第12話…聖女様がやって来た②

 そんな訳で、他力本願寺な私はこれで世界樹も大丈夫なのねー、と暢気に構えていたのだが、半年経っても一年経っても一向に聖女様達が旅立つ様子が無い。


 メイドさん達から聞いた話だと、聖女様は魔法の無い世界からやって来たので、魔法の使い方が良くわからないとかで、王立学園に一時的に入学し、この世界の簡単な常識と歴史、それに魔法を学んでいたのだが。……いや、いた筈なのだが。


 農婦の私とはまるで接点が無い為、噂でしかわからないのだが、せっかく学園に通っているのに真面目に学ぼうとせず、イケメンの高位貴族ばかり追いかけ回しているらしい。なんでも世話役を仰せつかった侍女さんが溢していたらしいが、一人になると『すてーたすが…』『いべんとが…』『すちるが…』『好感度が…』と意味のわからないことをブツブツ呟いているので怖いそうだ。


 ……ああ!なる程!!


 ここまで聞いて、やっと思い出した。私が大学時代にやらされた乙女ゲームにそっくりだという事を。


 確かタイトルは『世界樹の下であなたに愛を』だったかな?めっちゃうろ覚えだけど。内容は二部構成で、一部は学園での育成パート。二部が世界樹の元へ向かう遠征パート。


 一部では、突然異世界にトリップした主人公が世界樹を救う聖女となり、学園生活を送りながら自分のステータスを上げつつ、攻略対象の好感度も上げ、その結果によって二部での旅の難易度が変わる、という仕組みだった筈だ。一部で対象の攻略に失敗すると旅に付いてきてくれなくなるので、バトルの難易度が下がる様になっていて、よっぽど酷いプレイをしなければゲームオーバーにはならない設定だった。うむ、システムに関しては一応覚えてる。


 正直忘れちゃったのは攻略対象だ。そうかー。あの二次元キャラ達が三次元になってるのね。めっちゃ興味無いわ、って感じ。あ、多少は覚えてるわよ?えと、確か俺様と眼鏡と脳筋とチャラ男とネクラだったかな?……いやぁ、テンプレ感丸出しって感じだよね。まあ、ゲーム自体年齢層低めが対象だったので、王道を狙ったんだろうけど。


 ただ、ここまで思い出したところであれ?となった。確か一部の育成パートは半年だった筈だ。聖女様がやってきてから既に一年。……一体いつ旅に出るんだろ?


 どうやら、聖女様はイケメン追いかけるのに夢中で、世界樹の事なんてどうでも良いらしい。もしかしたら私の前世とは違う世界からの転移で、あのゲームの内容も私が知ってるのと違うのかなあ。一部だけで二部がまるっと無くて、『世界樹を愛の力で救った二人は幸せに暮らしました』の一言だけで終わっちゃうとか?


 それとも、『私はヒロインだからこの世界の全ては私の為にあるのよ!!』って、勝手に改編しちゃってる?


うーん……

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