第八十七話『モノクローム、ムービー、タイム』
事件はいつも、突然に起きる。
そもそも予測できる事件なんてものは、その事件が起きないように予防されてしまう。まあ、予想できたとしても、どうしようも無いものはあるけれど。
どうにか出来るのに、あぐらをかいて何も行動に移さないというのは、それそのものが事故みたいなものだ。
まあそれでも、大抵の事件は突然に起きる。誰も、予測しないような形で。
そして事件が起きると、人々は不安になる。一刻も早く解決して欲しいと、そう祈る。
そんなニーズにお応えするのが、いわゆる。
名探偵、というやつである。
〇
いつもと変わらない日だった、その日もカラスは適当に自由気ままに発明品を作っていた。
ちょうど机の上のレンチを、取ろうと手を伸ばしたその時。
「ん?」
目に映る世界に、違和感を感じた。
何かが、足りない。けど、それが何なのかが分からない。
「あ、なるほど」
まあいいかと赤いペンチを手に取って、ようやくカラスは違和感の正体に気がついた。
「いいね、これ、僕だけじゃないのかな」
赤いペンチが灰色に映った、ペンチだけじゃない。およそ目に入るもの全てが、白と黒だけで彩られている。
大昔の、古いビデオに映るような。白黒の世界、灰色の視界。
「確かめに行かないと、そうだ、もし僕だけじゃないんなら」
ペンチを置いてあった机の引き出しから、パイプ煙草と、虫眼鏡を取り出す。
そして資料の山をなぎ倒して、赤レンガの壁に掛けられたインバネスコートと探偵帽を手に取りホコリを払った。
「これの、出番だね」
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