私の居場所 159

 曲はいよいよ終盤となりました。アウトロ。真土灯里はここぞとばかりに秘伝のギターテクニックを並べていきます。特にタッピングはあまりの速弾きに指の動きが見えないほど。まさにスローハンド状態。

 これを楽屋で見ている高浜さんは笑顔。

「そうだ、これだ! これが真土勝之のギターの神髄だ! 一子相伝てやつか? あは、久々に見せてもらったぜ!」

 スタジオの片隅から見てる見附さんも、惚れ惚れしてます。

「このギターテク、お父さんとまったく同じ・・・ いや、もうお父さんを超えてるんじゃないか? なんて恐ろしいなんだ・・・」

 日向隊員は電子ピアノを弾きながら苦笑してます。

「私、こんなすごい人からギターを習おうとしてたっていうの? あは、小学生が・・・ いや、幼稚園児が大学院生から物理の法則を習ってるみたい」

 これを見てたネット民の何人かも感心してます。

「ほ~ こいつはすごいじゃないか!?」

 が、大多数のネット民は否定的。

「お前、バカか!? これ、JCが弾いてんだぞ! こんなの、ふつーの大人がちょちょちょいと練習すれば、誰だって弾けるようになるだろってw」

「オレ、3日も練習すれば弾けるぜ、これ!」

「じゃ、オレは1日で弾いてやんよ!」

「おいおい、オレなんか一度もギターなんて持ったことないが、こんなだせー曲、すぐに弾いてやってもいいぜw」


 扶桑テレビの楽屋にいた高浜さんは、呆れを通り越して、眼がうつろ。

「う、うそだろ?・・・ こいつら、どういう常識してるんだよ・・・

 灯里ちゃんのギターテクは、5本指に入るほどのスーパーテクニックなんだぞ、日本のロックギタリスト界隈ではな! そんなの、音楽にまったく興味のない人だってわかるはずだ!

 こいつら、生まれつき耳が腐ってんのか? 灯里ちゃんやあののお父さんをさんざん攻撃してきた連中て、みんな、こんなくだらない連中なのかよ!? ロックのこと、これっぽっちもわかってねーじゃねーかよ!?・・・」

 高浜さんはイスに寄りかかりました。

「だめだ、どんな常識も一切通用しねぇ、こいつら・・・

 こんなやつらのさばらしていたら、灯里ちゃんも彼女のお父さんも、いつまで経っても浮上することはねぇ・・・ やっぱ根本的にこいつらを規制しないとダメだ・・・」


 テレストリアルガード基地サブオペレーションルームでは、ノートパソコンでインターネットを見てた寒川隊員も怒り心頭状態になってました。

「なんだよ、こいつら! 性根から腐ってやがるじゃないか!」

 寒川隊員は振り返り、隊長を見て、

「隊長、こいつらダメだ! 公開しちゃいましょうよ、これ!」

 隊長は困った顔に。

「う~ん、しかしなあ・・・ 他人の無線LANや個人用のWi-Fiを乗っ取って書き込んでる連中もいるからなあ。公開したらパニックになる可能性があるぞ」

「くっ・・・」

 寒川隊員はほぞを噛むしかあありません。

 ところで、寒川隊員が見てるノートパソコンですが、例の掲示板が表示されてますが、ふつーのパソコンとは違う点がありました。

 通常は掲示板の本文ほかに、ハンドルネーム(通常は「名無しさん」)、書いた日付時分秒くらいしか表示されないのですが、寒川隊員が見てたノートパソコンの画面では、そのほかIPアドレスが表示されてたのです。

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