私の居場所 234

 高浜さんが宣言しました。

「OK! じゃ、15の夜から!」

 日向隊員はピアノのキーを見つめ、

「まさかここでこの曲を弾くことになるなんて・・・」

 日向隊員がピアノのキーにタッチ。イントロが始まりました。マイクを握ってる寒川隊員は思います。

「まさか折り紙コンサートホールでまた尾崎豊の曲を歌えるなんて。しかも大ホール・・・」

 寒川隊員は横目で背後の日向隊員を見ました。

「ふ、あいつにギターを教えておいて正解だった、かな?」

 寒川隊員の熱唱が始まりました。するとその脳裏に2人組が現れました。1人はギターを弾く寒川隊員自身。もう1人は熱唱する黒部すみれ。そう、バイオレット&ユタカです。

「あいつ、今どこで何やってんのかなあ?・・・」

 総立ちの観客の中にサングラスをかけた女がいます。これは・・・ 黒部すみれです。黒部すみれもこのコンサートに来てたのです。黒部すみれはふっと笑うと、

「寒川さん、あなたはテレストリアルガードのユニホームを着てるより、こうやってステージの上で尾崎豊の曲を歌ってる方がずーっと似合ってるって・・・」

 15の夜が終わりました。間髪インターバル入れず次の曲へ。僕が僕であるために。寒川隊員は再び熱唱します。日向隊員はそんな寒川隊員の背中を見て、つぶやきます。

「あは、寒川さん、熱中してるなあ・・・ やっぱいいなあ、この曲・・・

 そうだ、新生真夜中のノックのデビューアルバムに収録する私の曲は、この曲にしよう!

 別に私が作った曲でなくてもいいんだ。私が作った曲なら、あとでいくらでも収録することができる。自分が作った曲にこだわる必要はないんだ!」

 寒川隊員が歌い終わりました。観客は少ないながらも割れんばかりの拍手。寒川隊員は照れ笑い。

 舞台の袖から高浜さんが出てきました。そして寒川隊員に、

「いい熱唱でしたよ!」

 寒川隊員は応えます。

「ありがとうございます!」

 この後もコンサートはつつがなく進み、無事終了しました。

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女神 のどか @nodoka134boy

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