませんよ! 」


ハッとするチル。 慌てて座りなおす。



「 チルさんも、準備は良いですね? 」


「 はい! ご主人様契約、お願いします! 」


「 ・・・・・・エージェント契約ですよ? 」


「 はい! ご主人様契約ですね! 」


チルは、こんなにアホだったっけ? ちょっと不安になったのは内緒だ。

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