第四十七話『悪夢』

 どうやら、僕は夢を見ているらしかった。

 それが夢であることは、ちゃんと分かっていた。

 吹雪いている。

 けど、不思議なことに寒くはなかった。


 僕は俯いて座り込んでいる。

 顔を上げるとカラスが居た。


『不可色……』

『……』


 その名前で、カラスが呼ぶとは珍しい。

 いや、そうか。これは夢だった。

 でも、一応否定しようとしたが。

 口が開けない。自分の身体を自分で動かせない。


『不可色が、何をどれだけ無くしても、捨てても、僕はずっと不可色のそばに居るからさ』

『……』


 あぁ。

 そうか。

 夢っていうのは、記憶だったんだっけな。


『だからさ、また一から探せばいいよ、集めればいいよ、ううん、僕が居るから百からだね、ぬるま湯でしょ』

『……』


 何か。

 言えよ、僕。


『約束するよ、必ず、僕の最後まで不可色のそばに居るから』

『……』


 そんな約束はしない方がいい。

 させない方がいい。

 そういった約束は、必ず、報いを受ける。

 選択を間違わせる。


 最後まで、付き合わせるのか。

 お前が、一番知ってるだろ。


 けど、僕の身体は今、僕のものじゃない。

 カラスに手を伸ばして、小指を交わして。

 過去は変えられない。

 そもそもこれは夢だ、関係ない。

 夢だ。

 






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