私の居場所 155

「ようこそ大阪へ! どうです、大阪は?」

 通訳がこれを同時通訳し、リーダーの耳へ。リーダーがそれに応え、それを通訳が再び同時通訳します。

「素晴らしいと言いたいところですが、実はたった今着いたばかりでして・・・ まだほとんど見てません」

 そう、Speed Bumpはほんの数時間前関西空港に到着したばかり。大阪でコンサートするため来日したばかりなのです。

 扶桑テレビは真夜中のノックの再結成の一報を聞いて、同時に来日するSpeed Bumpとテレビで共演させることを考え、無理を承知でこの2つのバンドをオファーしたのです。

 ふつーに考えたら、来日したばかりでいきなりテレビで演奏しろなんてお断りするところなのですが、彼らも真夜中のノックに興味があり、さらに恩も感じてたので、このオファーを受け入れたのです。

 女性MCは別のSpeed Bumpのメンバーにもマイクを向け、それを通訳が同時通訳します。

「明後日大阪でコンサートします。東京や仙台や札幌でコンサートしたことはありますが、大阪では初めてです。みなさん、ぜひ見に来てください!」

 ちなみに、この時点で当該チケットはかなり売れ残ってました。今回のテレビ出演は、その宣伝も兼ねてるようです。

 女性MCの質問。

「今日は東京のスタジオに真夜中のノックのみなさんが来てます!」

 映像が切り替わり、真夜中のノックの6人が映りました。何人かは軽く手を振ってます。

 再び大阪のスタジオの女性MC。

「どうです、初めて見る真夜中のノックは?」

 マイクを向けられたSpeed Bumpのリーダーが応えます。

「私たちは真夜中のノックのおかけでヒット曲に恵まれることができました。彼らには感謝しかありません」

 別のSpeed Bumpのメンバー。

「真夜中のノックのギタリストはとても素晴らしいミュージシャンだったと聞いてます。

 彼は大変残念なことになりましたが、今回は彼の娘さんが彼の代わりにギターを弾いてくれるそうです。彼女も凄腕のギタリストと聞いてます。どんなギターテクニックを見せてくれるのか、とっても楽しみです」

 するとネットの世界では、

「おいおい、なんだよ、この定型文w・・・」

「こいつらも金もらってんだろ、絶対!?」

「Technical-Hと同じ100億円かな?」

「あは、相手は世界的に有名なバンドだぞ。そんな金じゃ動かないだろ?」

「じゃ、1兆円?」

「まあ、そんなもんじゃねーのか?」


 楽屋の高浜さんはインターネットを見て、呆れてます。

「なんだよ、こいつら・・・ やっぱ徹底的に規制しないとダメだな・・・」

 Speed Bumpは売れてると言っても、ヒット曲はI'm for it!1曲だけ。しかもこの曲、本国アメリカより日本の方でヒットした曲なのです。

 Speed Bumpは旧真夜中のノックやTechnical-Hほどは売れてないバンドなのです。なんでそんなバンドに高額な金銭を供与しないといけないのか? かなり低級で悪意丸出しの論理なのです。

 旧真夜中のノックは10年以上ヒット曲に恵まれてませんでしたが、undercoverという曲で久々にスポットライトを浴びました。

 旧真夜中のノックは雌伏の時を超え、ヒット曲を産み出すことができました。

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