私の居場所 195
今度は日向隊員が応えます。
「明石さん、あいみょんのマリーゴールドをカバーするんでしょ? ちょっとサビの部分を歌ってみよっか?」
日向隊員はピアノ弾き語りでひまわりのサビの部分を歌い出しました。すぐに歌とピアノを止めると、明石悠に、
「今の部分もカノンコードなんだよ」
「ええ~!?」
「ま、分数コードなんか入ってるから、完全なカノンコードじゃないんだけど・・・」
「え、分数コード?」
日向隊員はこの瞬間しまったと思いました。分数コードなんて専門用語、音楽やったことがない明石悠がわかるはずがありません。
「あは、余計なこと言っちゃったかな? 今のは聞かなかったことにして。
他にもこんな曲がカノンコードを使ってるんだ」
と言うと、日向隊員は再びピアノのキーにタッチ、次の曲の演奏に入りました。いくつかの曲のサビ、または歌い出し部分のメドレーです。全部明石悠でも知ってる有名な曲ばかり。
「へ~ これもすべてカノンコードなんだ・・・」
真土灯里。
「聴いての通り、カノンコードていろんなところで使われてるんだ。私の父も使ったことがあるんだよ」
日向隊員は最後にパッヘルベルのカノンをサビの部分から弾きました。
「この曲を弾いてるといいメロディが思い浮かぶと思ったんだけどねぇ、あは、そう簡単にはいかないかな?・・・
でもね、詞はもっと難しいんだ。最近は歌う人が作詞も作曲もするけど、実際のところ作詞と作曲は違う才能なんだ。私は5歳の時からピアノを習ってたから作曲には自信があるんだけど、作詞はぜんぜんだめかも? 国語の才能
日向隊員は真土灯里を見て、
「真土さんのお父さんて、ほんとすごい人だったんだね。作詞もするし、作曲もするし、ギターも一流だし」
真土灯里は顔を赤らめ、
「あは、そんなことないよ!」
そして思いました。
「日向さんの音楽知識もすごいよ! なんで昨日私、へそ曲げちゃったんだろ?」
へそを曲げた・・・ 一昨日日向隊員は真土灯里が歌ったI'm proud of youに注文をつけました。しかしです、I'm proud of youは真土灯里の父真土勝之が作った曲でした。
真土勝之は作曲家としては超一流です。知らなかったとはいえ、そんな人の曲の構成に口を出してしまったのです。実の娘である真土灯里が怒ってしまうのも当然。
けど、昨日判明しました。真土勝之が高浜さんに最初に披露したときのI'm proud of youには、日向隊員が修正した通り、冒頭にバラード調のパートがあったのです。日向隊員の注文は正解だったのです。
と、真土灯里の眼がふとメトロノームを捉えました。するとその脳裏にあるひらめきが。
「あは、私もカノン弾きたくなっちゃった」
と言うと、メトロノームを手にしました。
「ほんとうはシーケンサーを使いたいんだけど、今はこれでいいや。
カノンは4/4(4分の4拍子)。BPMは200にしてと・・・」
それを聞いて日向隊員はびっくり。
「え、200て、何その速さ?」
チッ・チッ・チッ・チン、チッ・チッ・チッ・チン・・・ メトロノームはかなり速いテンポを刻み始めました。それを聞いて明石悠は、疑問に思ったことをそのまま口にしました。
「BPM200てそんなに速いの?」
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