サメ少女とオレの平凡な恋
おもちさん
プロローグ
自由さ溢れる校風。生徒の自主性を育み、主体的な思考が見に着く環境。ありきたりで何も響かないフレーズだと、眼の前の文章を追いかけながら強く感じた。
晩飯の用意が出来たと母さんの呼ぶ声がする。惜しくもないカタログは放り投げて、すぐに下へと降りていった。
「コータロー。あんたねぇ、ごはんの時くらいスマホをピッピピッピいじるの止めなさい。何回言わせんのよ」
「いじってねぇし。音楽聴いてるだけだし」
「言い訳すんじゃないよホラ」
仕方なくイヤホンを取った。テーブルに所狭しと並ぶ皿の傍に、ワイヤレス式のイヤホンを添えてみると、なんだか箸置きっぽく見えて面白い。
「親父は今日も遅いんだな」
正面の茶碗が居心地悪そうにひっくり返っている。
「残業よ。今は繁忙期だからね」
「本当かよ。実はキャバクラとか行ってんじゃねぇの?」
「そんな訳ないでしょ。あの人は病的な人見知りなんだから」
軽口を挟む間、山盛りご飯が手渡された。そして2人揃って唱和。いただきます。
「ところで、明日から初登校でしょ。道順は大丈夫なの?」
「平気だよ。スマホで調べられるから」
「出たよスマホ。たまには自分の頭も使いなさい」
「皆やってる事じゃん」
「ついでに言うけど、もう少し鍛えなさいよ。スマホだパソコンだ、ちがう事を始めだと思ったら楽器なんか弾いちゃって。そんなんじゃ女の子にモテないよ」
結局はそこに繋がる。こんな会話は珍しい事じゃなく、割といつもの光景だった。母さんはアウトドアにハマッて欲しいようで、その思惑がいつも透けて見えた。
「別に興味ねぇし。おかわり」
「自分でやんなさい。赤ちゃんかよ」
そんな風にしてメシを食い終えるなり、部屋に戻った。ギターをアンプに繋いで、ヘッドフォンを装着、パソコンで曲を流しながら演奏を始めた。この時間は割と楽しい。人生のつまらなさが薄まるような気がして。
「……イテッ!?」
突然、端の弦が切れた。替えようにもストックは無い。
こうなってしまうと、大体がどうでも良くなり、楽器をかたして寝転がった。プレイリストの曲をランダム再生しながら天井を眺めてみる。
明日は登校日。そう考えてみても、やっぱり胸に巡るものは少なかった。
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