私の居場所 179

 これはある意味ウソ。日向隊員に最後にピアノを教えた人は、いくつかのコードを書き並べ、それで即席で日向隊員にメロディを作らせ、ピアノを弾かせてました。だから日向隊員はメロディを作ろうと思えば、いつでも作れるのです。


 ピアノのブースのドアが開き、日向隊員たち3人が出てきました。演奏してたその他3人の真夜中のノックのメンバーはそれに気づき、演奏を中断。

「ん?」

 日向隊員は応えます。

「あは、私たち、家に持ち帰って、曲を作ることにしました!」

「ああ、そうか」

 最後に出てきたメンバーは真土灯里。千石さんはそのいつもとは違う真土灯里の雰囲気に気づきました。

「ん、なんだあ? 何かあったか?・・・」


 ミキシングルーム。スタジオ側のぶ厚いドアが開き、日向隊員、明石悠、そして真土灯里が出てきました。日向隊員は高浜さんに、

「私たち家に帰って曲を作ることにします!」

「ん、そっか?・・・」

 と、高浜さんも真土灯里が放つ負のオーラに気づきました。

 3人が廊下側のドアを開け、出ていきました。その直後、諏訪さんが高浜さんに話しかけました。

「真土さん、何かあったみたいですねぇ・・・」

「ああ・・・」


 レコーディングスタジオが入るビルの前に隊長のセダンが停まってます。明石悠が助手席のドアに手をかけました。が、

「私が座るよ、そこは!」

 突然の声。

「えっ?」

 明石悠はびっくりして振り返ります。そこには怖い眼をした真土灯里がいました。明石悠は思わずドアノブにかかった手を引っ込めます。

「あ、はい・・・」

 車内、真土灯里が助手席に乗り込みました。その怪しい雰囲気を感じたらしく、運転席の隊長は思わず横目でにらみました。

 後部座席に日向隊員と明石悠が座り、セダン、発進。


 隊長のセダンはまず真土灯里の家の前で停車。真土灯里はクルマを降ります。そのまま振り返ることなく家の門を開けました。日向隊員と明石悠は別れのあいさつをしましたが、その返事はありませんでした。


 隊長のセダンは今度は明石悠のマンションに行き、明石悠は降車。明石悠は振り返り、

「またね!」

 日向隊員もあいさつを返します。

「またね!」

 明石悠はマンションのエントランスに入っていきました。隊長のセダン、発進。


 セダン車内。隊長が横目で助手席に移動してきた日向隊員を見ました。

「何かあったのか?」

「ええ。真土さんを怒らせてしまいました」

「お前が、か?」

「はい。

 今度アルバムを出すことになったんです、真夜中のノックで。それで真土さんが前から温めていた曲を披露したんです。けど、私、その曲の構成に不満があって、いろいろと口出ししてしまったんです・・・」

「あの、あの真土勝之の娘だろ? そのが作った曲にいろいろと注文を出したのか? それは気分を害するだろって」

「はい・・・」

「まったくお前は、寒川も怒らせるし、ぜんぜん協調性がねぇなあ」

「すみません・・・」

 日向隊員は申し訳なさそうに小さくなりました。


 テレストリアルガード基地地下区画、日向隊員に与えられた私室。パジャマ姿の日向隊員がベッドに横になってます。けど、眼はぱっちし。眠れないようです。反省してるためです。

「なんであんな余計なこと言っちゃったんだろ?」

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