私の居場所 189

 高浜さんの質問。

「大ホールの使用料て高いんじゃないのか? どっから出す気なんだ、金は?」

 真土灯里が応えます。

「なんか、日向さんが全部出してくれるそうなんですよ」

「ええ~?・・・」

 高浜さんは呆気にとられ、再び日向隊員に質問。

「そんなにたくさんお金を出すことができるのか? 君はいったい何者なんだ? ほんとうにJCなのか?」

 日向隊員は赤くなり、

「あは、まあいろいろと金が余ってるもので・・・」

「そんなことはないだろ? う~ん、じゃ、こうしよう! お金はうちの事務所が出す!」

 日向隊員は笑顔半分、苦笑半分で、

「ええ!?・・・」

「ただし、いくつか条件を出すぞ。一般の観客も入れよう! 君たちが招待する中学生はただでいいが、一般客からは金を取る!

 いくらなんでも君たちが招待する中学生だけじゃ、あの大ホールは満席フルハウスにはならないんじゃないか? 少しでもお金を回収した方がいいだろう!?」

 それにもう1つ。このコンサート、真夜中のノック6人全員でってみらどうだ!? 真夜中のノック、再スタートのコンサートにするんだよ!」

 この発言には、日向隊員ばかりか、真土灯里、明石悠はびっくり。

「ええ~!?・・・」

 高浜さんは千石さん、代官さん、久領さんを見て、

「どうだ、みんな?」

 3人はそれぞれ苦笑・失笑して応えます。

「ふふ、いいんじゃないか?」「反対する理由はないよ」「ふ、高浜らしい発想だな!?」

 こうして真夜中のノックの再スタートコンサートが決まりました。

 その後、6人全員でI'm proud of youを演奏。千石さんの指導でI'm proud of youはあっという間にバンド向けに編曲されました。日向隊員は、

「あは、さすが幼い時から音楽を習ってた人だ。私だって5歳のときからピアノ習ってたんだ。これくらいやらないと!・・・」

 と思いました。

 千石さん。

「さーて、今度はひまわりをろうか?」

 高浜さん。

「いや、今日はこれで終わりにしよう」

 高浜さんは日向隊員、真土灯里、明石悠を見て、

「昔のオレたちだったら徹夜してまでひまわりを作り直すところだが、今うちには中学生がいるんだ。今日はここまででいいだろう」

 3人は苦笑い。

「あは・・・」


 それから十数分後、夜の道を1台のセダンが走ってます。

 その車内、運転してるのは隊長。助手席には明石悠、後部座席には日向隊員と真土灯里がいます。昨夜来たときとは違う席順。これがいつもの席順です。

 3人の少女は談笑してます。一度壊れてしまった3人の関係は、もう完全に修復されたようです。


 いつもの住宅街に隊長のセダンがやってきました。セダンは真土邸の前で停止。真土灯里が降車。そのまま自分の家の門に向かって駆けますが、門扉を開けたところで振り返り、

「じゃ、また明日!」

 そのまま玄関の扉を開け、中に消えました。隊長はそれを確認すると、セダンのアクセルを踏みました。

 と、後部座席の日向隊員は、道端に立つ2人の警官、正確には公安7課が用意したニセ警官にふと気づきました。

「ふふ、今日も守ってくれてるんだ。あいつらが逮捕されるまで頑張ってください!」

 ちなみに、公安7課は警察の一部署とはいえ、かなり特殊な部署。逮捕権という伝家の宝刀はなかなか抜くことはありません。日向隊員もそこんところ、なんとなくわかってるようです。

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