〜姉妹の愛優譚〜

第八十四話『またお会いしましたね』

 この世界には不思議なことが沢山ある。

 動いて喋るぬいぐるみだとか、天下無双の猫だとか、獣人だとか。


 まあ、とにかく様々ある。

 一括りに不思議と言っても、楽しい不思議や悲しい不思議、暗い不思議や明るい不思議、苦しい不思議、小さな不思議、大きな不思議。

 まあ、様々あるわけだ。


 そして、何においても危険というものは存在していて。危険な不思議というのも、当たり前のごとく存在している。

 そして、それらを処理、無力化するのが僕達の仕事である。


 あ、そっちの子は気にしないで。僕の連れなんです、大人しくする約束なんで。大丈夫ですよ。

 なあに、殺されたりしませんよ。あなた心配性ですね。




      〇




 ここ最近の話をすると、そうだな。仕事がめっきり減ったとかかな。

 本格的な冬になってから、仕事が入らなくなってしまった。金銭面はギルドで冒険者として適当にお金を稼げば良いのだけれど、やはり本業の方が儲かる。


 けれど悪いことばかりじゃなかったりもする。近々そこの子、そう、モルって名前なんですけど。

 その子と空白地帯を横断して、旅行にでも行こうかと検討中です。

 空白地帯について、ですか。


 ……世界の崩壊後、従来の地図は全くをもって機能しなくなったわけですが。また新しく地図を作ろうと躍起になって活動する方々が現れるわけですが、危険だったり、広すぎたりして現代の地図を見ると所々に白い穴が空いてるんですよ。

 その何も書いていない穴の部分を、空白地帯と、呼んでいるわけです。


 教団の奴らも変わった動きは見せていないみたいですし、まだ当分仕事は来ないだろうと見込んでの計画なのだけれど。

 本当に行くかはまだ決まっていない。




      〇




 あぁ、それと。

 一般の闇市で例の薬が流通しているのを取り押さえたらしいですけれど、なかなか不穏な話ですよね。

 一般の闇市という言葉もなかなか変ですけど。

 あんな物が世間に出回ったら、今度こそ本当に人類は滅びるかもしれませんね。

 というか、おっと気がついたらもうこんな時間ですね。この街、遅くになるとどこの店も閉まって真っ暗になるんですよね。そろそろ帰らないと。


 あ、そうですよ、この腕時計、知り合いから貰いまして。なかなか気に入ってます。


「ねー、志東さん、ぼーっとしてないで早く帰ろーよー、お腹いっぱいだし」

「そうですね、久々の外食楽しめましたか」

「うん!」


 それでは、僕達は帰りますので。

 また機会があれば、また会いましょう。

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